mission2-1 黒十字のリーダー
「……と、いうわけなのよ」
『だいたい分かった。要するに、またルカが勝手なことをしたんだな』
「ちょっと! なんでそういう話になるんだよ。別にいいだろ、なんとかうまくいったんだからさ」
一方、飛空二輪とともに落下したはずの彼らは、全身砂だらけではあったが無傷だった。落下の寸前、アイラが銃で浜辺を撃ったのだ。そんなことをして何になるのかとユナは不思議に思ったが、すぐにその意図が分かった。彼女の銃弾は自在に動く砂と変化し、着地の際のクッションとなったのである。
なんとかアルフ大陸に入ったことを報告するため、サンド二号はブラック・クロスの本部と通信をしている。本部にはサンド一号がいて、各地に散らばったブラック・クロスのメンバーと連絡が取れるようになっているらしい。
ルカが手招きしてユナに合図を送る。ユナは口の中に入った砂でむせながら、耳をぴんと立てたうさぎのぬいぐるみに向かって言った。
「ノワールさん、初めまして。ユナ・コーラントです。ブラック・クロスのお二人には散々ご迷惑をおかけした挙句、勝手についてきてしまって……」
『あー、いいっていいって! そういう堅苦しいのは無し』
サンド二号から聴こえてくる声は、明るく軽快な雰囲気の男の声だった。ブラック・クロスのリーダーだというからもっと厳格な人物を想定していたユナは少し拍子抜けする。
『ユナ姫……あー、ユナでいいかな? 君は話を聞く限り、何か目的があってこいつらについてきたんだろう』
「はい。ヴァルトロの人たちやルカたちのことを知って、このまま何もしないのはダメだって思ったんです。コーラントも、私自身も。自分の目で世界を見て、諦めかけていた行方不明の幼馴染のこともちゃんと探したい。勝手だとは思うけど……それが、理由です」
通信の先のノワールは何も答えず、沈黙が流れる。
『君は真面目だねぇ。脅かすみたいで悪かった。俺たちは基本的には誰でも歓迎なんだよ。特に、意志が強い奴は大歓迎だ』
「そうなんですか? てっきり、もっと限られた人たちの集まりだと思ってました」
『はは、そうじゃないとアイラとルカみたいにタイプの違う奴らが一緒に組むわけないだろ。君がただルカたちに同行するのか、それともブラック・クロスに加わるのか、それは俺たちがやることをちゃんと見てから決めればいい。ブラック・クロスはユナのような王族にとっては敵の立場になることが多いから。ま、いずれにせよまずは神器を作ってからだな。今ミッションシートを送ったぜ』
ノワールがそう言うと同時にガーッという音がして、サンド二号の口から一枚の紙が出てきた。アイラはその紙を手に取り、顔をしかめる。
「ノワール。あなたやっぱりちゃんと文字の練習した方がいいわよ。もういい歳したおじさんなんだから」
『なっ! おかしいな、ちゃんと書けてたと思うんだけど。てか、おじさんっていうなよな! 俺はなー……』
「はいはい。どうものんびり話してられる雰囲気じゃないみたいだから、これで切るわよ」
『おい、アイラ!』
通信が途絶えると、サンド二号が縮んでいく。アイラはサンド二号をコートのポケットに入れると、両耳の十字のピアスを外し、くるんと指で回す。ピアスは黄色の光を発したかと思うと、液体のように弾け、黒い双銃となって再びアイラの手に収まった。
「早速お出ましのようね」
アイラがそう言って初めて、ユナは周りの状況に気づく。
三人はいつの間にか異形なものたちに囲まれていた。人の骸のような形をしているものもいれば、獣の形をして四つん這いで構えているものもいる。
破壊の
破壊の眷属たちが身にまとっているボロ切れには、びっしりと血の跡が付いていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます