四つ目の輪
あれから一年経ち、僕――リル――は様々な方面に変わったようだ。
良くなったことは、昔の幼い自分に戻れたということ。友人もたくさんでき、恋人さえできたのだ。復讐して良かったと心から思えるほどに。
反対に、悪い方向というのは、恐怖や罪の意識に毎晩苛まれるようになったことだ。自分が殺した人々が勢揃いして現れ、僕を睨み付けてくるのだ。敵だけならまだしも、味方からの視線は胸に突き刺さる。本当に復讐してよかったのか。そういう気持ちにさせられる。
「リル兄……。ま、待って!」
ガサゴソと草を掻き分ける音と共に、ルアが追いかけてくる。
僕はユピカの
音がせまり、グッとルアに肩を掴まれる。
「リル兄がお母さん殺したの? 嘘だよね、そう言ってよ!」
「…………」
「ねぇ、嘘なんでしょ!? ねえ?」
「本当だ」
必死なルアの様子に僕は腹を括った。彼女にはありのままを話そう。例え彼女が傷ついたとしてもその方が彼女のためになる。
「なっ……。何でよ!?」
「ユピカが僕の両親を殺したからだ。悪いか?」
「そんなの、嘘に決まってるし!」
呆然と僕を見返すルア。この子はまだ十二だというのに。こんなに幼くて人を殺せるのだろうか。
「嘘じゃあない。叔父さん達が教えてくれた」
「じゃ、じゃあ、それも嘘――」
「ルア。僕が嘘をつくと思うか?」
僕はルアの発言に被せて訊いた。ルアはその質問にうなだれ、なにか決断したような顔をする。
「そんなら、あたしがリル兄殺すもん!!」
ルアはそう言って短剣を取り出す。その短剣はキラッと無邪気に光っていた。彼女はその新しい短剣を僕の胸へゆっくり沈みこませていく。僕の胸に血がにじむが、痛みはない。
「あ、あたし、人を殺しちゃった……。で、でも、リル兄に勝てたんだ!!」
「ルア、お前もこうなる日は近いぞ」
僕は浅い息で彼女に伝えた。これで良いんだ、と自分に言い聞かせながら。
それに、今僕が横たわっているこの場所は親友の家のすぐ近く。すぐにあいつは僕を見つけるだろう。そして、きっと復讐してしまう。ルアも死ぬのか。
赤い月が僕を見下ろしている。そういえば、僕が殺した人はみんな血塗られた月の日に死んでいった。父さん達のもそうだったっけ。そんなことを考えながら僕は死んだ。
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