愚者の剣
大滝小山
序文
我がカーブライン家において最大の汚点は、なんといってもかの大乱であろう。
名前はなく、ただ“内乱”とだけ呼ばれる大戦は、中心となった両家だけでなく、
ここで述べるまでもなく、この戦の特異な点は人類同士のいがみ合いから起きた、正真正銘内乱であるという点だ。
いまだ魔物の脅威覚めやらぬ現在、人同士の戦いがいかに愚かしいかについての議論は他の書に譲るとして、私はカーブライン家の名において、あのとき何があったのか、語らねばなるまい。
だが、誠に残念ながら、それは出来ない。
長年醸成された憎しみは、その子孫でさえ見通せないほど、深く、黒々としていて、そのすべてを伝えることは出来ない。ただ、古い資料を調べると、カーブライン家と争ったサーブル家とは元々親交があったようだ。それが何らかの原因で拗れてしまったことが、内乱の遠因だろう。私としては、何者かの陰謀を感じさせるが、数代前に取り潰された身となっては、すでに調べるための伝手もない。
以上のように、私がこの戦について語れることはなにもない。
だが、この戦で散った英霊達に、この戦を仕掛けた家の者として何らかの責任は果たしたい。その思いのまま、筆を執った。
故にこの物語は、内乱で散ったすべての命に捧げよう。
――――エーミール・カーブライン
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