二重性継魂者《デュアリティ・エターナー》

涼成犬子

第1章 二重覚醒編

第1話 始まり


  目の前に広がる景色は、あまりにも不可解だ。現代において、少女と若い男が殺意を向けあう場面など、考えたことも、想像したこともなかった。

 遥か過去、侍が持っていたような刀を手に取っているとなれば、なおのこと。


 二人から何かが立ちこめているように見える。


 あれ? おかしいな。

 目は完全に覚めてるはずなのに……。

 これが幻覚ってやつか?


 そうしている間にも戦闘は続いている。

 最初は互角かと思ったが、女の子が一太刀振るうごとに男は体勢を崩し、追い込まれているようだ。

 完全に押し込まれた男は、最後の抵抗に全力を込めて刀を振り下ろす。

 女の子はそれを軽々と避ける。隙だらけの男の足を払い倒れた男の背中に、月の光に煌めく刀を躊躇なく突き立てた。


「ごめんね。でも、お互い様だよ」


 男は少し体を震わせたのち、動かなくなってしまう。

 俺は、その一連の様子を眺めているだけだった。

 尻餅をついて、口をあんぐりと開けて。


「流石に相手が弱くても、こう毎日あるとやってられないよ」


 だるさを断ち切るように伸びをした後、女の子は俺に近づき、手を差し出した。


「大丈夫? 流石にきつかったかな?」


 かわいい人だなぁ……。

人の死の現場に居合せたというのに、そんな感想の出てくる自分に、少し呆れ、困惑し、嫌気がさした。


「えーっと。とにかく、ようこそ!『|継魂者≪エターナー≫』の世界へ!」


 ……エターナー?

彼女が何を言っているのかは、全く分からない。正直なところ、頭がうまく回っていない自覚もある。だが、まるで操らているかのように手は動き、彼女の手を取っていたのだった。



ーー



 第三次世界大戦が勃発し、世界中は核の脅威に覆われていた。

 原因はロシアとアメリカの度重なる意見の食い違いにより生じた第二次冷戦であり、そこから東西に分かれ激しい戦いが起こっていた。

 集団自衛権により日本もこの戦争に巻き込まれ、列島各地に戦火は広がっていった。

 京都には広島、長崎に次ぐ核爆弾が投下され、たくさんの文化財と命が消失した。

 三年程の長期に及んだ戦争は終わりを迎え、和平条約が結ばれた。

 これにより東西はお互いの国の不可侵を定め、貿易も再開することとなった。

 結局、この戦争は世界中で犠牲者約二十億人をだし、得たものは、一体なんの為に戦ったのかという虚無感と大切な人を失った悲しみだけだった。

 東京や京都を除く日本各地は核はまぬがれたものの、完全に壊滅しており、新しい都市として生まれ変わることとなった。


 そして、まるでこの時を待っていたかのように、新たな異変が起ころうとしていた……。

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