第22話 勝利の女神

 あの平和な国に、軍用車で入るのはどうしても目立ってしまう。クリスタの一つ前の駅で車を降り、そこから機関車でクリスタに入国することにしよう。そういえば、国を出る時に機関車の中で隣に座ってきた老人が言っていたな。最後にはきっとクリスタに戻ってくるだろう、と。確かに戻ってきた。まさかこんな形で戻ることになるとは、夢にも思わなかったがな。


 機関車に乗り込んだ。隣駅だから、クリスタまではすぐだ。シルバに成りすますにしても、ここで顔を晒すと騒ぎになるので、持参した帽子を深々と被った。十分もしないうちにクリスタに到着した。それほど長期間離れていたわけではないが、とても懐かしく感じる。しかし感傷に浸っている場合ではない。早く結界を解除しないと。結界はクリスタの四隅にある塔から張られている。塔のてっぺんまで上り、一つでも解除してしまえば、残り三つが作動していても結界は消える。


 クリスタには、そこかしこに魔術による転移装置が設置されており、広いクリスタの中を一瞬で様々な場所に行き来出来る。しかし生憎、ここから結界の塔に行ける転移装置は無い。まあ、幸いここはクリスタの外れの方で、近くにも塔が一本立っているから、そこまで走って行くことにしよう。俺は急いで走りだした。乗り物無しでも、しばらく走ればそう時間はかからずに着くだろう。


 盗賊稼業を始めて大分体力がついたとはいえ、流石に数十分も走り続けると相当疲れる。こんな状態で塔に入っても不自然すぎる。息を整え、汗が引くのを待った。よし、そろそろいいだろう。俺は帽子を取り、シルバの口調を思い出しながら、堂々と塔の正門に向かって歩き出した。門の前には、見張りの兵士が二人いる。俺に気付いた兵士達が敬礼した。


「お疲れ様です、シルバ王子!」


「ああ、お勤めご苦労様」


「珍しいですね、シルバ王子が町に出てこられるなんて。ゴルド王子はしょっちゅうでしたが。ははは」


 自分の名前が出てきて一瞬ドキッとしたが、適当に笑って誤魔化した。まさかそのゴルドが帰ってきていて、目の前にいるなんて微塵も思っていないだろう。


「ところでシルバ王子。こんな所にどんなご用事で?」


「父上から命じられてね。この塔はクリスタにとって、とても大事な物だろう? 国王となるのなら、部下に任せっきりにしないで、自分の目でしっかりと点検するように言われて来たのさ」


「なるほど、かしこまりました。では、お通り下さい」


「あ、それと、兵士長が呼んでいたよ。何か緊急会議をするそうだ」


「えっ、兵士長が? しかし……」


「ここは心配ないよ。僕がしばらくいるから。それより、兵士長を待たせると、また怒られるよ」


「そ、そうですね。では、失礼します」


 二人の兵士はこの近くの、城直通の転移装置に向かって歩き去って行った。さて、これで邪魔者は消えた。俺は塔の門を開け中に入ると、思わず舌打ちが漏れた。まあ考えてみれば当然と言えば当然ではあるが、中にも人が大勢いる。塔の中は研究室も兼ねているようで、警備の兵士だけでなく、学者や魔術士なども小難しい本を机に並べて、何やら話し合いをしている。まったく邪魔くさい連中だ。


「あ、シルバ王子。どうしたんですか?」


「えーと……皆ちょっといいかな? 忙しいところ申し訳ないけど、父上が呼んでいるんだ。今後の悪魔対策の方針について、皆の知恵を借りたいらしい。兵士の皆も、兵士長が緊急会議を開くからって呼んでるよ」


 咄嗟に出た嘘に連中は不思議がってはいたが、王子に逆らうわけにもいかず、ぞろぞろと塔を出て行った。俺は階段を上り、頂上を目指した。直径二十メートル、高さ三百メートルの円柱状の、この無駄にでかい塔は上るのも一苦労だ。もちろん転移装置で、最上階以外の階へは一気に行くことは出来るが、まだ誰かいるかもしれないから、一階一階確認していかなければならない。やはり途中にも何人かの兵士や学者に出くわしたが、その度に同じ嘘をついて退出してもらった。すぐにバレるような嘘だ……その前に急がなければ。


 息を切らしながら、ようやく塔の頂上にたどり着いたが、、頑丈な南京錠のかかった扉に道を阻まれる。流石に厳重だな……しかし、盗賊をナメてもらっては困る。エメラほどではないが、俺もここ数ヶ月でピッキングの技術は会得しているのだ。こんなただゴツいだけの南京錠を開けるなどわけはない。二本の針金を鍵穴にねじ込み、五分ほど弄くり回すことで手応えを感じ、解錠に成功した。


 扉の先には、余計な物は一切置かれていない、あるのは部屋の中央の台座のみという、殺風景な部屋だ。台座の上に浮かぶのは、直径二メートルほどの巨大な水晶玉だ。その水晶玉から、天井の中央に設置された魔法石に向かって一筋の光が伸びている。この光が他の塔に同じように設置されている水晶玉と共鳴し合い、国全体を覆う結界を作り出しているのだ。実際どういう原理なのかはさっぱり分からないが、そんな事はもはやどうでもいい。これを破壊してしまえば結界は消え、その瞬間にダイモン率いる悪魔の軍勢が押し寄せてくるだろう。俺は腰に携えた剣の柄を握りしめ、ゆっくりと台座に近づいた。


「シルバ王子、何をしておられるのです?」


 思わず悲鳴を上げそうになった。振り返ると、そこにいたのは白い髭を蓄えた老人……教育係のトパだった。まずい……他の奴らは誤魔化せても、長年俺とシルバの教育係を務めていたトパには、俺の正体がバレるかもしれない。


「あ、ああ……ちょっと父上に命じられてね。結界がちゃんと機能しているかどうか、自分の目でしっかりと点検するように言われてきたんだ」


「ゴルド王の……? はて、そんな話は初めて聞きましたが」


 くそっ、この爺は昔から鋭いんだ。それに、王子である俺やシルバにも、臆さずにガンガン物を言ってくる。元はと言えば、俺が追放されたのも、トパが親父に俺の素行の悪さを随時チクってやがったからだ。掴みかかってやりたいところだが、今はそんな事をしている場合ではない。ここは何としても誤魔化さなければならない。


「ト、トパこそ何でこんな所に?」


「私はこの近くに住んでいる娘と孫に会ってきただけですよ。それで帰ろうとしたところ、結界の塔からぞろぞろと学者達が出てきたので、何事かと思いましてね」


「父上と兵士長が呼んでいたから、皆それぞれの所へ行ったんだよ。僕がしばらくここにいるから大丈夫だって言ってね」


 だからお前もさっさと出て行け。早くしないと、毒薬が俺の体を蝕み始めてしまうだろうが。俺は苛立ちを必死で隠しながら腕時計を見た。やばい、もう毒薬を飲んでから二時間半を過ぎている……。


「なるほど。では、もう一つお聞きして宜しいですかな?」


「ああ、何だ?」


「何故今更クリスタに戻ってきたのですか、ゴルド王子」


「!!」


 こ、この爺……! 最初から気付いてやがったな……何て奴だ。トパの鋭い視線が俺の目を射抜き、逸らすことを許さない。駄目だ、完全にバレてる。こうなっては誤魔化しようがない。そんな俺の心境にもお構いなく、トパが追求を続けてくる。


「ゴルド王子が城を追放されてから早数ヶ月。城下町でゴルド王子の姿を見た者はいないようでしたから、どこか他の国に行っていたのでしょう。それが突然お戻りになって、しかも塔の人間を全員追い出して、今この部屋にいる。一体何が目的なのです?」


「そ、それは……」


 何か……何か言い訳出来ないか。この状況でも不自然ではなく、トパをも欺けるような言い訳は。俺はハッとした。また誰かが階段を上ってくる。しかも複数が走ってくる。俺は目を見張った。現れたのは……俺が最も憎んでいた……いや、今も憎んでいる、あの男だった。


「兄さん……何をしているんだ?」


「シルバ……!」


 その後ろには、外で見張りをしていた二人の兵士だ。恐らく、城に戻る前にシルバと鉢合わせしたのだろう。そして慌てて駆けつけてきたというわけか。終わった……もう誤魔化すのは百パーセント不可能。ここで全て白状したところで、俺はこのまま牢屋行き。いや、その前に毒で死ぬだろう。それならば……。俺は剣を抜き、後ろに振りかぶった。


「なっ!? やめろ!」


「おらああ!!」


 水晶玉に剣を思い切り叩き付け、ぶち割った。派手な破砕音と共に、水晶玉の破片が床に飛び散り、それと同時に天井に伸びていた光は消え去った。


「ああ……悪魔除けの結界が……! ゴルド王子! あなたは自分が何をしているのか、分かっているのですか!」


 トパが顔を青ざめさせて怒声を上げた。ああ、よーく分かっているとも。そして、これからクリスタに起こることもな……!


「な、何てことを……! おい、兄さんをひっ捕らえろ!」


 二人の兵士が走ってきた。こんな奴ら、今の俺の相手ではない。俺は剣を構えた。しかしその直後、外から爆発音や雄叫びが聞こえてきて、兵士達がピタリと足を止めた。


「何事だ!?」


 シルバ達が狼狽えながら、窓から外の様子を窺った。その顔を見れば、外がどういう状況になっているのか、容易に想像がつく。こうなってしまえば、もう誰にも止められない。まるで津波が町を飲み込むように、ただ見ていることしか出来ないだろう。


「ははは……おい、こんな所でボサっとしてていいのか? 悪魔共が攻めてきてるんだろ? 早く行かないと、大事な国民達が殺されてしまうぞ」


 シルバが鬼の形相で俺を睨み付けた。しかしすぐに向き直り、兵士達に指示を出す。


「くっ、君達は急いで国民達を避難させるんだ! トパも早く逃げろ! 逃げ場所の無いここに閉じこもっていては、かえって危険だ!」


「わ、分かりました! 王子も早くお逃げ下さい!」


「僕は兄さんと話がある。いいから早く行くんだ!」


 再び爆音が聞こえてきた。随分と派手にやっているようだ。今頃クリスタ軍とダイモン軍の全面戦争が勃発している最中だろう。兵士達とトパがこの場を後にし、ここには俺とシルバだけが残った。シルバがここまで怒りを露わにしているのは初めて見る。俺達はしばらく無言で睨みあった。


「……どこで何をしているのかと思っていたら、まさか悪魔の手先に成り下がっていたとは思わなかったよ。昔からクズだとは思っていたけど、堕ちる所まで堕ちたね、兄さん」


「てめえに何が分かるってんだよ。俺が今までどれほど苦労してきたかも知らずによぉ……!」


「苦労? はっ! グータラ人間の代名詞である兄さんが、一体何を苦労してきたって言うんだい? 追放されたのだって、全て自業自得だろう。それを逆恨みして、悪魔にクリスタを襲わせるなんて、救いようがないね。やはり追放では甘かったようだ。今ここで……僕がこの手で、兄さんを処刑してあげるよ」


 シルバが剣を抜いた。奇しくも、俺が今携えている銀色の剣とよく似ていた。顔は全く同じ、身長も体格も同じ、服装と武器も似ている……まるで鏡を見ているようだ。


「ほざくな。今の俺は、昔の俺じゃねえぞ。もう、てめえなんかに負けねえ。死ぬのはてめえの方だ、シルバ……!」


 やはり、こいつだけは生かしておけない。一刻も早くここから逃げた方がいいのは分かっているが、こいつだけは何としてもこの手で殺しておきたい。ここで逃げ出しては、俺のプライドに一生消えない傷が残ってしまう気がしたからだ。以前は完敗した……それは潔く認めよう。だが、あの時よりも俺は遥かに強くなった。シルバなんかには、もう絶対に負けない。所詮、弟が兄に勝てるはずなど無いということを教えてやる。


「行くぜ!」


 俺は走り、シルバに向けて剣を真上から振り下ろす。シルバがそれを自分の剣で弾き、その勢いのまま回転して横薙ぎで斬りつけてくる。俺は屈んでそれを避け、今度は真下から斬り上げるが、シルバはその瞬間に後ろに跳び、それを紙一重で避ける。今度は二人同時に袈裟斬りを仕掛けるが、刃の中央がぶつかり、鍔迫り合いの形になった。いくら押してもビクともしない……だがそれはシルバも同じだ。腕力は互角……ならば蹴りだ! そう思って右脚を繰り出した瞬間、シルバの右脚も同時に飛んできて、お互いの脇腹にクリーンヒットし、それぞれが真横に吹っ飛んだ。くそっ、忌々しい……! 双子は考える事が同じという話をよく聞くが、こんな奴と同レベルだと思うと実に腹立たしい。


 立ち上がるのも同時だった。再び剣による連撃。室内に、金属の衝突音が何度も響き渡る。互角だ……強さの質は違うが、完全に互角だ。俺はこれまで数々の修羅場を潜り抜けてきた。平和なクリスタで暮らしてきたシルバは、死闘という死闘は経験していないはずだ。だが、俺の剣はあくまで我流……シルバの太刀筋と比べると、明らかに雑なのが自分でも分かる。それに対して、シルバは真逆。実戦経験は無いものの、城の中での一流の教育により、完璧に近い型を持っている。この二つの強さのバランスが絶妙に合わさり、プラスマイナスゼロになっているのだ。予想以上の苦戦に苛立ちが増すが、それはシルバも同じようだった。


「ゼエ、ゼエ、ちっ……なかなかやるじゃねえか。お坊ちゃんのくせによ」


「ハア、ハア、兄さんこそ、遊び人のくせにいつの間に、そんな力を身に付けたんだ?」


 このままでは決着がつかない。最悪、相打ちということもあり得る。もし、この均衡を破る要素があるとすると、それは……。突然、シルバが左の手の平をこちらに向けた。何だ、降参か? いや、違う……これは! 俺は咄嗟に横に跳び退いた。それと同時に、さっきまでの俺が立っていた場所の後方の壁に、長さ一メートルほどの氷の刃が突き刺さった。魔術だ……!


「はは、その顔……どうやら魔術までは使えないようだね、兄さん!」


「くっ!」


 シルバが続けて撃ってくる。俺は横に走り続け、それを回避し続けた。考えてみれば、使えて当然だ。俺と違ってシルバは武術だけでなく、魔術の教育も真面目に受けていたのだから。俺もサフィアに習っておけばよかった。まずい……このままではどんどん体力が奪われる。均衡が崩れ、俄然シルバが有利になってしまった。


「うぐっ!」


 氷の刃が俺の脚を掠めて転倒し、剣を手放してしまった。剣がカラカラと音を立てて滑り、壁にぶつかって止まった。すぐに体勢を立て直そうとする俺の目の前の床に、氷の刃が突き刺さる。無意識に体が硬直し、冷や汗が俺の頬を伝った。


「命運尽きたね、兄さん。兄さんの汚らわしい血で、この由緒正しき剣を汚したくない。このまま魔術で串刺しにしてあげるよ!」


 シルバが、自らが扱う氷のように冷たい微笑を浮かべ、空中に新たな氷の刃を作り出した。だが、不思議と俺に焦りはなかった。危機感が湧いてこない。なぜなら、もはや幾度となく経験したパターンだからだ。氷の刃が放たれようとした瞬間、大きな爆発音が響き、それと同時に壁や天井が崩れてきた。


「な、何!? うわああ!!」


 シルバの悲鳴が聞こえる。俺は起き上がらずに、そのまま頭を押さえて伏せた。壁が崩れる轟音が鳴り止み、顔を上げると、目の前に火の海が広がっている。一体何が起こったんだ? 周りを見ると、壁が崩れたことにより、塔の外が丸見えになっている。何匹かの悪魔が翼をはためかせ、町に向けて魔術を撃ち出しているのが見えた。どうやら、あの流れ弾が塔の外壁に当たったようだ。そして室内のカーペットに、あの魔術の炎が引火して、燃え広がったのか。このままでは焼け死ぬ……! いや、大丈夫だ。すぐそこに階段がある。俺は逃げることが出来る。では、シルバはどうなった? 俺はシルバの姿を探した。どこだ、どこにいる? 火と煙と瓦礫で視界が悪く、室内がよく見えない。


「……うっ…………」


 微かに呻き声が聞こえた方向に振り返ると、シルバが瓦礫の下敷きになっていて、下半身が挟まって身動きが取れない様子が窺えた。そして、周りを取り囲むように火が燃え盛っている。俺は思わず身震いした。神だ……やはり、俺には神がついている。もはや偶然とは思えない。勝利の女神は、最後には必ず俺に微笑むのだ。


「……は、ははは…………はーっはっはっは! ざまあみやがれシルバ! 俺の勝ちだ! てめえは、俺の悪運に負けたんだよぉ!」


「くっ…………この、外道め……!」


「悔しいか? だったら精々俺を呪うがいいぜ。俺は痛くも痒くもないけどよ! ぎゃはははは!」


 更に火の手が強まってきた。そして再び悪魔の魔術の流れ弾が塔を掠めた。ぐずぐずしている暇はないようだ。トドメを刺したいところだが、火で近付くことは出来ないし、放っておけば数分後にはこいつは黒焦げだ。俺は自分の剣を拾い、階段へ向かった。


「じゃあな、弟よ。お袋に宜しく言っといてくれ。それと、親父も多分すぐに後を追うだろうよ」


「……ゴルドオオオオオ!!!」


 奴の最期を見届けたかったが仕方ない。俺は急いで階段を走り降りた。一つ下の階に下りれば、転移装置で一気に一階まで下りれる。外へ出ると、そこには地獄絵図が広がっていた。塔の頂上とは比較にならない火の海が広がっていて、人間悪魔問わず、死体だらけだ。そこら中から悲鳴や悪魔の雄叫びが上がっており、銃声や爆発音も途切れることはない。早く逃げないと、巻き添えで俺も死ぬ。出口に向かって走りだした瞬間、どこから逃げてきたのか、一頭の馬が走ってくるのが見えた。


「はは……何から何まで、俺に運が向いてきやがったぜー!」


 馬に跳び乗り、手綱を握って走りだした。ここが国の端だったこともあって、脱出にそれほど時間はかからなかった。俺は馬に乗ったまま、軍用車を乗り捨ててきた隣駅に向かった。後方では、未だにクリスタ軍と悪魔の戦いの音が鳴り響いている。だが、それも間もなく終息するだろう。


 しばらくしてから、俺は馬を止め、滅びゆく故郷を眺めた。俺を追放した、忌々しき国…………だが、それが悪魔によって消えゆく様を見るのは、何とも言えない感情が湧いてくる。滅亡のきっかけを作ったのは、間違いなく俺だ。俺が滅ぼしたのだ。何も知らずに、ただ平和に生活していただけの国民達の命もろとも。


 …………ふん、だから何だと言うのだ。俺らしくもない。罪悪感……そんなドブネズミの糞よりも無価値な物を、持ち合わせた覚えはない。この世の全ての命よりも、俺一人の命の方が重いのだ。俺はウジ虫のように一瞬湧き出てきた感情を握り潰し、再び馬を走らせた。

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