ダンジョンハイスクール・グラフィティ
穂積重合
序章 或る死 1D
0-1 戦闘意識
遠い昔、おそらくはこの地上で。
数多の大いなる業が行われた。
いにしえの人たちは世界の理を意のままに捻じ曲げて、病むことなく、不死となり、老いることを知らず、富と栄華とをほしいままに生み出し、星々の道を踏み越えたという。
迷宮はいにしえの人たちの住まいだとも、悪意ある罠だとも、万人に与えられた試練だとも、慈悲深い贈りものだとも言われている。
かつて父祖たちは、ただその前にたたずみ、恐る恐る迷宮の入り口に軒先を借りて、星々の冷たい光をしのぐ他に
しかし、
冒険者たち。
覇者たちの
汲めども尽きぬ真清水。いにしえの技。新しい言葉。もう九つの命。力強い武器。
迷宮を踏破し、最初の帝国宰相となった、
今ではその名を忌んで呼ばれることのない、始まりの
彼女は賢明にも、最もふさわしいものを望んだ。
さらなる迷宮を。
ようこそ若き
諸君を歓迎する。
海上市市制六百年記念誌編纂委員会 編
『
六重の遮蔽を割り破った中性子
さらにその結果として、僕は急速に無力化されつつある。
最優先で張るべき
認識だけが加速されている。
千二十四倍速。光学皮質の中で危うげに作動する、僕の
爆散する誘導弾の破片にすら対応時間を作ってくれる高速度視覚も、亜光速で作用をもたらす放射線兵器には有効じゃない。
……この戦闘意識は、ある意味では僕の自意識ではない。
その灰色の世界で、僕は
激痛が無いのはありがたい。
感覚
今日は死ぬのによい日ではなかったが……。
諦めたわけじゃない。とはいえ、もうまぶた一枚動かせないところまできた。目を閉じることもままならない。
もちろん加速中に普通の感覚で瞬きするわけではないが、視界の光量をもうちょっと下げたい。まぶしい。うまくできない。
少し変だな。
僕は初弾で正確に右目を貫通されたはずだ。ということは、どんなに遅くても頭部がもう全部破裂していないと熱量的に計算が合わない。
何らかの目的で脳組織をある程度保存することを狙った、低致死性の攻撃だったのだろうか?
まあいい。
次の
かすれてゆく意識のどこかがそう思いかけた最中、視界に映る頭蓋が沸騰して果てた自らの屍を見たために、自分が絵美理によって
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