噂話:赫い石の噺


 酒気に染まった愚痴に怒号に談笑の声。

 其処に混じった与太話。

 誰がどうして言い始めたのか、金になるという常套句。

 下品な笑い声の裏、声を潜めて誰かが言った。

 赫い赫い小さな石榑が、ロンドンの地下に転がっている。

 指でつまめる程度のものから、掌大の大きさまで。

 形は別に何でもいい。

 兎にも角にも赫い石。


 そいつを持って路地をうろつけば、

 何処からともなくひょっこりと買い手がやってきて、

 高値で買ってくれるとさ。


 嘘か真か与太話か。

 信じる信じないはお前次第。

 金が欲しけりゃ探してみな。

 もしも赫い石を見つけりゃぁ、そいつはきっと金になる。


 誰が言い始めた噂話。

 安酒片手の下世話な話。

 しかし貧乏人たち、いつしか沸き立つ。

 誰も彼もが地下に水路に、我こそはと足運び、目を皿にして石探し。


 誰かが言い始めた噂話。

 いつからか広がった四方山話。

 気になるのなら確かめな。真偽のほどは、眉唾さ。

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