鬱金香

茶柱

1

僕には幼馴染の女の子が居る。

例えばそれは、家が隣同士で窓からお互いの部屋が見えるという事。

例えばそれは、互いを下の名前で呼び合い、周りからは夫婦と冷やかされるという事。

そんな事をイメージしたり憧れる人は少なくないだろう。実際、僕もその一人だ。しかし現実はそう甘くない。僕と彼女の家は町内こそ同じものの、交通量の多い道路で分断されており、尚且つ、そもそもの距離も離れている為、互いの家など見えたものではない。また、僕達はそれ程仲が良い訳ではなく、会話自体も数少ない。その数少ない会話で僕は彼女を苗字で呼び、彼女は僕を「お前」と呼び、稀に下の名前で呼ぶ(僕はその度にささやかな喜びを感じている)。しかし奇妙にも、僕と彼女は保育園から現在、高校2年に至るまで通う学校が同じである。これは、そんな僕と彼女の関係を描いた青春群像劇、ではなく、僕の彼女に対する想いを綴った片想いの物語である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る