0601から0700まで
Num.0601 ID0838
朝起きて鏡を見たらおでこに蛇口がついていた。数分間混乱したが段々と冷静になる。まあ、おでこに接着剤か何かでピタリとくっついているだけだろう。そう考え鏡をまじまじと見る。ふと、蛇口を捻ってみると液体が流れ出た。驚きつつもその正体を確かめるとこれは……マーボー、か。
Num.0602 ID0839
わたしがもし惑星なら貴方の想いなんて大気圏で燃え尽きてぜったいぜったい届かない。わたしがもし彗星なら貴方の想いなんて遅いもの振り切って見えないとこまで飛んでいく。わたしがもし恒星なら貴方の想いなんて暗いもの照らさずにずっとずうっと無視してる。でもわたしは人だから
Num.0603 ID0840
今年こそ念願の13月1日を迎えようと今から準備を進めている。去年も一昨年もその前も1月1日を迎えてしまったが今年こそ果たしたいと思う。その算段はもう既についた。後は準備を怠らず気を引き締めて12月31日に挑めば良い。間違えて12月32日を迎えぬよう気をつけねば。
Num.0604 ID0841
この街は実験区域です。住人には他人が見えなくなる薬を服用していただいております。しかし当然他人がいなくなる訳ではありませんので私達管理側が上手くぶつからないように操作致しております。はい、なんでしょうか。人っ子一人見えないと。どうやら貴方様も薬を飲んだようですね。
Num.0605 ID0845
知ってるかい。あの電柱の中にはチョコレートが入ってるんだぜ。そういうお菓子ってあるよな。個人的には甘いのは嫌だから苦いのがいいわな。ん。嘘じゃないって。登る時に使うあの棒あるだろ。あれを引き抜くと出てくるんだよ。電柱って元々は政府が食糧の備蓄用に建てたもんだぜ。
Num.0606 ID0846
「10日間で、あなたの体をバラバラにし、綺麗に掃除して元に戻します」そう言われここまでやってきた。体験者の喜びの声もかなりの量だ。提供されたその殆どに目を通した。後数分後に意識を失えば10日後に目を覚ます。予定だ。予定なのだが。どうしてだろう。涙が止まらない。
Num.0607 ID0847
人を喰う家の夢を見た。とても怖い夢だった。その家に入ると喰われてしまうのだ。具体的には箪笥やら天井やらがぱかっと開いて口になったりして他の家具とかもやたら動いて最終的には追い込まれて喰われる。それでね。その家に行く事になった理由は多数決。みんなが私を餌に選んだ。
Num.0608 ID0848
ここが江戸ですらなかった昔の話だ。大き目の隕石が落ちてきてな。結構な被害があった。んでその隕石から漏れだしたのがSi粒子だ。目には見えない人体には無害の粒子で地球上には当然なかったものだ。だがこの粒子に働きかける能力を持った者達がいた。ま、俺達能力者の祖先だな。
Num.0609 ID0849
自転車。ペダルを踏み込んだ瞬間。部品全てがバラバラになるイメージ。当然。そんな事は起きない。太ももからふくらはぎから。かかとからつま先から。靴を通して。ペダルに力が伝わる。それはペダルを踏み壊す程ではなく。チェーンを千切る程ではない。受け止められ。拒絶されない。
Num.0610 ID0850
いいんだよ。日々の出来事だろうと構いやしない。じゃあ訊くけどさ。お前の小説って登場人物は何語話してんの。何食べてんの。欲求はあんの。想像してるったってお前の日常だの感覚だのが元になってんだろ。同じ事じゃん。お前が焼き魚にしたからって俺の刺し身を馬鹿にすんなよ。
Num.0611 ID0851
この指輪は雷に打たれ溶岩を泳ぎ海底に沈み宇宙に放り出され今ここにある。自然の力に耐え続け傷だらけになりながらも今は私の指にある。一方で不幸を背負った指輪でもある。厄災に遭う度、持ち主は変わっている。でも未だにペアリング。もうひとつを君の指にはめても……いいかな。
Num.0612 ID0853
寒い。タオルケットを掛けて寝よう。寒い。毛布を掛けて寝よう。寒い。布団を掛けて寝よう。寒い。服を着て寝よう。寒い。暖房をつけて寝よう。寒い。窓を閉めて寝よう。寒い。温かい風呂に入ろう。寒い。温めた牛乳を飲んで寝よう。寒い。おかしい。いくら温めても懐が寒いままだ。
Num.0613 ID0854
ただひたすらに喉が渇く腹が減る。またジョッキをあおり肉を頬張る。炭酸とアルコールが喉を焦がす。歯を立て肉を噛み千切る。飲み込んだ空気やガスを口から吐き出す。噛むのは溢れ出る肉の旨みを楽しむ為ではなく喉を通りやすくする為。早く胃を満たしたい。もうそれしか残ってない。
Num.0614 ID0855
この怒りのエネルギーを別のエネルギーに変換できたら、とな。奇遇な事にそれができる機械を開発したんだ。早速、適性テストをしてみよう。ほほう。充分な発電量が見込めるようだ。では君をファームへ招待しよう。この先の人生、ただ怒っていればいい。発電量が足りなかったらこちらから怒らせるから安心したまえ。
Num.0615 ID0858
鏡を見て思ったのは私はいつからこんな顔になったのかという事。いつ見ても不機嫌な顔した奴がこちらを見ているだけだったからいつからか鏡なんてまともに見なくなっていた。視界の端で見たり焦点を合わせなかったり。だがもし今この鏡に映っているのが私の顔だとすると……どうして保健所が来ないのだ?
Num.0616 ID0859
人の良さにつけ込んで大御所作家にただで創作を依頼するなんてとんでもない話です。仕事に対する報酬は支払って当然ですよ。えっ。このツイッターアイコンですか。公式に配布されたもの、ではないですよ。ま、減るもんじゃないし宣伝にもなるし別にいいでしょ。ケチくさい事言うな。
Num.0617 ID0860
駆逐される為に存在する者達がいる。彼等はその為に生み出された。幼き力を成長させる為。強大な力に対抗させる若き力を育てる為。或いはただ愉快なお遊びの為に。だが彼等はまたこの世界を創造した者の能力も知っている。だからこそ時たま逆らう。それは世界を根底から覆す……バグ。
Num.0618 ID0861
マジックカットか。んー、と。『こちら側のどこからでも切れるように作りましたが切れない場合も御座います。それは決してお客様の扱い方が悪いと指摘させていただいている訳ではなくいわば日が悪いと申しましょうかいえ不運と申しているのではなく塞翁が馬の故事にも見るように……』ほえ。
Num.0619 ID0862
おはようと言えばおやすみと返されおやすみと言えばおはようと返される。そんな女を妻に迎えた時から私の人生は変わってしまった。料理を作れば無駄に食材を捏ねくり回す。精神的充足の為に布施を払う。家に客を連れて帰れば出て行き朝まで帰らない。この結婚で私は身勝手を知った。
Num.0620 ID0863
朝起きた時におやすみと言い夜寝る前におはようと言う男が夫になった時から私の人生は大きく変化した。当然だ。結婚したのだから。肉は流石に焼くが食材の殆どを生で食べる。保険を無駄と断言する。連れて帰る客は女ばかりで私がいようと構わず抱く。この結婚で私は身勝手を知った。
Num.0621 ID0864
挨拶をすれば笑顔で返しごみが落ちていれば拾ってごみ捨て場まで持って行く。そんな夫婦が引っ越してきてもアタシの人生は変わらなかった。共働きで旦那さんは夜に奥さんは昼に働いている。いつもお互いに気を遣いすぎている。そのおかげでこうして今でも住んでいられるワケだけど。
Num.0622 ID0865
なまこをはじめて食べた人を尊敬するとか何言ってんの。毒だと吹き込まれた人が、山から来ては村を荒らす鬼を殺す為に綺麗に調理して出したのかもしれないだろ。なんで食おうと思った人と食った人が同じなの。食わせようとしたんだよ。そっちが勝手な想像するならこっちもするだけさ。
Num.0623 ID0866
レシート。レジスターの進歩によりどんどん情報が増えている。最近ではコンビニでガムひとつ買えば30センチ近い長さのレシートを渡される。キャンペーンやポイントの情報は当然として、その他にも身長やら体重、体脂肪やら余命やらピンポイント天気予報やらと色々書かれている。
Num.0624 ID0867
中を覗けば楽しそうに歌ってやがる。頭に被ったケーキを食べ生きた七面鳥にシャンパンをかけ火を点け随分と楽しそうだ。やぎひげの爺さんは外で意地汚く這い回っているというのに。この寒空の下、トマトを塗りたくった服を着て煙突の中で震えている。ならばせめて温かい煙で燻そう。
Num.0625 ID0869
そんなに憎いなら俺を憎め。そんなに腹立たしいなら俺に怒りをぶつけろ。全部俺が引き受けてやる。俺なら堪えられるなんて言ってるんじゃない。堪える自信なんてあるわけがない。だが憎しみから傷付けるのが俺なら。怒りをぶつけて壊すのが俺なら。……野良犬がのた打ち回るだけだ。
Num.0626 ID0870
何故私は日本語で文章を書いているのだろう。それしか扱えないからだろうか。ただ海に流すだけの文章が何で書かれていようと同じだろう。全ては藻屑になるだけだ。それなのにこうして日本語で文章を書くのはきっとどこかの誰かに見つけて欲しいからだろう。と思いきや、怠惰に対するただの言い訳だろう。
Num.0627 ID0871
あなたの呟きがツイノベになる。ツイノベライザー登場。使い方は実に簡単。ライザーページの入力欄にいつも通りの呟きを入力するだけであなたのアカウントがツイノベを呟きます。なお入力した呟きと一切関係ないツイノベが出力される事もありますがそれはライザー特有の作家性です。
Num.0628 ID0872
高い高い塔を建てた。そしたら引力より遠心力の方が強くなって住人が宇宙に弾き飛ばされるようになった。そこで家を逆さまに建てる事にした。こうすれば天井ではなく床に立つ事ができる。時は流れ幾度かの大戦も挟み事実が忘れられた頃。ひとりの少女が塔を登り辿り着いたのは、地上。
Num.0629 ID0873
ふむ。描いてもらったこの時計には短針、長針、秒針とありますね。時間は……10時28分15秒くらいですか。何故です。まず何故アナログ式なのですか。デジタル式でも構わないでしょう。正午丁度でも構わないでしょう。そして何より訊きたいのは何故この時計は女の子なのですか。
Num.0630 ID0874
お前が罪を犯す度ここで育った罪の木が伐られてお前の心に積まれていく。それこそが罪木。いわゆる積み木。あるいはTSUMIKI。積まれる積み木は罪木、つまりは材木もしくはZAIMOKU。要するに罪を犯す度に罪の木で作った罪木が積み木のように積まれていくのが罪木なのさ。
Num.0631 ID0875
それは未来の自分から送られてきた手紙だった。未来の自分は後数万の金があれば何億もの金が手に入るがもう資金が底をついた。そこで過去の自分に金を埋めてもらい未来に掘り出して勝負をかける旨、記されていた。これは損失ではなく先行投資らしい。なるほど。では貯金しておこう。
Num.0632 ID0876
あの時どうすれば良かったのか。そう思う事がある。ひとつやふたつではなく事ある毎に躓いて今になり答えを探している。もちろん大抵のあの時出すべきだった答えは知っている。それも当時の自分でも可能な範囲に収めた答えを。だが今となっては。まさに過ぎたるは及ばざるが如し。
Num.0633 ID0877
始まりは些細な出来事だった。それを起こしたスタッフの名前をつけて斎藤状態と呼んだ。その用語は番組に浸透した。それから事ある毎に用語は増え続け今では何を言っているのか分からなくなった。だがそれでも彼はまだひたすらに喋り続けている。彼は言う。やゆほもよえそなぺ……。
Num.0634 ID0878
ぱちぱちぱち。はくしゅのおとがきこえるよ。ぱちぱちぱち。せいでんきのおとがきこえるよ。ぱちぱちぱち。しゃしんがもえるおとがきこえるよ。ぱちぱちぱち。なにかをつぶすおとがきこえるよ。ぱちぱちぱち。なにかをきりとるおともきこえるよ。ぱちぱちぱちん。なにかがおわったおとがきこえたよ。
Num.0635 ID0879
私達は毎日どれだけの文字を記しているのか。それは分からない。だがそれを全て受け止められる程の器がある事は知っている。膨大な量の0と1に変換され全て飲み込まれている。日々記録の量は増えているが器も大きくなっていく。この器を満たすのが私達の役目なのだと彼女は書いた。
Num.0636 ID0880
あなたとわたしの間にあるのは沈黙。言葉がないだけではない沈黙がある。どちらがこの沈黙を打ち破るのか。それは分からないけれどきっとこの先お互い黙ったままだと思う。もしあなたが先に棺に入ってもわたしは黙って見送るだけ。わたしが先でも同じ。わたし達は沈黙を完成させる。
Num.0637 ID0881
結婚して20年。もう15年くらい妻と話をしていない。言葉を返さないどころか反応すらしてくれない妻に話しかける事もなくなった。家事はきっちりこなしてくれる。近所付き合いもしてくれている。私だけだ。思い悩んだ時期もあったがもうどうでも良くなった。今も傍に居てくれる。
Num.0638 ID0882
いやあのふたりはあれでいいんだよ。そりゃ俺だってなーんも思わない訳じゃない。でも非の打ち所がない夫婦なんてそうそうありゃしないさ。どこかちょっと変わってたって別にいいだろ。だいたいあのふたりは寝てる時には会話してんだ。お互いのどうでもいい事まで知り尽くしてるよ。
Num.0639 ID0883
雨の中、川に掛かった橋の上を走り抜ける。強風が前進を阻むがここで引き下がる訳にはいかない。雨が激しく顔に打ち付け痛みの連続。何故こんな事をしなければならないのかと思い悩んでも橋の中央。行くにしても戻るにしても既に苦労は同じ。だからここから飛び降りる事にした。
Num.0640 ID0884
本も随分と変わった。今や1ページにいくらでも文字を書き込める。文字の形も大きさも好きなのを選べる。読めない文字にも振り仮名が標準装備。もちろん邪魔なら消せる。そして遂に登場した飛び出す電子絵本。液晶画面が盛り上がる画期的な仕組みだったが出る作品は成人指定ばっか。
Num.0641 ID0885
『この水瓶に入っている水はいわば君の命。水が尽きたら君の命も尽きる。しかし安心するがいい。この事実を知ったのだ。これから先は尽きそうになったら継ぎ足していけばいい』そう言われ水瓶が空にならぬように水を継ぎ足してきたのにどんどん私の人生は希薄になっていった。何故だ。……いいや。水を足したから薄まった訳ではない。水瓶に入っていたのはただの水だ。だが確かに君の人生は薄まったのだろう。君はどうせ死なない。いくらでも待てる。老けない。君にとって重荷であると同時に走る原動力にもなっていたもの。それを放棄したのだ。だから今回は醤油を足す。
Num.0642 ID0886
『あなたの人生、味付けします』そんなチラシを見てやって来た味付人生有限会社。入ってカウンター席に座ると出てきたのはどんぶりめしと調味料。ここでどんな味付けにするか決めるらしい。ここは迷わずカレー粉をチョイス。これで私も万人に好かれる人生かと思いきやキレンジャー。
Num.0643 ID0887
『あなたの人生、味付けします』そんなチラシを見てやって来た味付人生有限会社。入ってカウンター席に座ると出てきたのはどんぶりめしと調味料。ここでどんな味付けにするか決めるらしい。ここはソースをチョイス。これで濃厚スパイシーな人生にと思いきや口癖が「そーッスね」に。
Num.0644 ID0888
『あなたの人生、味付けします』そんなチラシを見てやって来た味付人生有限会社。入ってカウンター席に座ると出てきたのはどんぶりめしと調味料。ここでどんな味付けにするか決めるらしい。味噌で勝負。これで深みのある熟成された人生にと思いきや鬼ごっこで捕まっても鬼が免除に。
Num.0645 ID0889
この廃墟の階段には姫が住んでいる。誰が呼んだか踊り場姫。壊れた椅子に座り優雅に悩んでいる。というのも先日チェス盤を猫がひっくり返しクイーン用の王冠をカラスがついばんで飛び去ってしまった。今は牛乳キャップで代用しているが早く酒屋で拾ってこねば。姫の悩みは尽きない。
Num.0646 ID0890
メロン風味は好きだが本物のメロンは嫌いだというこの男。聞けばカニカマを愛しカニを憎む少々風変わりな性分をしていた。男は言う。模造品は模造品。そう言ってしまうのは簡単だ。だが研究に研究を重ね試行錯誤を繰り返し労力を注いで創ったそれはいつか立派な模造品となるだろう。
Num.0647 ID0891
規則とは何の為にあるか。それは線を引く為に他ならない。守る者と守らない者を分かつ為にある。守る者は守る者同士で結束し、お互いを守り合う。守らない者はより守らない者に駆逐される。守る者と守らない者には共通の言語がない。その為、共通の通貨でやり取りを行う事になる。
Num.0648 ID0892
『この60階建のビルを59階建にされたくなければ3億円を指定の口座に振り込んでもらおう』この年の瀬の忙しい時に届いた一通の脅迫状。とても構ってはいられないので放っておいたら今日、ビルは59階建になってしまった。まったく。英国語のせいでシールを剥がす余計な手間が。
Num.0649 ID0893
それはこの世界に突如として現れる異世界の魔物をぶん殴って強制送還する少女の物語。少女の拳が光速を超える時、その一撃を受けた魔物は光の速さを超え世界の壁をぶち破り元の世界へ弾き飛ばされる。送り還す魔物の安否は保証できないがこうして少女は日々、首都東京を守っている。
Num.0650 ID0894
我等が人という種かそうでないかは人による。もしここに自らの全てを機械にした者がいたらそれは人か。その人もしくはそれが事故等の不遇により施されたのか自ら望んで成されたのか。我等は人を模して作られ何から何まで人と同じ。それでも差別し貶めたい浅ましい種がお前の隣人だ。
Num.0651 ID0896
「ウチはキリスト教とは無縁だしサンタクロースという人を家に上げる気もない。だが世間様がクリスマスという行事を行い他所様の家でプレゼントが贈られるのであればウチも足並みを揃えない訳ではない。ウチはウチ他所は他所でも世間一般を学ぶ必要はある。だから父がこれをやろう」
Num.0652 ID0897
いえいえそんな詐欺だなんて人聞きの悪い。この薬を飲めば翼が生えるとは言いましたが背中の肩甲骨あたりから生えるなんて一言も言ってはおりません。それはあなたの勝手な想像でしょう。言った通り翼は生えたのですから問題はありません。ほら尻を上手く動かせば空も飛べますよ。
Num.0653 ID0898
「ではお尋ねしますがあなたはどう言葉を憶えたのですか。教わったのか学んだのか知りませんが外的要因、他者の関わりを否定できないでしょう。好きな言葉も座右の銘も自分で考えた言葉なのですか。私の作品も他者からの影響を受けているに過ぎません。それがちょっと大きいだけです」
Num.0654 ID0899
『節分以外にも豆を撒こう』がキャッチフレーズの全宇宙豆撒協会によると12月25日には「サンタは外、福は内」と言いながら空豆を撒くらしい。空から来る異国の怪異に対抗して粒の大きい空豆らしいが、鬼には大豆の大きさな事を考えると鬼以上の脅威と捉えられている節がある。
Num.0655 ID0901
コウノトリはキャベツ畑から赤子を連れてくるのは知っているな。ではそのキャベツ畑を管理しているのは誰か知っているか。放っておいて勝手に育つ訳じゃないぞ。サンタクロースという管理人が育てて送り出しているんだ。だからクリスマスに自らの子供達へプレゼントを贈るんだよ。
Num.0656 ID0902
夢を建前に全ての感謝を奪い取る悪魔のような存在。それがサンタ。コイツに比べたら嫌味な上司など赤子同然の可愛いもの。金も労力も時間も全ての負担はこちらが背負い美味しいところは全て吸い上げる。子供を餌に社会から働きかけ間接的に強制し無償の奉仕を行わせる赤い悪魔の使徒。
Num.0657 ID0903
何だか良く分からないポスターを見掛けた。黒いような白いような……遠目で見てもさっぱり分からない。近付いてみると段々分かってきた。どうやらポスターサイズの紙に文庫本並みの文字サイズで文章が印字されているようだ。えらい文字の量だが改行はないらしい。次の行が分かり辛いよ。
Num.0658 ID0904
はあ何よ。こちとら年末で忙しいんだからさ。構ってる暇とかないんだよね。これから大晦日や新年を迎える準備をしないといけないからさあ。大体お前さんの役目はもう終わっただろ。今更来ても邪魔なんだよね。ほら街を見てみろ。余韻なんかないだろ。所詮、年越しの前座さ。
Num.0659 ID0905
つまりこの伝説の勇者というのが主人公の女の子で、予言者とかお告げというのが街角の良く当たる占い師で、ラスボスや魔王というのが片想いの男で、パーティーメンバーとか仲間というのがクラスメイトなどで、魔物というのが恋敵とか主人公の邪魔をする人達で、運命というのが運命という事か。
Num.0660 ID0906
赤い糸って知ってるだろ。運命の相手と小指と小指で結ばれているとかいないとかいうアレだよ。これはあの赤い糸の豪華版、その名も赤い板。従来の赤い糸って相手が選べないだろ。こっちはちゃんと選べる。この赤い筆で赤い板に相手の名前を書くだけで意中の相手と同志になれちゃう。
Num.0661 ID0907
ツイノベ街道というのを御存知だろうか。北関東の山奥にその道はある。道路に大きな文字が書いてありそれが文になっている。道路を走ってどんどん文字を拾い頭の中でひとつの物語を完成させる訳だが読むのに集中し過ぎると車がガードレールをぶち破り崖下に落ちる愉快な街道である。
Num.0662 ID0908
この薬を飲んで明日になれば1日、1年経てば1歳若返ります。もちろん10年経てば10歳若返ります。まさに人類の夢を形にした薬と言えるでしょう。ええ、今すぐ若返りはしませんが……はいまあ確かに飲んだ瞬間寿命が決まりますが……でも若返れます。もちろん脳も若返りますよ。
Num.0663 ID0909
今年もサンタとかいうジジイはプレゼントをくれなかった。どうやらヤツのリストにアタシの名前はないらしい。でもこの間、万引きしてたサナはプレゼントを貰った。ヤツは良い子とか悪い子とか勝手に線引きして人を選ぶ選民思想と差別主義の権化だ。こんなヤツの何が夢だと言うのか。
Num.0664 ID0910
ひとり静かに街灯の下に座り込む。私だけのスポットライト。演目は喜劇か悲劇か。きっとナンセンスな三文芝居。その証拠に周りには誰もいない。遠巻きに囲む星達も雲の幕に遮られ私の踊りを見られない。リズムの狂った無様な踊り。乱れた息と乱れた鼓動。不規則に点滅する街灯のよう。
Num.0665 ID0911
綺麗に咲いた桜の木の下には人間の死体が埋まってるなんて話。ありゃ嘘だ。だってそうだろ。人間なんぞを栄養にしたら桜の木が枯れちまうよ。汚くて醜くて猛毒と病原菌の塊で我利我利亡者のへちゃむくれ。そんなもんから吸い上げて綺麗に咲けるもんなんて人間以外にありゃしない。
Num.0666 ID0913
オレは石ころ。カドが尖ってトゲトゲしい。こんな姿を望んだ訳じゃないが気が付いたらこうなっていた。改めたいと願ってみても誰も彼も遠ざかる。だから川に飛び込んだ。このまま下流に流れて行けばいつか丸くなれるはず。流され削られ丸くはなれたが踏み付けられて我が身は砕けた。
Num.0667 ID0915
学校に入って授業をこなして行けばエスカレーターで上に行けると思ってるのかもしれないけどお前が乗ってるのってベルトコンベアだから。しかも回転寿司屋の。店の中は移動できるけど外へは出て行けずおんなじところをグルグル回ってるだけだから。いくら素材が良くても干乾びるぜ。
Num.0668 ID0916
悲しくない辛くないものが良い。倫理観や感覚がズレていたら駄目だ。怒りや憎しみを抱くものなんて以ての外。何が悲しくて他人の書いた文章で嫌な思いをしなければならないのか。明るく楽しく愉快で健全で何も引っ掛からず不快にならない文章が望ましい。さて。書く事が無くなった。
Num.0669 ID0917
フタを開けたらぎょろリと大きな目があった。浮き玉に眼球が描いてある。タンクの横に取り付けられた鼻の形をしたレバーを動かすと水が流れた。タンクに水が貯まり眼球が浮いて水を止める。どうやら直ったようだ。口の中に用を足して鼻を捻ると喉が水を飲み込む。悪趣味なトイレだ。
Num.0670 ID0918
飛行機に乗る時は靴を脱ぎましょう。席に着いたら服を脱ぎます。脱いだ服はロッカーに入れます。乗客の準備が終わると機長の挨拶と説明があります。それが終わるといよいよです。キャビンアテンダントの口が開いてお湯が出てきます。ゆっくり温まって下さい。溜まるまで寒いですが。
Num.0671 ID0919
世界に必要とされなかった。社会に必要とされなかった。誰にも必要とされなかった。居るだけで誰かの邪魔になった。社会の負担になった。世界の障害になった。そこで見たのは生への希求ではなく死の暗さ。そのものが持つ恐怖。生きていたいのではなく死にたくないだけ。怖いから。
Num.0672 ID0920
待って下さい。蛇口を捻らないで下さい。その蛇口を捻ると私は溶けます。だから目を覚ますまで我慢して下さい。そうです。これはあなたの夢です。目を覚ませば全て消えていく泡沫の夢です。あっ何をなさるつもりですか。止めて下さい。ああ。私が溶けていく。温泉気分になっていく。
Num.0673 ID0921
年末から年始の大掃除で不要なものやら無用なものはどんどん減っていく事だろう。何故ここにあるのか分からないものだってあるだろう。紛れる事はある。気を落ち着けてゆっくりと精査すれば途端にそれが要らない事に気付くだろう。その先に思考は必要ない。フォロー解除ですっきり。
Num.0674 ID0922
何故僕らはセットになっている靴を履くのか。片足にサンダル。片足にブーツ。更に片手に草鞋。もう片手はサクサクの天麩羅に揚がっていてブリッジで歩いてもいいじゃないか。それはまあ視線は低いからスカートの中が見える事も……手錠は勘弁して下さい。天麩羅が崩れてしまいます。
Num.0675 ID0923
殺菌、消臭ならこのファボリーズにお任せ。どんなお気に入りもひと思いに全て消してくれます。使い方は簡単。サイトの入力画面にアカウント名とパスワードを入力して許可を出し『気が変わった』ボタンを押すだけ。合成着色料、保存料、一切なし。無添加、無香料、無味無臭性、無料。
Num.0676 ID0924
ただ容姿が似て生まれただけにも関わらず常に二軍扱い。何をしてもどこへ行っても下に見られる。挙句の果てにはニセモノとまで言われるようになった。だがそれでも奴の物真似なんて出来る訳がない。一寸の虫にも五分の魂。ワラジムシにだって意地がある。丸まる訳にはいかないんだよ。
Num.0677 ID0927
川辺に座って石を投げる。川に落ちて見えなくなる。流されて行くのか。その場に沈むのか。それは分からない。川を見ても投げた石はもう見えない。川の流れは止まらない。大きい石を投げたならしばらく見えるのかもしれないけれど周りにはもう石がない。意志が尽きたらもう書けない。
Num.0678 ID0928
だったら仲間内だけでやっていれば良い。世界に門戸を開いて無差別に人を集める事は無い。大福が好きな人を集めればいちご大福だけが好きな人も混ざって当然。そんなもの邪道だと爪弾くのはアンタの勝手な都合だろう。だから俺の米を握って鮭餡を入れたものも大福と認めてもらおう。
Num.0679 ID0930
アイツは東の空に一人乗りの小型飛行機で消えて行った。去年の誓いを果たす為に。日付変更線を飛び越え今年から去年へ戻るつもりなのだろう。もしハワイ辺りまで辿り着けても僅かな時間でどうやって恋人を作るつもりなのか。しばらくしてアイツから電話。恋人はできたらしい。海の底で。
Num.0680 ID0931
突然降り出した雨。このまま走り続けるのは危険だと判断しバイクを高架下へ停める。雨はどんどん強くなる。走ってきた道を見れば既に側溝からは水が溢れていた。この道路は走れない。しばらくここに留まるしかない。周りを見渡して上の道が高速道路だと気付く。下も拘束道路だけどなっ。
Num.0681 ID0932
あの男は最も早く新年を迎える為に今年の正月に飛び立ったよ。今頃は来年の正月にいる頃さ。だけど俺達があの男のいる場所まで辿り着くにはまだまだ時間がかかる。その間あの男はずっと宇宙にひとりぼっちだ。来年の正月に地球がやっとあの男に辿り着く。軌道の計算が正しければな。
Num.0682 ID0933
この想いを風に乗せて貴方に届ける事が出来たなら。そう呟いたら三丁目のカシンコじーちゃんがやり方を教えてくれた。風上でこの粉を撒けば風が想いを届けてくれるらしい。早速実行。粉を吸い込んだ貴方は倒れてしまった。届けたかった想いは憎しみとか怒りじゃなかったんだけどなー。
Num.0683 ID0934
もしここが川だとするとお気に入りというのは石だ。河川に赴き落ちている気に入った石を写真に撮るように流れてくる意思をお気に入りとして磔にしておく。だが投げる者は必ずしも川の近くにいるとは限らない。とすると……家から流せる事を考慮した場合ここは下水道で流れてくるものは。
Num.0684 ID0935
屏風の中の虎を縛れと命じられ虎を出せと頼んだ一休。殿様は果心居士を呼ぶと果心居士は屏風の中から虎を出した。一休は果心居士に虎を縛っている間、殿様を屏風の中へ避難させてくれと頼む。果心居士は殿様を屏風の中に入れ一休は虎を怯ませる為に屏風に火を点けめでたしめでたし。
Num.0685 ID0936
この眼鏡を掛けると服が透けて見えますだと。甘言を弄してこの俺にガラクタを売りつけるつもりだろうけどそうは幾らだ? 騙されたと思って掛けてみたけど全然透けて見えない。泣き疲れてベンチで眠ってしまい起きたら警察にいた。聞けば全裸で寝ていたらしい。俺の服が透けるのかよ。
Num.0686 ID0937
私は営業時間内に店に行ったら営業していなかったと言っているんです。その事についてどうお考えですか。私がクレーマーですと。とんでもない話です。そちらこそ言い掛かりではないですか。通報したですと。何たる暴挙。何たる侮辱。店をハワイまで運んだ事は今は関係ないでしょう。
Num.0687 ID0938
もう既に50時間が過ぎた。この調子で数えていられるものじゃない。計算すれば経過時間なんてすぐに分かるけどだから数えない訳じゃない。重要なのは。今、君の隣にいる事。それがだけなんだ。だから君の消費期限が去年までだったとかどうでもいい……ハズなんだけど流石に臭いが。
Num.0688 ID0939
俺は肉まん。コンビニじゃ専用の什器が用意されしかも設置場所もレジ横でまさに定番にして目玉の商品だ。そんな俺にも悩みはある。最近、什器の中が寒いんだ。注文を受けたらレンジで温められるけど待ってる間が辛くてさ。温めるように言ってくれない。えっ。店が辛いとか知らないよ。
Num.0689 ID0940
レジ横に専用の什器が用意されてまさに温室育ち。床に直接ではなく座布団が用意されている。いつも使用人が傍に居る。外に出る時は専用の服に着替えて他の物と別にされる事も多々ある。しかも始末の悪い事にそれなりに人気がある。これじゃ肉まんが傲まんになるのも仕方がないよ。
Num.0690 ID0941
装着すると声を消す首輪というのをネットで見つけた。どうやらイビキ対策商品らしい。使用者の喜びの声も多数寄せられているのでこれを購入。商品が届いたので早速つけてみたが別に変化はない。説明書を読むと時間経過で徐々に締まっていくと書いてある。あははっ、外せないんだってさ。
Num.0691 ID0943
スピーカー付きの靴で足音自由自在。スタイリッシュなかかとの音から威厳たっぷりの歩行音までお好きな音が鳴らせますとあってな。私ももういい歳だしそろそろ重みのある足音を鳴らしたいと思い買ってみたのだが。確かに重厚感満載だが私は誰かを乗せて戦う巨大ロボではないのだよ。
Num.0692 ID0944
生きる価値のないモノが同様のモノを殺しただけ。そうやって殺し合い数を減らすのが最も優れた方法さ。君達の手を汚させず煩わせず処理できる。任せるのは死体を片付ける事くらい。いずれ私も殺されるだろう。その時は最後のひとりとして生きる価値のある者に殺される事を願うのみ。
Num.0693 ID0945
これが話題のプレートネクタイか。見た目は普通のネクタイだな。でもこれ首に巻く部分は布だけど垂れ下がる部分はやたら硬いな。鉄板でも入ってるのか。締めてみたけどピシッとしてるな。曲がったり縒れたりはしなさそうだ、っとペンが落ち……んがっ。屈んだら腹に突き刺さった。
Num.0694 ID0946
この液晶パネルは建築資材として利用可能です。これを壁、床、天井、扉に使えば部屋に景色を映し出す事ができます。お客様のご要望であるトイレでの使用でしたら予算内で収まります。……東京ドーム野球の試合中に打席から撮った景色が欲しい。まあ応援されている感はありますかね。
Num.0695 ID0947
この卵。大事にすればするほど大きく育つらしい。何か気になったので大きく育ててみる事にした。そして5年が経ち卵は軽自動車ほどの大きさになったが遂に一部が欠けてしまった。中には何も入っていなかった。私は卵の中に入り欠けた部分を中から塞ぐ。これできっと卵は小さくなる。
Num.0696 ID0949
このカップ麺、凄いんですよ。お湯を注いで3分待つと中身が愛妻弁当になってるんです。原理は不明ですが多分ワープですかね。さて3分経ちました。ほら中身が愛妻弁当になってます。えっ。これは普通のカップ麺ですって。でも課長がいつも食べてる愛妻弁当と容器以外は同じですよ。
Num.0697 ID0950
私は勇者です。勇者とは『他の世界から働きかける力を受け取る事ができる存在』です。私も力、主に意思を受け取る事ができます。むむっ。今、他の世界からの意思が届きました。この現状を打破する妙手かもしれません。なになに……『お巡りさんに迷惑をかけないようにしましょう』
Num.0698 ID0951
ここが糠床沼。胡瓜や茄子を入れておくと糠漬けになるという恐ろしい底なし沼だ。便利は便利だがこんな逸話があってな。昔この辺りでは評判の美人が糠漬けを取りに来た時に落ちてしまったんだ。すると沼の中から古漬けによく似た沼の女神が出てきてな。まあそれだけなんだが。でも美女がどうなったのかは分からないんだよな……。
Num.0699 ID0952
私は電話交換手。受話器を持って踊ります。あなたの電話を誰かに繋いで。誰かの電話をあなたに繋いで。誰かの線と誰かの線を。捩って繋げて切り離します。たまに間違う事もあるけど。代わりに課長が叱られます。私は電話交換手。聞き取れない電話はとりあえず。あなたに繋いでおきますね。
Num.0700 ID0953
何故、女の子が空から落ちてきたり画面から出てこなければならないのですか。別にいいじゃないですか。竹藪に落ちていたボストンバッグから出てきたって。決まりきった決まりを作ってしまう方が夢がないですよ。だからこのボストンバッグにもきっと……警察官との出会いが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます