第17話 気弱いうさぎ

 そして、次の日の夕方。文芸部こと中二部に新たなメンツが加わった。


「よ、よろしくお願いしましゅッ。日高 ひだか ゆいです!」


 噛んだことにすら緊張で気づかず一生懸命に頭を下げているのは道端で先輩が勧誘をしていたあの気弱そうな女の子だ。

 今日の先輩は中二病モードではないので穏やかな視線を日高さんに向けていた。ただ、神埼さんは今にも・・・


「あー可愛いね。よしよし緊張したね。先輩!この子私のペッドにしていいですか!!」

「だめです。日高さんが可哀想でしょ」


 あーやっぱりこんな感じになったか。神崎さんの気持ちはわからんではないが日高さんの気弱さを察しろよ。ほら俺の横を見てみろよ。

 今にも愛でたいけど我慢しているっぽい顔をしているぞ。近衛このえさんを見習え。そして日高さんの顔が青いこと青いこと、もうすぐで倒れそうな青さだ。やばい、近衛さんがハアハア言い出した。


「あわわわ」

「日高さん。大丈夫?」

「ハアハアハア」

「ねー先輩、いいじゃないですかー」

「オーッス。そろそろ部活見学も終わりに近づいてきたしな。顔ぐらい出しておこうかと。って混沌カオスだな」

「天才文系の姉、天才理系の姉といわれてるんですよ。ペッドぐらい飼えますって」

「日高さん、意識ある?大丈夫?」


 本当に混沌こんとんとしているな。こんなに騒がしいものなのか中二部は。いや、騒がしいのはわかっていたが俺が想像していた騒がしさではない。


「あれ、俺に気づいてくれないの?ねぇ?」

「日高さん保健室つれてかないと」

「先輩ーどこ行くんですか~」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る