第一章 言えない気持ち

「ねぇ、僕ってさ必要あると思う?」

「…は?」


唐突に何を言い出すんだろう。光咲は首を捻った。

それに気づいたのか気づいてないのか光咲の目に映る少年は苦笑混じりに


「いや、何でもないよ。ごめんね。気にしないで」


と言った。

たまに、本当にたまにだが少年はこういう事を光咲に漏らしていた。

光咲はかける言葉が見つからず、しどろもどろになり結局今みたいなパターンになるのがオチになる。


いつもなら此処で終わりだったけど、今回の光咲はこれで終わらせなかった。


「あのさ」

「…え?」

「最近どうしたの?何か悩んでる事でもあるの?」

「……」


光咲の言葉に明から様に顔を伏せる少年。

それでも、光咲はやめない。


「何か悩んでるのなら話聞くよ?」

「……っ」

「ごめんね」


本日二回目の謝罪。一体何回謝ればいいんだ。

光咲は段々苛々してきた。


「その、ごめんって何に対してのごめんなの?」

「えっ…それ、は…」

「貴方が何に悩んでるのか知らないけど私ってそんなに頼りない?」

「ちがっ…そんな事、ない」


ちょっと言いすぎたか、と若干後悔しつつも後悔はしていない。

これは、光咲の"本音"でもあるからだ。


「そんな事ない? ねぇ、本当にそう思ってるの?本当の事を言ってよ。私が頼りないなら頼りないってさ」

「だから…そうじゃないんだって!」

「だったらどうだっていうの!」

「…!」


普段からあまり大声を出さない光咲が怒鳴った為、少年の肩は大きくピクリと震える。

よほど珍しかったのだろうか、口を開けてポカンとしている始末。



「ごめ…っ、別に君がどうって訳じゃないんだ。これは僕の問題であって…」

「…もう、いいよ」


先ほどとは違って、抑揚のない声音に少年は不信感を覚え、そっと顔を上げて光咲の顔を覗き込んだ。


「…え」

「ねぇ、"満"」


顔を上げた光咲の瞳にはもはや"光"など存在しなかった。

あったのは、底知れぬ…"暗闇"のみ。






「どうせならさ」

「その手で私を殺してよ」

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