君は生きて~I will not forget about you~

夜神沙夜兎

プロローグ

「僕はもうすぐ消えるかもしれない…」


いきなり貴方がそう言い出した時、私は困惑した。

どうして?何で?

どうしてそんな事を言うの?って。


だけど、微塵も感じさせない程私は無表情だったと思う。


「何かあったの?」

「疲れたんだよ…」

「生きるのが?」

「そう…」

「ふーん、じゃあ、消えてどうするの?」

「分からない…」


振り返ってみればあの時の私は本当に冷めていたと思う。

彼の体は小刻みに震えていて、触れてしまったら壊れてしまいそうなくらい弱々しかったんだ。


もっと早く気づいていればあんな事にはならなかったんだろう。

私が未熟だったから、彼も色んな人も傷つけてしまった。


今となっては、どうしようもない事なんだけど。

過去ばかり見ていても前に進めない────。


じゃあさ、忘れろっていうの?

大切だった、あの時間を────────。



「僕さ」

「ん?なぁに?」

「君の事好きかもしれない」

「えっ、好きかもしれない?」

「まだよく分からないんだけど、君の事守りたいって思うんだ。」

「この感情がどういうものか今の僕には理解出来ない。でも、もしかしたらこれが"好き"って感情かもしれないって思ったんだ」

「ふーん?なら分かるまで傍にいてあげる」

「いいの?」

「いいに決まってんじゃん」


本当は私が貴方の傍にいたかったから。

傍にいれる口実が出来たって喜んでたっけ。


「今までありがとう────」

「貴方はどうか生きて────」


どうして、貴方を救ったつもりが逆に救われちゃったかな。


「大好きだよ、馬鹿」


崩れさる貴方に向かって私は言った────。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る