第4話
正午前。誰かが窓をたたく音で、僕は目を覚ました。それは、例の少女だった。小さな町だから、僕の家くらいちょっと探せば見つかったのだろう。
少女は、澄んだ瞳の中に飛蚊症が見えるような、そんな濁った目で僕のことを見た。
「ねえ、花って枯れたらどうなるの?」
「土の中にかえって、新しい花のためのごはんになるんだよ」
「ふーん」
今度は、少女の母親はやってこなかった。小一時間ほど、とりとめのない話をつづけた後、僕はふと、思っていたことを話した。それほど少女に気を許していたのだろう。
「いいこと教えてあげようか」
「なあに?」
「人間ってみんな、驚くほど簡単に死ねるんだよ」
「死ぬの怖いよう」
「怖くなんてないさ、ただ土にかえるだけだよ」
「どうやって?」
「ある花の匂いを嗅ぐと、人間はすぅーっと眠りにつくように死ぬ。これは、大人たちは誰も知らないんだ。二人の秘密だよ?」
「うん、わかった」
少女は、澄んだ目で帰って行った。
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