炸裂!究極コンボ!
静まり返った教室というのは、なんとも息苦しい。
この変な緊張感が呼吸をすることすら許さない感じだ。
昼休みで、他のクラスに遊びにいったり学食を食べに食堂に行ってるやつもいるので、クラス全員がいるわけではない。
しかし、逆に同じクラスじゃないやつもいる。
この静まり返った教室の中を堂々と歩き、俺に近付いてくる一人の生徒。
神咲 優美が近付いてくる。
その表情は、笑顔でもなく、怒っているようにも見えない。
無表情なのだが、何やらただ事ではないオーラを身にまとっているように見える。
「体調はもう良いのですか?」
「いや、そもそもどこも悪くないのだが……」
「そんなわけないです。 ちゃんと体温も計ったのですから」
「ん? そうなのか? 言われてみれば、起きた時体が重かった気はするが……」
「ええ。 私がとろけそうになる程熱かったですよ」
「え……? 優美、確認なんだが、どうやって体温計った?」
「もちろん、肌と肌で計りましたよ。 ゲキアツでした」
「お前は、人が寝てる時になにやってんだ!?」
「そんなことよりも、そちらの方は? なぜ、隼人さんと一緒に昼休みに登校してきたのですか?」
優美の視線が俺の後ろに隠れるように立っていた白石さんに向けられた。
優美に声をかけられて俺の横に出てきた白石さんだが、何やらこわがっているように見えた。
「わ、私は、隠れていたら急に声をかけられて、気付いたら教室まで一緒に……」
うむ、間違っていないが……
「つまり、ナンパですね。 ナンパというやつなんですね」
やはり、誤解した。
しかし、ここで俺が口を出したら事態は悪化しかねない。
頑張ってくれ! 白石さん!
「あ、いえ、そういうのではなくて、なんか水町くんはそういう人とかじゃないっぽいですし……」
「つまり、口説かれたんですね。 すでに、口説き落とされたということですね」
白石さんは、フォローしてくれたが優美には通じなかった。
このままじゃまずいと思い、口を出そうかなと思っていたが、俺の親友がこの戦場に自ら近づいてくる。
そう、勇太が俺にアイコンタクトを送りながら優美を止めにきてくれたのだ。
さすが、親友だ!
「優美ちゃん、落ち着きなよ。 まだ、ナンパだと決まったわけじゃないんだ」
「勇太さん、どういうことですか?」
「こういう時の問題はひとつだ、下心があったのか? なかったのか? 隼人、なぜ隠れていた白石さんに声をかけたんだ?」
こいつは、やはりただのクラスメートだ。
おもしろがって近づいてきただけだ。
こいつには後で消しゴムを小さくちぎっていっぱい投げよう。
よりによって、白石さんに声をかけた理由なんか聞いてきやがったのだから。
それに答えるということは、白石さんが謎の独り言を呟いていたことを暴露しなければないないというのに…… それはダメだ! やってはいけないことだ。
「答えたくない! その質問には答えられない」
「黙秘か、不利になるぞ? 親が泣くぞ?」
「いや、なんと言われても答えられない!」
勇太だと話が進まないと理解したのか、ただうざかったのか優美が勇太を黒板に突き飛ばして前に出てきた。
ボスキャラに倒される雑魚敵のようだった。
「隼人さんの覚悟はわかりました。 ですが、私にも考えがあります!」
「考え……? ま、まさか……」
「教室にいる皆さま! 聞いてください! 実は、隼人さんんん!?」
まずい! 俺は思わず背後から優美の口を手でふさいだ。
さて、どうする? 謝るか? いや、謝る必要はあるのか?
何か優美を黙らせる方法は……壁ドンか!?
前にスナイパーこと美香を制圧したあの技しかない!
「優美、なぜ俺を困らせるようなことをするんだ?」
口を手でふさぎながら、優美を黒板まで追い詰めた俺は、必殺壁ドンをくらわした。
ドン!をした左手が少し痛かったが、あくまで表情はクール。
「そ、それは、隼人さんが悪いからですよ! こんなことしても無駄ですよ!」
少し効いたようだが、やはり手強い。
やるしかないか? あれを…… そう壁ドンからの究極コンボ。
残った右手で…… アゴクイだ!!
「いいから、もう黙るんだ」
「は、はい。 あ、後で説明してもらいますからね……」
キーンコーン カーンコーン
試合終了のゴングのように、昼休み終了のチャイムが校内に鳴り響いた。
壁ドンからのアゴクイコンボをくらった優美はふらふらしながら教室に戻り、俺は自分の席についた。
勇太に聞いた話だと、放課後にする予定だった部活の募集をどうするか相談に来ていたようだ。
というより優美は、俺が体調悪くて休んでるからはやく家に帰って看病したいという意見を言うために来ていたらしい。
今夜はあいつが食べたい物を作ってやろう。
そんなことを考えながら、窓の外を眺めていると青空の中、白い雲がゆっくりと流れていた。
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