第1話
【2116年 8月30日 23時30分】
東京。
空は雲に覆われ月明かりはなく、見渡す限り漆黒が広がっている。
子供の頃に聞いた話だ。
まだ
まだ第三次世界大戦が起こる前。
その頃の世界には色とりどりに爆発する『花火』という火薬兵器が存在したらしい。
その『花火』は火薬兵器でありながら、漆黒の夜空に打ち上げられ、爆発すると空に花を咲かせることができたとか……
もちろん僕は見たことがない。
でも、きっと今見ている光景は『花火』に近いと思う。
モニター越しに見る景色は爆発の光で輝いていた。
花火と違うのはそれが空ではなく地上であるということ。
地上では、所々で爆発がおき、銃弾が飛び交う大規模な戦闘が繰り広げられている。
廃墟となった二つ頭の高層ビルの屋上。
僕は見下ろすようにその光景を見ている。
今、こうしている間にもたくさんの人は
時代は違えど人類は幾度となく同じことを繰り返してきた。
殺すか殺されるか。
今、地上で行われている戦闘もこれと同じだ。
しかし、過去の時代とはひとつ違う所がある。
それは、人間と戦っているのが地球外生命体『
戦況は
すでに人類側は何百という屍が生まれているであろう。
「こちら索敵班。敵
突如流れた無線。
僕はこの無線を待っていた。
「僕は機械だ……」
僕自身に言い聞かせるように呟き、ビルの屋上から光り輝く戦場に身を踊らせた。
「ナイン今の聞いたかい?」
耳にはめた通信デバイスから聞き慣れた女性の声。
「聞こえたよ姉さん。もう動いてる」
「さすがだね。いまから座標送るよん」
すぐにモニターの地図に目標の位置が映し出される。
「少し遠いな」
「まず、目標近くにいる索敵班と合流してね」
「わかったよ姉さん」
「うん。いってらっしゃい」
通信の終わりと同時に僕は着地の衝撃に備えた。
直後、大気を震わせるほどの地響きと共に着地をし、視界が土煙りで遮られながらも無傷で着地した。
生身の人間ならこの時点で命はない。
そう生身なら。
視界を上げると50メートルほど先で3人の兵士が
「怯むな! 撃て撃て撃て!」
敵の装甲は銃弾の雨を浴びても擦り傷ひとつ付かない。
「クソッ! バケモノめ! 」
「隊長!」
残った兵士の叫び声が響く。
「あの部隊はもう終わりだな」
僕の口から静かにこぼれた。
そもそも、あの部隊にはフィニッシャーとトラッパーがいない。
きっと先に戦死したのだろう。
兵士の1人がこちらに気づき声をあげる。
「援軍だ! しかも、
「助かった!」
もう1人も
僕はモニター右上の地図を確認する。
「目標までの最短ルートはこの道なんだよな」
確認したと同時に全速力で前方に走り始め、50メートルの距離を一瞬にして縮める。
僕は地面を思いっきり蹴る。体に軽いGがかかるのを感じる。
跳躍。
兵士と
着地の時に後ろにも目を配る。
後ろにいる
そこまで確認をしてから、僕はまた走り始めた。
「おい! 嘘だろ……助けてくれねーのかよ」
「お前、
確かに、今の僕なら
「昨日は悪かった。頼む助けてくれ!!」
「俺達、たまたま死んでた
しかし、後ろは振り向かず目的地に向かって走り続ける。
「うああああ!!」
後方から兵士の叫び声が響く。
叫び声が聞こえたと同時に今まで鳴り響いてた発砲音は静かに息を潜めた。
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