彼女の主張

 あなたは、神を信じますか? あなたは、悪魔という存在を信じますか?

 私はどちらも信じていますが、これといった行動に移すつもりはありません。不確かであり、姿を見ることも出来ず、声を聞くことも出来ない。そんな存在に、価値を求めるつもりはありませんし、何かを押し付けるつもりもありません。

 世の中、結局のところは自分と、その周辺の人間の力によって生き抜いて行かなければいけないのですから、祈ることはあっても、すがることは無意味でしょう。

 別に、宗教がいらないとは言いませんよ? 宗教に意味がないとは、言わないですよ?

 ただ、その対象となっている神であったり、悪魔であったりするものは、空想上のものでしかないことを、理解して欲しいだけです。

 もちろん、それぞれの存在が立証され、発見されれば話は変わってくるでしょう。天動説から、地動説に変わるように、時代の流れと共に考え方自体が変わるものもあるでしょう。

 ふむ、前置きが長すぎたようだな。本題に入ろう。

 結局のところ、私が言いたいのは「宗教上の理由で食べられない」だとか「宗教上の理由で出来ない」だとか、何かの原因を信じている宗教のせいにしてしまうのは如何なものかと、そう言いたいだけだ。

 判断力があり、ある程度の社会的地位を持つ、そんな大人ですら宗教を言い訳にして逃げている部分があるのではないかと、私は問いたい。

 確かに、禁制をかけること、我慢を強いることにより気付くこともあるだろう。

 しかし、世の中の発見というものは、発展というものは、諦めずにチャレンジしていく心にこそ応えるものだ。家の中でブルブルと震え、自らの心以外を言い訳にしているような臆病者に、何かを見つけられるとは思えない。

 他人の尻馬に乗って、楽しいか? 他人の努力の上にある、結果だけを共有して楽しいか?

 少なくとも、私は楽しくない。そんな、努力も苦しみもないような、つまらない世界では生きることに飽きてしまう。私の探究心は、そんなに大人しいものではないぞ?

 そこでだ。私は部のみんなに提案したいことがある。

 冒険に出かけないか? 新しいものを探しに、新しい喜びを探しに、私と一緒に飛び出さないか?

 苦しいこと、想像もしなかった恐怖、新しいものに触れる不安。それらが満載の、新しい場所に行ってみようと思わないか?

 私は知りたいのだよ。この世界にあるものを、この世界が求めているものを知りたいのだよ。

 なぜ、人類と呼ばれる生命体が必要とされたのか、既存の環境を破壊してまで、人類を存続させているのか、その理由を知りたいのだよ。

 無論、反対するものもいるだろう。反対されるものもいるだろう。

 だから、言い訳は私が用意してやる。私の最も嫌いな宗教を使って、言い訳を用意してやる。

 全ての原因を私によこせ。苦痛と恐怖は全て私によこせ。

 それこそが、私の楽しみになるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る