第108話 秘密の地下で

「あそこの奴隷商、主人が失踪したらしいぞ」


「マジかよ。じゃああそこの奴隷達どうなんだよ?」


「それが奴隷達も行方不明らしい。奴隷商の主人と失踪したんじゃないかって噂だ」


「ちょっ、あそこ犯罪奴隷も扱ってただろ!?危険な奴とかうろつかせるなよ!」




 どうも、奴隷商の主人がいなくなって噂になっているようで。あ、あの屋敷とか燃やしたりしたの、僕とクロじゃないよ?ちょっと裏の関係の人に頼んだだけ。ミアを狙ったんだから当然でしょう。奴隷商の人はただ単に頼み事しただけなのになぁ。


「殺ったんだ?」


「はい。裏切ってきましたので」


 ならしょうがない。無駄な欲を持たなければよかったのに。


「誰にも見られてないよね?」


「はい。そこに一番気を遣いましたから」


 さてさて、競売も終わったしそろそろ旅を再開しないとね。獣人大陸に早く行かないとゲイルがどっか行くかもしれない。というかもうどっかに行ってるかもしれない。


 獣人大陸はレミナにも関係がある地だ。レミナの元親に関する情報とかも集めておきたいね。


「あの鍵については?」


「何も……。刀を借りても何の反応も示しませんでした」


 あのマークが付いている鍵。使用法も何もかもが分からない。あの占い師が来てくれないと分からない。こちらから占い師に対しての連絡手段とかがあればいいのに。


「どうもー占い師でーす。回収に参りましたー」


 と思ったら来たよ。


「望月、朔月、人形、鍵。集まってるわね」


「と言ってもクロは渡せないし、望月、朔月も使うから渡せない。鍵に関しても使い方すら分からないから渡したくないんだけど?」


「鍵の使い方なんて閉めてるものを開けるくらいしかないでしょ。それはね、宝物庫の鍵よ。魔王さんに必要な物」


(おい、鍵を渡せ。それで奴について行け。魔王と話したい事がある)


「鍵以外は回収しないで欲しいのと、鍵を回収してもいいけど、僕とクロを連れて行って欲しい。魔王の所まで」


「回収は占いの対価だった筈だけど……そうね、いいわ。だけど一つだけ約束して。決して戦闘はしないって」


「そっちがして来ない限りはしないよ。僕達は話がしたい、それだけだから」


 それでいいよね?


(ああ)


「ならいいわ。でも本体で来てもらうわよ?今の君達、分身体でしょう?」


 ちっ、バレてたか。占いで見抜いたのかな。


「では本体と分身体で入れ替わりましょう。奥様以外はマスターの分身は見破れない筈です」


「見破れるミアが凄いんだけどね」




「さて、それじゃ行くわよ」


 占い師の空間魔法で僕とクロは転移する。転移した先は窓がない四方が壁の何もない空間だった。


「ここは?」


「地下ね。空間魔法を持ってる人しか来られないようにしてあるの」


「へぇ、隠し通路ね」


 壁に手をついたら二つに分かれて奥の道が出来るとか秘密基地みたいじゃん。というかどういう仕組み?


 通路の奥は人で溢れていた。人間とか獣人とか。他にも初めて見るエルフとかもいる。


「こんなに人がいるんだ」


「全員魔王さんを慕っている人達ね。私もその一人。ちなみに全員空間魔法の使い手ね」


 軽く50人以上はいるんだけど……。空間魔法ってそんな手に入らないはずなのに……。


「ここはみんなの共同スペースだからもうちょっと奥ね」


 占い師について行くとその奥に大きな扉があった。その扉も手をつくだけで開くんだから何か仕掛けがあるんだろうね。扉の奥は寝込んでる1人の男と世話役と思う人が2人いた。


「その2人は……。なるほど、そういう事か。主に代わり歓迎しよう」


 2人のうちの片方が声を掛けてきたが、僕はこの声に聞き覚えがあった。アレウスを倒した時に。


「緑……!」


「覚えていたか。だが、緑は魔王軍でのもの。俺の名前はミストだ。敵でないのは喜ばしい事だな」


「マスター、大丈夫です。敵対反応はありません」


「それは当然だ人形。俺は魔王軍に所属しているがスパイの為だしな。今の魔王を魔王だとは思っていない。俺の魔王はこの方だけだからな」


 寝込んでいる男に目を向ければ、それは僕のよく知っている顔がある。


「お前には四天王を自力で倒せるくらいの実力を手に入れて欲しくてあんな事をした。あのウサギにはには悪い事をしたな」


「……結局僕だけの力じゃまだまだだけどね。それより、この人はやっぱり?」


「ああ、お前の父親、鉄条 宗一だ」


 父さん……。魔王……。力を奪われたんだっけ……。


「父さん……。父さんは目を覚ますの?」


「ああ。ただ、1日のうちに30分程だ。残りは全て力を抑えるために寝てもらっている」


 30分……。短い。だけど、会話出来るならそれでも十分だ。


「話をさせてください。それがここに来た目的ですから」


(俺も話さないといけない事があるんだ。半分は時間貰うぞ)


 わかってるよ。僕達は二人で一人なんだから。

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