第53話 アレウスの力
僕は短剣を両手に持ち、雷纒、雷歩、クイックを最大で発動する。同時に鑑定の魔眼も発動させたが、詳細は見れなかった。この鑑定、基本格上には効かないということか。
先手必勝ということで先に仕掛ける。短剣に血を纏わせて懐に潜り込んで剣を振るう。
が、アレウスは手に火を纏わせ短剣を掴んできた。そのまま短剣を掴む手の力を入れようとしていたので、土魔法で土槍、雷魔法で雷槍を放ち、邪魔をする。アレウスは短剣から手を離し、土槍と雷槍を軽々と避けると反撃にと火球を撃ち込んできた。アレウスと距離を離しながら回避する。
ふぅ。多分、あのままだと剣が折られてたはずだ。危ないね。しかも、あの火かなりの火力があるみたいだ。血が少し剥がれてる。
(こっちの手は割れてるからな。どうやって勝つつもりだ?)
割れてるといってもスキルだけだし、他で何とか補って如何にか出来たらいいと思ってるよ。
(そうかい。気を付けろよ、奴の眼、あれ片方魔眼で、もう一つはわかんねぇからな)
ふぅん。魔眼だったんだ。にしても片方だけ違うってのは何か理由があるのかね。ま、今はいいや。
土魔法でアレウスの周りを土壁が囲み上から雷魔法で落雷を落とす。そして、奴が放っていた火球をアレウスに向けて暗闇から放つ。更に囲った場所を起点に風魔法で嵐を巻き起こす。
ドゴォンと音がし、土壁が崩れる。嵐が収まるとそこには、無傷のアレウスがいた。
「なんだなんだぁ?ぬるいぞ?こんなもんか?」
まじか。あれで無傷ってどんだけ強いの。これでもレベルは上がってるから威力は結構あるはずなのに……。
「やっぱ『到達者』じゃないと相手になんねぇな。雑魚だわ雑魚。あのクソ野郎、騙しやがって」
到達者……?いったい何の事だ?称号か?
「雑魚に構ってるのは時間の無駄なんでな。さっさと終わらせてもらうぞ」
アレウスが手に纏っていた火がボウッと目に見えるくらいに火力を増した。そして次の瞬間には僕の周りが火で囲われ、頭上にアレウスが拳を引いて降ってきていた。
危険感知が鳴り響き、何とか振り下ろされる拳を避けるが、地面が裂け、火が飛び散り、こちらに牙を剥く。
くっ。なんだよ、この馬鹿力!?それに火があっつい!さっきまでと段違いだ……。
「ちっ。避けんじゃねぇよ!」
アレウスが地面から拳を引き抜き、こちらに殴りかかってくる。地面が割れた所為で態勢が崩れている状態で、普通なら躱せない状況だが、風魔法で空中を足場にし、回避。距離を置くと同時に置き土産として透明球で反撃を試みる。
「すばしっこいなぁ。それにこれ、邪魔だ!」
飛ばした透明球が全て一撃で砕かれ、粉々になる。今の、見えてたぞ、あいつ!
(あの魔眼が原因だな。多分だが、あれ鑑定じゃないか?)
鑑定の魔眼か……。この魔眼は相手のスキルとか色々見えたり、幻覚とかにも対応出来るものだけど……。透明球が見えるような力あったっけ?
(お前のは血で取り入れた魔眼だからな。色々能力が落ちてるんだろうさ)
そうなのか。さて、透明球が見えるって分かった以上こっちの手札が一気に減ったぞ。どうするか。
「オラオラオラ!さっさと死んどけぇ!」
一気に距離を詰められ、振るわれる拳を紙一重でなんとか避け続ける。
「っ!?がっはっ」
しかし、真横から来た炎弾に反応する事が出来ず、一撃もらってしまい、その隙を殴られてしまう。咄嗟の事で土壁を挟んだが紙のように軽く破られ、ほとんど意味をなさなかった。
くっ………。いってぇ………。血を纏ってなかったらそのまま終わってたぞこれ………。骨までいってるな………。自己再生で何とか治ってきてるけど、まだ動けないぞ。
「おっし、終わったか?ちっ。まだ生きてんじゃねぇか。さっさとくたばれってんだよ!」
バレてる……。魔眼のせいか。すぐ動かないとまずいな。
「そんな簡単に、負ける訳にはいかないからね……」
自己再生が完全に終わるまで後数秒って所か。何とか稼がないとな。
暗闇からアレウスに向かって剣や槍、斧など様々な武器を射出していく。色々試行錯誤をして作っていた武器だから数はある。
「ちっ。魔法付きか!」
そう。武器一つ一つに魔法の魔法式を付けてある。作った時は氷魔法は持っていなかったから付いているのは土、雷、風だけだが。
本当は切り札の一つだった訳だけど、数秒稼ぐ事が出来たから良しとする。
「ふぅ。全快だ」
(だけどどうするんだ?)
……限界を超えるしか無いんじゃないかな。今の速さで無理ならジリ貧だし。スロウをかけるような隙もないだろうから。
(足に後遺症が残るかもしれないぞ。本当にやるのか?)
後遺症っていっても自己再生があるから治るかもしれないし。なら今はやれる事をやるだけでしょ。
(それもそうか)
それじゃあ、よいしょっと!クイックを頭にも使って思考速度も上げる。魔力が無くなる心配もあるので、魔力回復薬を数本一気飲みしておいた。
武器の射出を止め、黒球を出し血で魔法式を付けていく。武器に付けていたものと同じものだ。
「こっからが本気だ!」
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