第54話 反撃
黒球は周りに浮かせておく。そして、武器が殆ど無かった時に使った血を霧状にする方法を使う。この技、魔物殲滅用によく使うがこうした人らしい奴に使ったのは初めてだ。
「今、なんかしたな?」
アレウスは手に纏っていた炎を全身に纏った。その熱にやられてか、血がどんどん蒸発していく。
これじゃあもう血は通らないな……。まあ効かないよな……。こんなのは簡単に見破られるだろうなとは思っていたよ。さて、そろそろ動くか。早めに終わらせないといつ反動が怖いからね。
土魔法と氷魔法でアレウスを狙い撃ちながら距離を詰める。氷魔法はアレウスに近づくだけでどんどん溶けていくが、それでもしっかりとアレウスに当たるくらいは残る。もちろん、アレウスは避けるのだが。
その瞬間に銃を抜き、アレウスめがけて放つ。パンッという音と共に放たれた銃弾はアレウスに当たるが……。
「ちっ。ってえなぁ」
致命傷には程遠いものだった。ちゃんと当たって血も出ているが、効いてるようには思えない。
「マジで化け物か……」
(たった1発入れただけだ。もっと入れればいい)
だね。っとうおっ!?
アレウスが火球を連射してきた。いきなりの事だったので初弾を思いっきり避けたけど、暗闇に入れた方が手数も増えるしいいな。って事で初弾以外は全部暗闇で対処し、接近してきたアレウスの拳は思考加速によって全て避けきる。
そして、お返しにと暗闇からアレウスめがけて左側から火球、右側から武器類を投擲する。武器類は基本、投げたら暗闇で回収している為、無くなる事はない。黒球を使用してるから方向変換も自在だし、遠隔で魔力を式に送る事で手元になくても魔法を使えるようにしてあるからね。
僕の近距離にいたアレウスはその二つを無視して僕を殴りかかってくる。僕の方に来れば当たらないとかそんな考えか、普通に避けられないからって感じだろうか。
それでも、まあ今の無理をしている僕なら銃で致命傷となりえる頭と心臓部を狙い撃ち、躱させ、その隙に離れることが出来る。
アレウスは左右から来る攻撃を躱せないと悟ったのか、迷わずに左側の火球に突っ込み、武器投擲を避けた。
「あっちぃあっちぃ。さっすが俺様が出した火球だな。そこそこの火力がある」
「そこそこの火力って言っておいて無傷なのはどうかと思うけど?」
「そりゃあ俺様が出したもんなんだから耐えれるようにしてるに決まってるだろ。お前がその変な奴で操作権奪えるのは見て知ってるんだからよ」
暗闇の中に入れた物は全て僕が操作権を得る。生き物は別物だけど。
「だから、こんな奴ならどうだ?」
アレウスは火球を細長く、針のように薄く小さくしていく。それをこちらめがけて放ってきた。正確には僕ではなく、暗闇の方へ向けて。
炎針が暗闇に当たると暗闇に入るどころかパリンッと音をたて、貫通。僕の頬を擦り、すぅっと血をにじませる。
「おっ、貫通性、威力共に申し分ねぇな。これで、それに操作権を奪われる事は無いわけだ」
頬の傷は自己再生ですぐに治ったが、内心かなり焦っている。今まで、暗闇が突破される様な所を見た事が無かったからだ。竜でもギリギリ返せたものが、今、簡単に砕け散っているのだから。
(あれはかなり厄介だぞ。かなりの火力をしてる。竜のやつなんて目じゃないぞ)
わかってるよ。暗闇を破られたんだから!でもこっちにはまだ手はある。
土魔法で落とし穴を自分の足下に作り出し、閉じる。そして、隠蔽、忍者スキルの中の気配遮断と隠密を発動させる。
アレウスが持っている魔眼が鑑定の魔眼だった場合、眼で見えていないと発動しない。こうして、下に潜り気配などを全て消し去ってしまえば何処にいるか分からないはずだ。
そして、僕からはアレウスがどこにいるのかが気配感知でわかる。アレウスの下まで土魔法で掘り進み、黒球を待機、そこで重力場(小)を使用する。
発生した重力で土は降下。その上にいたアレウスも落ちてくる。
「今度は落とし穴ってか?」
落ちてくるアレウスが軽口を言っているが、そこに黒球を全てぶつける。魔法式に魔力を送り込み魔法を発動させる。僕は土魔法で地上へ、そしてここら一帯の土を全て硬質化させる。
アレウスの気配はちゃんと把握している。魔法のお陰で深くなったし、土もあまり意味無いだろうが硬質化させてあるので、時間が出来る。
今、一番火力のある技を使う。その為の準備だ。全身に纏っていた雷纒を脚以外解除し、代わりに炎纒と土纒を半分ずつ使う。脚に雷纒、左側に炎纒、右側に土纒というかなりアンバランスな格好が出来上がった。
左側の炎と右側の土を練り合わせる様に、自身の前で融合させていく。赤色と茶色の球体を均等になるように。
ドゴォンと音がし、アレウスが土を飛ばして地上に戻ってきた。予想以上に戻ってくるのが早い。しかし、体に纏っていた炎は消えている。
チャンスと同時にピンチでもある。今、僕がやっているのは炎天土天だが、力を合わせる難しさから移動しながら使う事が出来ない。つまり、今は動けないのだ。当てればダメージになるだろうが、動けないならただの的だ。
「へぇ?面白そうな事しようとしてるじゃねぇか!」
「ぐぅぁっ」
アレウスが接近し、拳を打ち付けてきた。それだけで体が吹っ飛び、怪我をする。幸い、土纒をしていた右側だった為そこまでダメージは来ていないが。炎天土天は吹っ飛ばされた今でも何とか継続させているが、まだ時間がかかる。
何か、何とか後少しの時間を稼ぎたい……。
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