第25話 再開

 王女様に連れられて着いたのはカフェだった。王都にカフェなんてあったんだねぇ。知らなかったよ。


「好きな物を頼んでいいですよ。私が払いますから」


 マジですか。ありがとうございます。メニューを見たら紅茶とか色々あった。お、アップルティーあるじゃん。僕アップルティー好きなんだよね。って、ここ異世界だ。アップルティーって本当に僕が好きなやつで合ってるのか?飲んでみるか。


「それじゃあお言葉に甘えて、アップルティーください」


「私もそれでお願いします!」


 ミアもアップルティーか。アップルティー好きが増える事を願う。


「では、話をしますね。言葉遣いも気楽な感じでお願い」


「わかったよ」


 僕はあんまり気楽な感じで話す事が少ない方だから普通の方がいいんだけどな。


「お願い事があるとさっき言ったけど、私を神代様の所に連れてって欲しいのです!」


 ん?神代君の所?神代君って隼人達とパーティー組んでるんじゃないのか?


「えっと、1ついい?神代君って今、何処にいるの?」


「知らないです。もしかしてあなたも知らない?」


「えっと、うん。僕が旅出る前は神代君って隼人達とパーティー組んでたし。だから、もし神代君が王都にいないっていうなら、僕は行き先を知らないよ」


「……使えませんね」


 おい、聞こえたぞ。というか連れてって欲しいっていうなら行き先くらい把握しておいてくれ。


「使えなくてごめんなさいね。神代君の行き先なら同じパーティーだった隼人達にきけば何かわかるかも知れないし、隼人達が依頼を終わらせて帰ってくるまで待ってますか」


「そうね。そうします」


 はぁ。神代君よ。面倒事を持ってこないでくれ。てかなんで旅なんか始めたのか。


「あのぉ〜私話についていけてないんですけど」


「あ、そうだったね。えーっと、うん、また後で話すよ。とりあえず、僕の親友の隼人って人が依頼から帰ってきてからね」


 あ、アップルティーきた。あ、よかった。この味だよ。安心する味だなぁ。ふぅ。




 カフェでアップルティーを飲んでほっこりして、そろそろ依頼を終えに来るだろうなという時間帯にギルドに行くと、ちょうど依頼報告を終えたであろう隼人達を発見した。


「今回はまずまずって感じだったな。クイーンがいた時に依頼をする事が出来なくて、稼げなかったから」


「そうね。あともう少し貯めないと旅は無理そうだし、明日、明後日で予定額に届かせるように頑張りましょう」


 予定額なんて決めてるのか。計画性高いねぇ。これは美智永さんが決めたのかな?


「予定額っていくらなの?」


「1人10銀だから40銀ね。ってこの前確認したはずっーーえ?」


「やあ、久しぶり」


「鉄!なんだどうしたんだ?旅はどうしたんだ?」


「鉄条君だ!どうしたの?」


「鉄条か!久しぶりだな!」


「なんで鉄条君がここにいるのか聞いてもいいかしら?」


 みんな同時に喋らないで欲しい。なんて言ってるのかわからないよ。


「全員で喋らないで。僕は聖徳太子じゃないから!それと話すならギルド出てからね」



 場所をカフェに移す。アップルティー飲みたいんです。それにカフェならゆっくりと話し出来るし。


「それで、どうして鉄条君がここにいるのかしら?」


 どうやら喋るのは美智永さんに決まったらしい。この中だと理解が1番早そうだし、ありがたいね。


「うーんと、アンヨドまで行ってたんだけど、そこで逆方向に行くとダンジョンがある街があるとの情報を手に入れたからだね。そっちに向かおうと思って、今王都に戻ってきたわけです」


「なるほどね。私達ももう少ししたらその街に行ってレベルを上げようと思ってたし、鉄条君の目的もレベル上げよね」


「まあそうだね。けど、僕だけのレベル上げってわけじゃなくて、こっちの子、ミアのレベル上げが主な目的かな」


「そう、ずっと気になってたの。その子と王女様が鉄条君と一緒にいるのを。その2人はどうしたの?」


「ミアはアンヨドで会って、まあ色々あって旅の仲間になったんだよね。で、僕とミアのレベル差が今3倍くらいあるから、ミアのレベルを上げようと思ってるわけです」


「ミアです。テツ君と一緒に旅をします。よろしくお願いします」


 ミアが魔族という事は言わない事にした。王女いるし、隼人達がそんな事しないってのはわかってるんだけど、魔族殺すべし的な事にもしなったら困るからね。まあこのまま隼人達とずっと一緒に行動する事になるといつか言わなくちゃいけないんだけどね。


「で、王女様の方は、王都についてから再開したんだけど、なんか冒険者になったらしい」


「そうなんですか?」


「はい、そうです。私は冒険者になりました。父様にも何回も反対されたのですけどね」


 僕の時と態度が違うのは模擬戦の時のせいだろうな。うん。


「それで、私は神代様のお役に立ちたいのです!なので、神代様がいるところまで行きたいと鉄条さんに頼んだのですが……」


「僕は神代君が1人で旅に出てるなんて知らなかったから、神代君の行った場所を知らないんだよね。で、同じパーティーだった隼人達なら知ってるんじゃないかってことで」


「そういう事だったのね。確かに知っていますし、教えちゃダメとも言われてないですけど、王女様が王都を離れてしまっていいんですか?」


 それは僕も気になってたんだよね。まず冒険者になるって事に問題があっただろうに、王都を離れて旅をするなんて事をしたらかなりの問題になるはずなんだよね。


「普通、離れてはいけないのですが……。私は決めたのです。たとえ父様になんて言われたとしても私は神代様の元へ行きます!」


「そうですか……。わかりました。言いましょうか。太一君はダンジョンのある街、私達が行こうとしていた、鉄条君達も行こうとしていた街に行くと言ってましたよ」


 へぇ。ダンジョンに行ったのか。人族大陸のダンジョンってまだクリアされてないらしいし、クリアされてたらやだなぁ。


「それなら、ここにいる全員で行けば安全に神代様に会えます!」


「そうですね。みんなの目的は一緒ですし、その方がいいかと思います。ですが、私達はまだお金が足りないので、もう少し待っていただきたいです」


「お金なら僕が貸すよ」


 ダンジョンに早く行きたくなった。もしダンジョンクリアに必要なのが知識で、日本の知識で解けるようなものだったら神代君が解いてクリアさせちゃうかもだからね。魔族と戦う事が占いで確定している今、強力な武器が手に入るチャンスを逃したくない。


「でも、鉄条君もお金には困ってるんじゃないの?鉄条君が強いのは知っているけど、依頼でそこまで稼げてるわけではないでしょう?」


「あー、お金にはちょっと余裕があるから気にしないでいいよ。それに、美智永さん達が死ななくて済むのならいくらでも出すよ」


「そう……。ならありがたく貸してもらおうかしらね。それで、いくらくらい貸してもらえるの?」


「このくらいでいいかな?」


 僕が出したのは4金だ。1人1金で足りるんじゃないかなって思って。


「えっと……。鉄条君、こんなにお金どうやって?」


「アンヨドと王都の間にあった森にいたクイーンを倒したら、討伐報酬って事でお金貰えたんだよね。その後も素材を売ったらかなり貰えてーー」


「クイーンを倒したのかっ!?あの強化種の!?」


「う、うん。そうだけど、どうしたの隼人?」


 隼人だけじゃなくミア以外のみんなが驚いていた。あ、あれ?


「俺たちもクイーンに出くわしたんだよ。全然力及ばずで、何とか逃げ帰ってこれたくらいだったんだ」


 え。隼人達、クイーンと遭遇してたのか。それに今みんな怪我してないって事はクイーンから逃げる時に怪我を負わなかったってことだし。あの素早さによく逃げれたね。無事でよかったよ。


「そうだったんだ。クイーンってかなり素早かったから怪我しないで無事だったのはよかったね」


「まあな。俺には『火魔法』があったから何とか糸を焼き切ることが出来てな。で、だ。あいつにどうやって勝ったんだ!?」


「あー、えー、全力の雷使って何とか勝ったってところかな。糸も雷で焼き切る事出来たし。倒した次の日は全身痛かったね」


 嘘は言ってない。隼人と仲原さんの2人に言うなら本当の事言ってもいいんだけど、みんな集まってる時に言うのは僕の事がバレることになるからね。それはまずい。っていうことで少しごまかした。


「そうか。雷か……。もっと力つけないとなぁ……」


 隼人は一応吸血鬼の力を使って勝った事に気付いてるみたいだ。こういう時に察しがいいのは隼人の良いところだよね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る