モテ期到来 ※ただし、俺を好きになる娘はみ~んなド変態
メサバ
トライアングラー編
0
ぷろろーぐ
「おかえり、恭ちゃん?」
家に帰ると、お隣の色葉が恭介の部屋で普通にくつろいでいる。
「お前……何してんだよ? いい加減、玄関から入ってこいって」
色葉は開けっ放しの窓を見やりながら、
「いいじゃん、別に。こっちのが近いんだからさ」
恭介と色葉の家はお隣さん同士で、屋根を伝って、この窓から互いの部屋を行き来していたりしていたのである。
「ていうか、今日、スカートじゃん。下から見られたらどうすんだよ?」
「誰も見ないよ。それとも恭ちゃんは、わたしのスカートの中、興味あるの?」
悪戯っぽく言って来る色葉。
「ば、バカ言ってんじゃねーよ……」
性に興味津々のお年頃の恭介だ。興味がないわけがない。
小さい頃は男とか女とかあまり気にしていなかったが、確実に二人の関係は変化しつつあった。
しかしそれでも色葉との関係は、それなりにいい幼馴染の関係であった。
だがそんな心地の良い幼馴染の関係は、高校受験の前日に、突如として音を立てて崩れ去ることになる。
受験日前日――
恭介に、受験に対する不安はなかった。受かる自信があったからだ。
別に恭介の成績が特別いいわけではないが、恭介が受験する高校は、単に家から一番通いやすいからという理由で選んだだけの、大してレベルが高い高校ではなかったからだ。
だから受験勉強なんててんでしてこなかった。それでも前日の今日くらいは、一夜漬けレベルの詰め込み方の勉強はしていた。受かるのは目に見えているが、念のためである。
「そーいや、色葉のやつ……」
いつもは窓をガラッと開けて訪ねてくる彼女であったが、ここ数日はそれがなかった。
どうやら受験勉強が忙しくてそれどころではないらしかった。
色葉が受ける高校は、名門の聖泉女子。 彼女の成績なら余裕であると思うが、性格上、きっちりと勉強しているのだろう。
思えば彼女との付き合いは、生まれた時から一緒、生まれた病院も同じで、幼稚園、小学校、中学校とずっと一緒であったのだ。
高校で初めて別々となる。
聖泉女子はここら界隈では高嶺の花のお嬢様校で、合コンとか聖泉女子の生徒がくるとなれば男連中の食いつきは半端なくよくなるとのことだった。
そんな感じで聖泉女子の女生徒の中には、早い段階で医大生なんかと付き合い、玉の輿に乗るなんてケースも多々あるらしかった。
以前色葉は、「わたしに彼氏できたらどうする?」なんて聞いてきたことがあった。
しかしそうならないと恭介は確信していた。
告白なんて恥ずかしい真似はしていないが、親同士の公認というのもあり、いずれ恭介は色葉と当たり前のように付き合い、そのまま結婚するかもしれないな、と漠然とそう思っていたのである。
少なくとも、この時、この瞬間までは。
「さて、こんなもんか……」
受験勉強を中断し、「う~ん!」と伸びをする恭介。
息抜きは大事である。
恭介は窓の外を見やり、窓のカギを閉め、カーテンを引いた。これで色葉が訪ねて窓を叩いてきても、時間稼ぎができる。
恭介は、学生鞄からケースに入った銀色の円盤を取り出し、これを貸してくれた仲元の言葉を思いだす。
「この女優、九条結愛にそっくりなんだぜ」
九条結愛はクラスでも可愛いとされる同級生の女の子。
恭介は彼女の顔を思い浮かべつつ、それをプレイヤーにセットし、再生した。
◆
「く、九条……くじょ……」
恭介は自分の世界に浸り、一人でしゅっぽっぽしていた。
そこに――
「ねー、恭ちゃん?」
ガチャリと勢いよく部屋の扉が開かれた。
「えっ? わっ!」
なぜその日に限って窓から現れなかったのか、後になって気づくが、その日は珍しく、雪が屋根に降り積もっていたため、彼女は玄関を回って恭介の部屋に訪ねてきたらしかった。
「ちょっとさー、恭ちゃんに相談がある……んだけど――」
色葉の目が点になっていた。
「あっ、あっ!」
あたふたとする恭介。きっとこの時、かなりの間抜け面をしていたろう。
既に発射準備を整え、点火スイッチの入ったそれを堪えることは不可能であった。
次の瞬間、色葉の心からの悲鳴が家中に響き渡っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます