第一部 第11話
必死に、何かを書いている鉛筆の音がします。見ると、僕が立っている場所から一メートルほど離れたところで、ノートに書き込みをしながら勉強している子がいました。
僕は、
「すごい、すごい。これほど勉強するなんて、君は将来、何かの学者を目指しているの?」
その子のノートをのぞくと、端から端まで小さな文字がびっしり書かれていました。ただ僕が声をかけても、その子は本とノートから目を離しません。そして先ほどの子と同じように、
「何で?」
と、つまらなそうに笑いました。勉強するにはするだけの理由があると思っているし知っている僕は、
「だって、そんなに勉強するって事は何か・・・。そう、目的や夢があるから勉強しているんだろう?」
僕の問いかけにその子は首を振ると、
「ううん、違うよ。親がうるさいし、みんながしているから僕もしているだけさっ。」
と投げやりで、どこか乾いたように言っていました。
「そんなの、おかしいよう。だって、何のための努力か・・・。」
僕が次の言葉を口にしようとしたとき、いつの間にかあの女の子が側に立っているのに気がつきました。女の子は「ダメ、ダメ」というように唇に指を当てると、またも何も言わずにキャンディを一つ空に投げ上げていました。今度は、黒いキャンディです。
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