真夜中の汽笛 

ゆきお たがしら

第一部 第1話

 わたしは、ミキ。

 部屋の壁に、雑誌の付録にあったボードゲームをっています。人生ゲームやモノポリーのような双六すごろくゲームでしたが、雑誌に書かれていたのは鵞鳥ガチョウゲームとのことでした。

 ただ、ボードゲームとしては今までに見たことのない不思議な絵、ドクロや死神、大聖堂などがいっぱいいてあって、奇妙といえば奇妙、気持ち悪いといえば気持ち悪いボードでした。

 大きさはレジャーシートほどもあって、いつもなら邪魔じゃまくさいのですぐに捨ててしまうのですが、ところどころにピーターパンやティンカー・ベル、不思議の国のチェシャ・ネコ、オズの魔法使いにでてくるトカゲのベルマルルに西遊記の孫悟空そんごくうなどが可愛らしく描かれていたので壁に貼っていました。

 貼ってはいたのですが、わたしが気に入らないのはスタートの次のマスにかれていた不気味な黒い竜と長い髪の女の子でした・・・。 

 

 そんな壁を見ながら、天井もカーテンも、そして机の上に置いた写真や積み重ねたノートに本が、色を失って静かに闇の中に沈んで行く・・・、星が降ってくるような真夜中。眠れない私は、花柄の布団の中で“ただ、ただ”じっと待っています。

 それは近くにある操車場で連結器が激しくぶつかり合う“ガタ~ン”という音や、聞く者の胸を締め付ける夜行列車のむせび泣く汽笛。そして、遠く海から聞こえてくる“ドドッ、ドドッ、ドドッ”とおなかの底まで響く船の低いエンジン音を聞くためでした。

 どうして真夜中に聞く汽笛や船の音は、あんなに物悲しいのでしょうか。涙が、自然と浮かび上がってきます。理由はわたしにも分からないのですが、泣きながら少しづつ涙をながして眠りにつくのが大好きでした。

 そうして、そのすべてがそろった夜には必ず不思議な夢を見ます。夢の中で、わたしはいつも男の子になっていました。男の子になったわたしは・・・。

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