7/幼馴染の少女

 午前中の講習は三時間あるのだが、その真ん中の時間は政治経済だ。回ってきた出欠用紙に、宮澤ジョーの名前があったので、出席欄に丸をつける。夏季講習は普段の授業と違ってそれぞれが勝手に希望科目を取るシステムなので、一学期間共に過ごしたクラスメイト達とは、違ったメンバーが教室に集まることになる。それゆえに顔ぶれが新鮮と言えば新鮮なのだが、回ってきた出欠用紙に、気にかかる名前があった。


 空瀬からせアスミ。


 少しの間その文字列を凝視し、そして自然な風を装って後ろの生徒に出欠用紙を回しながら、教室全体を探してみた。確かに、来ている。彼女は、窓側の一番後ろの席で、両の掌を組んで目をつむっていた。


 不思議な感覚だった。彼女とはクラスは違う。一学期の間何となく存在が気になりながら、かといって積極的にコンタクトを取りに行くほどでもない。そんな存在。


 高校に入学した最初の週にはもう、存在には気づいていた。移動教室の時に歩いてる姿を遠目に目撃し、もしや、と思った。


 決定的に存在を確認、というか同定したのは、中間テストの返却期間だった。テストの結果は大大的に廊下に張り出されたりはしないが、成績上位者の情報はSNSなどで伝わってくるもので、その中に、空瀬アスミの名前があった。


 ようやく、やはりあいつだったかと、記憶の奥の存在と今の彼女の姿、そして名前が一致した。特徴的な名前なので、偶然の一致ということはあるまい。


 空瀬アスミは幼少期によく一緒に遊んでいた少女だ。小学校でもしばらくよく一緒にいた気がするが、学年が進むごとに自然と会話する数は減っていき、中学校は別々になったので、そのまま疎遠になった。そんな存在だ。彼女が高校はまた同じ所に入学していたのに、ようやっと気づいたのだ。

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