非幸福者同盟
相羽裕司
プロローグ
1/信頼
プロローグ・A/
地面よりは空に近い場所。
疾駆する巨大生物の背中に何とかしがみつきながら、少年・
隣には、黒髪ツインテールの少女が一人、ジョーと同じようにしがみついている。
「絶対に止めてみせるんだから!」
美しいというよりはまだ可愛らしいという顔立ち。年頃の男子なら声をかけられただけで嬉しいだろう。ただ現在は切迫した状況ゆえ、風圧で顔がちょっとぺしゃんこになっている。
少女とは幼馴染で、これまでにもっと恥ずかしいような姿も見てきた。着飾って座っていれば「
「アスミ、前に使ってた『風』の技で電線を切れ」
少女の名を呼び、状況を打開する閃きを伝える。線路に沿って並ぶ電柱を指さしながら。
「『風』? 『火』が効かなかったのはさっき見たでしょ? このデカブツを止めるには、もっと大出力じゃないと」
アスミは自然を操る能力を持っている。ただ、ゼロから生み出すことはできない。その場に自然がないといけない。マッチの火から生み出した火炎攻撃は、既にマンモスの硬い皮膚の前に敗れ去っていた。
「あとは、文明パワーを使ってくれ」
アスミはハっとして、作戦を得心したようだった。
「少し時間がかかるわ」
「俺が稼ぐ」
「ムっちゃんの制限時間も切れてるのに? 危険だわ」
「守るんだろ?」
このままマンモスが俺らの生まれ育った街――
「分かった。信じるっ」
アスミはおでこをコツンとジョーの肩に当てて気持ちを伝えると、自分のやるべきことをやるために、軽業師のようにマンモスの背中を前転して宙に向って飛んだ。見られてもさして気にしないというように、スカートをはためかせながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます