167/気の効かない話
「何? 急に!?」
アスミが首ごと上半身をジョーがいた方とは反対側に離して、あからさまに警戒したような声を出したので、ジョーは落ち込んだ。
「いや。誕生日なんだろ? もうすぐ」
「あ、ああ、うん。そうだけど。志麻から聞いたの?」
「そ。あんまり変なものあげても嬉しくないだろうから」
「気、遣わなくてイイわよ」
元々ガツガツとアレが欲しいと言うタイプでは無さそうだったが、それにしてもアスミの態度は消極的だった。
「ああいうの。祝福されてしかりって人が祝福されるからおめでたいのよ。私、そういうんじゃないし」
ジョーは、アスミが自分自身を欠陥商品と呼んでいた事実に想いを馳せた。
「七十年代くらいのパソコンってあるよな」
「は?」
「今では別に売れてないし。栄えてないし。場合によっては故障もあったり。でも、未だに愛好家がいて、オークションでプレミア価格で落札されてたりとかさ。俺、そういう話、けっこう好き」
アスミはあからさまに嘆息した。
「カレンさんが金髪を
「え? ああ」
「あなた、その頃から変わってない。枯れる花に水をやってるみたい。消える雪を冷やしたくて真夏にうちわであおいでいるみたい」
それは益のないことなのに、とアスミは肩をすくめた。
「ま、ジョー君はそんな感じなのか。ゴメン。なんか私、エラそうよね。うん。やっぱり。頂けるなら、喜んで頂くわ」
歩いてきた道は、路上販売から、立ち並ぶ大規模資本のビルディングの中から、様々な商品で溢れている。さて、そんな中でアスミに似合う物とは何だろう。
アスミは結局具体的に答えなかったので、ジョーは歩きながら想像し続けた。アスミが一番欲しいものって、何だろう。
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