122/宝石と星空

  ◇◇◇


 ジョーは水の中で目を覚ました。S市一級河川の水面の底で、水の世界と外の世界の接地面の遥か先、夜天を見上げている。暗闇の中で、ジョーを包み込んでいる蒼い光があった。生身のジョーに大巨神の熱線を防ぐ術などなかった。ここまで吹き飛ばされたとしても、何故にこの体は溶解せずにまだ存在しているのだろう? 理解できる。今、球状にジョーを包み、青く輝き続けるアカリがジョーを守ってくれたのだ。光の中心は、胸のあたりで、そこには父から貰ったペンダントがあった。


(なん、で? この蒼水晶は、父さんが昔秋葉原で買った、プラスチックの模造品で……)


 あらゆる感覚が研ぎ澄まされていく。外界から感じられる存在変動律は、まさにアスミは握りつぶされ、志麻には最後の鉄槌が振り下ろされようとしていることを伝えている。


(よくは分からないけど、そうだな)


 俺は今、本当にアスミと志麻の、二人とも助けたいと思っている。


 見知らぬ男の人むかしのちちよ、一つ、とても共感できることを言っていた。地を這ってでも生きていくしかないってところ。なるほど。こんな願いを抱いてしまう、この世界の正しさに適合できない人間だとしても。そんな自分なりに最後の時まで、泥をすすっても、重い体を引きずっても。報われることなんてないかもしれなくても。生きていくしかないよな。


 ジョーがこれまで積み重ねてきた時間の中でも、特別なこの夏の日々。


 アスミと再び言葉を交わした始まりの日に次いで二度目。気が付いた、自分の本心。自分という、宮澤ジョーという存在の本途。


 こんな自分を淘汰しようと、針の雨を降らせる世界に対して、ゆっくりと防御を解いた。


 正しき暴力を振るう大巨神の歪んだかおこそが実在ならば。あらゆる遮蔽物を透過し、今、見つめている満天の星空は幻影なのか。


 ただ、納得がある。自分が自分に一致したのが分かる。


 再び静かに力を願った。強者あいつらとは、違うカタチの力を。優れていて、正しくて、そんなこの世界で当たり前に受け入れられている力とは、違う類の力を。


 至るのはこの夏二度目の邂逅。天上の彼方から、流星が降ってきた。


 流星の光が、ジョーの額に吸い込まれていく。


 本当にこれは、誰から聞いた言葉だったのだろう。


 遠い子供の頃に、自分では気づかずに向けられていた温かさの中に含まれていた言葉のような気もするし。別に自分とは関係のない所で、遠い誰かが勝手に大事にしていただけの言葉のような気もする。



「『構築物のコンストラク歴史テッド・図書館ヒストリア』」



 その言葉を口にした瞬間。ジョーの身体が紫色の光に包まれた。

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