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「船の後方で轟音が弾けた。すぐに艦体が傾き出した。視界の片隅には炎の柱が上がっていてな。わしの決断は早かった。横にいた友人を抱えて、海に飛び込んだ」


 ジョーの質問に直接応えるわけではなく、それでいて何か重要なことを伝えようとするように、ひい祖父はグラスにウイスキーを注ぐと、話を始めた。


「その船だってわしにとっては大事なものでな、助けられるものなら助けたかった。じゃが、友人も最初の爆風で飛散した鉄片で怪我をしていた。わしは、友人を助けた。習得していた古式泳法のたまものじゃ。背後に黒煙が上がり、海に重油が広がっていく中、恐怖をかき分け、わしは友人を抱えて海を泳いだ」


 ひい祖父が、ぐいとウイスキーを喉に流し込む。


「お前、どちらかしか助けられないならどうしたら、とか言いながら、その実、どっちも、あわよくば全部助けたいなんて思っているのだろう。だが、それは『奇跡』というものだ。戦艦は爆沈し、生存者は千四百七十一人中、三百五十人。その時、奇跡は起こらなかった」


 ひい祖父の言葉が胸に染みいってくる。そして、彼女が言っていた『縁』というものについて、理解し始める。


「ひぃじーじ、ひぃじーじが乗ってた船っていうのは」

「若年であったが、偉大な設計者に可愛がられる縁があってな、わしはその時、技師見習いであった。乗っていたのだよ」


 ひい祖父が、栄光と悲劇と、そして菊の紋章の記憶がわしにはある、と前置きして、その名を口にする。


「戦艦陸奥に、な」

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