38/冷たい水

 リンクドゥで伝えられた会合の時間よりは二時間前、裸体の志麻はシャワーを浴びている所である。身体の表面を幾分冷たい水が流れていく感触に集中する。自分の肢体は少女の姿をしているが、内側の激情が大きすぎて、何だか仮の体のよう。例えばあの女の遺伝子を抹殺しようと思ったら自分を抹殺しなくてはならなくなる。でもそうすると自分が死んじゃってるので、抹殺する行為を誰も慣行できなくなる。それでは、ダメだ。そんないつもの考えが頭を過る。


 それでも救いのような出来事もある。例えば空瀬アスミの存在。志麻とアスミは、現在母親が行方不明という共通項を持っている。そんな悲しみを共有している私達の紐帯ちゅうたいは尊いもののはずだ。


 水の音と共に、様々な思考が巡っては消えていく。志麻にとっては、精神の均整を取り戻すために身を清める、儀式的な意味合いの行為だった。


 シャワーの時間を終えると丁寧に髪をかわかし、下着を身に着け、いつも通り自分の納得を元に選んだ衣服を纏い、そして薄く化粧をほどこした。


 アスミが宮澤ジョーを連れてやってくるまで、あと少し。

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