2日目という((ry
「お腹減った。」
「「「へ?」」」
いつもの空き教室。
四人は思い思いの事をしていた。
絵を描く者。勉強を見ていたり教えたりしている者。そして、このメンバーの中に必ず一人はいる、寝ている者。
最初に戻ろう。空き教室に響いた声の主、それは寝ていたくるみからの声だった。
唐突さ故に、二人は何かをしていた手を止めた。手を止めなかった一人、うーさんこと歯車 卯月は、顔もあげずに口を開いた。
「急にどした?」
ーー極めて、簡潔に。まるで、男性が発するような落ち着く低音の声で。
誰もが男だと、間違えることだろう。制服だって、男子ものである。だが彼は、ーいや彼女は女性である。
「んー、お腹減ったんだよねぇ」
くるみはそんな端的な質問にも特に怖がったりもせずーというより慣れているー話を続けた。
「朝ごはん食べてなかったし、昼ご飯は財布忘れて食べれなかったし。で、今に至るって感じなんだけど。」
「うん、つまり悪いのは?」
「自分だってのは知ってる。」
知ってはいるんだけどさあ…と話を続けようとした。が、救世主がくるみに声をかけた。
「あの、パンで良かったらありますけど食べますか?」
ーそう、めいたんである。
めいたんー
「うわっほおおおおいっ!!それはチョコチップメロンパンではないですかっ!?……え、いいの?」
「犬……おっと失礼。くるみちゃんが待てを我慢してる状態なのも笑えるからあげたくもないんですけどね。」
ねぇ、今犬って言ったよね?という問いは彼女のいいですよ、という声にかき消され、彼女はその袋ごとくるみに投げた。くるみはひょいっとジャンプした。もはや本物の犬顔負けのジャンプ力である。その場にいた四人の考えは綺麗にシンクロした。
ーあ、犬だ。と。
犬と呼ばれてもしょうがない反射神経に我ながらため息を吐きながらも喜ぶ。
今日初めてのご飯だ。嬉しすぎて泣きそう。
もはや全身から喜びのオーラを出しながら袋を破く。
「いっただっきまーすっ♡」
「ちょい待ち」
「えっ?」
やっと食べれる。そう思ってかぶりつこうとしたその束の間。急に、静止する者がいた。
振り向くと、この場に唯一の男子が手を待ての状態にしていた。
しょぼんという顔文字を見事にかたどったような顔になりながら、彼女はー飢えた犬と化しているーそちらに向いた。
「なに?おとーさん」
もちろんお父さんとは彼のあだなである。
いつしか彼はー
「なに、じゃないでしょ?手洗ってきてからにしなさいっ」
そう、なにせ彼は性格がオカンなのだ。
「大丈夫、手掴みじゃないし!」
「そういう問題じゃないから」
「そう言って僕のメロンパン、食べる気なんでしょ」
「なわけっ」
ジト目でお父さんを見つめる。彼は、早くいけと目で訴えた。
はぁ、しょーがないなぁ。
こうなるとてこでも動かない彼である。僕は、パンを置いて席を立った。
「食べちゃ怒っからね!」
はいはい、うるさい、とっとと行け、3人3様の答えを返す。
僕は、ガラッとドアを開けて全速力で手を洗いに行った。
静かになった三人だけの空き教室に最初に声を放ったのは。
「んで、アレどーする?」
もはや確信犯である、うーさんであった。
「んー、どうしよっか?」
「ねー」
と女子二人はゲスい談笑をし始めている。
だが。
「めんどいからスルーの方向でいんじゃね?」
と言うお父さんの一言により、チョコチップメロンパンをどうにかするという移行は却下され、数分後(数十秒に近い気もする)に戻ってきたくるみに無事、渡されそれは胃の中に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます