見習い魔女は叶えたい

境傘

第0話

「いいかい? 誰かが訪ねてきても、決して扉を開けちゃいけないよ」


 ええ、大丈夫よ。お師匠さま。ドアではなく窓を開けたもの。


「どんなに良い奴そうでも、決して話を聞いちゃいけない」


 ええ、もちろん。それは紙に書かれていたもの。聞いてはいないわ、読んだだけ。


「ましてやお前宛の依頼なんて、絶対に引き受けちゃいけないよ」


 見習いですもの。わたし宛に依頼なんてこないわ。

 お師匠さまへのご依頼よ。


「――でも、お師匠さまの依頼を代わりに受けちゃいけない、とはおっしゃってなかったわよね?」

『いやーそれただの屁理屈じゃない?』


 ああ、でもだって!

 このお手紙からは、とってもステキな予感がするわ!

 冒険譚の最初の一文みたいな!

 ひと続きだった世界スクロールが、ひっくり返ってしまうような!


「朝起きたら夜だった、みたいな!」

『それはイデアがお寝坊さんしただけ』


 そうじゃなくって、もっとロマンチックなお話。

 だって――


 王妃さまになってほしい、だなんて!



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