第二十五章 殺人倶楽部に入って遊ぼう

殺人倶楽部会員ガイダンス

 この倶楽部の会員は、制限された条件化での殺人が、国より認可されます。

 故に殺人倶楽部の会員となれば、倶楽部のルールを遵守したうえでの殺人を行った場合に限り、法による裁きを受ける事もありません。

 ルールを守って、仲良く楽しく殺人倶楽部を利用してください。


・1 フリー殺人

 月単位で、会員レベルに応じて定められた人数の殺人が行えます。これをフリー殺人と呼びます。入会直後は、月に一人までです。よく考えて人を殺しましょう。


・2 フリー殺人の申請

 殺人を行う際は、事前に申請して許可を取る必要があります。標的の審査が行われ、殺人許可が下りた時点で、初めて殺したい相手を殺せるという流れになります。

 ただし例外もあります。正当防衛や、一般人が犯罪者に殺されそうになったのを防いで殺した場合等、緊急時のやむなき殺人は、事前の申請許可が無くても認められます。また、そういった事情による殺人は、月単位の殺人制限数にも、カウントされません。


・3 フリー殺人が禁止される相手

 世間に多大な影響を与える人を殺すことはできません。大物政治家、警察庁長官、皇族、誰もが知る有名人などは殺せません。人の命は平等では無いので仕方有りませんね。


・4 依頼殺人

 殺人倶楽部運営より会員に殺人を依頼される事があります。これが依頼殺人です。依頼殺人による殺人は、月ごとに制限のある個人のフリー殺人とは別物です。また、依頼殺人は難易度によって殺人経験値が上下します。

 依頼殺人はフリー殺人とは異なり、月単位の制限数にもカウントされません。また依頼殺人をこなすと、殺人経験値が多く入り、会員レベルも上がっていきます。

 この依頼殺人こそが、殺人倶楽部の真髄と言っても過言ではありません。どんどん依頼殺人をこなして、会員レベルを上げていきましょう。

 特別な事情がある場合は、依頼殺人の報酬に、任意で金銭を求めることもできます。その場合は、殺人経験値がわずかに減少します。報酬額は内容によって変化しますし、必ず貰えるわけでもありません。

 依頼殺人の際は、見届け人がつく場合とつかない場合があります。見届け人がつく場合は撮影もされますが、見届け人がつかない場合は、見届け人の存在が邪魔になりかねない難易度の高い依頼であるという事になります。

 難易度が高めの依頼殺人は、会員複数で協力して行うことを推奨します。人数が増えるともらえる殺人経験値も増えた人数に比例して若干減少しますが、依頼殺人を達成しなければ経験値そのものも貰えませんし、命の危険に晒されることもありますので御注意を。


・5 依頼殺人の見届け人

 依頼殺人の際には見届け人という同伴者がつく事があります。この見届け人を撒いてはいけません。また、見届け人によって殺人実行の様子は撮影され、裏通りの快楽販売サイトにて流される事もあります。これが殺人倶楽部の収入源の一つとなるのです。

 殺人者側には顔にモザイクがかかるので大丈夫ですよ。


・6 会員レベル、殺人経験値

 殺人を繰り返すことで殺人経験値が貯まり、殺人経験値が一定数溜まると、会員レベルが上がります。

 次のレベルに必要な経験値は、次のレベルと同じ数字です。レベル2に必要な経験値は2。レベル5に必要な経験値は5です。レベルが上がった際、経験値は繰りこされます。

 月単位で定められた規定数のフリー殺人は、標的が誰であれ、一人につき殺人経験値は1しか入りません。少しでも会員レベルを上げるために、月単位制限の許す範囲で人を殺してもいいですし、全く殺さなくても構いません。

 依頼殺人に関しては、標的の難易度に応じて殺人経験値が上下します。頑張って大物を殺して、経験値を貯めましょう。


・7 会員レベルの特典

 会員レベルが上がると、次の特典が入ります。

特典1:フリー殺人の月単位殺人制限数上昇

 レベルが3の倍数に達することで、月単位のフリー殺人制限数が1上昇します。レベル3で二人殺せるようになり、レベル6で三人殺せます。

特典2:肉体改造、超常能力付与、便利装備贈与

 レベルが5の倍数に達することで、殺人倶楽部のオーナーである雪岡純子より、改造手術によって超人的な能力を得るか、改造せずとも強力なアイテムを得るかのどちらが可能です。人智を超えた能力を手にすれば、殺人も捗りますよね。

 先ずはこの力を手に入れるために、レベル5を目指して頑張りましょう。

特典3:会員同士での標的の権利争いの優先権

 同じ標的を指定した場合は、レベルの高い方が権利を得ます。

 会員レベルが同じであった際は、先に許可の申請をした者となります。


・8 殺人倶楽部会員同士での決闘

 殺人倶楽部の会員を標的にしたい場合は、予め相手にも宣告したうえで、相手が応じた場合にのみ、決闘という形になります。どんな組織でも、内部の諍いはつきもの。殺人倶楽部においては、純粋に力で相手を排除という行為も認められていますが、できれば仲良く利用してくださいね。


・9 殺人権利

 もし会員同士で標的がかぶってしまった場合、例え後出しで標的指定したとしても、会員レベルの高い方が標的の権利を得ます。会員レベルが同じ者同士の場合は、単純に先に標的指定した者に権利が与えられます。つまり会員レベルが高ければ横取りができますし、横取りを防げます。会員同士での諍いの元になりかねませんから、できれば仲良く利用してくださいね。


・10 注意事項

 ルールを破った場合、殺人倶楽部を強制退会の後、粛清対象として依頼殺人の標的となるので注意しましょう。

 ただし上記にもあるように、正当防衛や他者の救出など、特殊な事情による殺人であった場合は、免除の対象となります。例えばすでに月に既定数のフリー殺人をすでに実行していたにも関わらず、大物政治家が人を殺そうとした場面を目の当たりにし、その行為を防ぐために殺した場合は、免除されます。

 上記の5に関して、明らかに意図的に見届け人を撒く行為を何度も繰り返した場合、殺人倶楽部を強制退会の後、粛清対象として依頼殺人の標的となるので注意しましょう。不可抗力で撒いてしまった場合は、免除されます。

 また言うまでも無い事ですが、殺人倶楽部の会員である事は、会員以外に漏らすのは御法度です。秘密を漏洩した場合、強制退会の後、粛清対象として依頼殺人の標的となります。ただし特別な事情があった際はちゃんと汲み取りますので、漏洩してしまった事を隠さず、殺人倶楽部オーナーの雪岡純子に御相談ください。


・11 殺人現場を見られて、警察に捕まってしまった場合には?

 何故殺人倶楽部の会員が、殺人を犯しても捕まらないのかといえば、警察上層部に根回しして、逮捕されないようにしてもらっているからです。フリー殺人の申請を事前に行い、誰に許可を取っているかと言えば、警察です。この殺人倶楽部は、オーナーの雪岡純子以外に、警察組織によって管理されています。

 ですが、普通の警察官は当然、殺人倶楽部の存在を知りません。故に、場合によっては逮捕されてしまう可能性もあります。もちろんその後に釈放の手続きを急ぎますが、運悪く短時間による拘束が発生することもあります。その際は御了承ください。

 トラブルを避けるためには、フリー殺人、依頼殺人共に、できる限り人目につかないよう行うことを推奨します。


・12 最後に……

 殺人倶楽部はとても楽しいものです。殺人倶楽部の会員になれた貴方は、身分、財力、学歴、実績、技能、一切関係なく、ただ運だけに選ばれて、殺人を楽しむ特権を得る事が出来た、とても幸運な方です。是非ともこの素晴らしい特権を満喫してください。

 しかし人の命を奪うという行為は、決して軽いものではありません。よく考えたうえで殺人権利を行使してください。

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