第10話 電話、そして出発
「今日は寒いわね。」女の子生活、二日目となる。
まさか、こんな事があるんだろうか。夢にも思わなかった。
このまま戻れなかったら、料理とかも出来るようにならないとな。
昨日は驚いたことがあった。何とこちらの月野家では、パジャマという物が存在しないのであった。だから、ショーツを履いて、ブラを着けて、スリップを着用するだけであった。
何て西洋的であるのだろうかと思ってしまった。
西洋では、パジャマを着ることなく寝ていると聞いたことがある。
ところで、お父さんやお母さんには何て言おう。月島さんの元に行くことを。そんな事を思っていたが、痒いところに手が届く。
「えぇ。はい。分かりました。光莉。月島っていう人から電話よ!」お母さんが、俺を呼ぶ。月島?師匠か。
「もしもし。只今、お電話変わりました。」
『月野光莉さんだね。私、医療法人月朋会理事長の月島雄雅だ。君には暫く、キャンプに参加してもらう。君の精神状態を元に戻す為のね。ちょっと、お母さんには変わってもらえるかな。』
「はい。分かりました。お母さん。月島さんが伝えたいことがあるって。」
母に代わる。きっとキャンプに行くことを伝えられるのだろう。
「はい。只今。」
『光莉さんの様子は大丈夫ですか?奥様。』
「えぇ。大丈夫ですよ。それで、何ですか?」
『実は、光莉さんの精神状態はまだ落ち着いていないのです。倒れた事による心的ショックで、記憶が思い出せない事になっています。その為、特化した施設がある八箕山自治区に少しの間住まわせて欲しいのです。可愛い子には旅をさせよ。と言いますよね。賽は投げられた。宜しく頼む。』
「分かりました。何時からですか?その移住期間は。」
『今日から宜しく頼みます。』
「えぇ!今日からですか?いくらなんでも突然過ぎませんか?それで、学校とかどうなるんですか?」
『安心して下さい。学校は通えますよ。我が八箕山自治区から無料バスが、海櫻女子高校に向けて出ております。そうそう。毎週末には帰れるようにしますので、定期的には会えますので。』
「分かりました。それで何を持っていけばいいんですか?」
『そうですね。取り敢えず寝間着と、制服ですかね。後は私服ですね。それ以外は持っていかなくても支給されますから。』
「分かりました。時間は決まっているんですか?」
『今日の4時に歓迎の集いがあります。その時に間に合うように来て頂ければ。』
そういう電話があって、急いで下着類や私服、制服を詰めて駅に向かった。
八箕山自治区には鉄道オンリーでしか行けない。それ程、外部の人間の来訪を拒むのである。駅の構内も石兵八陣のように迷路上になっている。
期待を抱きながら電車を待った。
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