少年時代
第1話 官品息子の孤独
2168年のことである。ムーンシティーにその男はいた。
彼の名前は、
彼は官品息子であった。
二人の親は、どちらも自衛官である。親の片方が自衛官であれば、官品息子と言うらしい。幼い時に、アルフィス共和国で内戦があり、洸の父、文彦はアルフィス共和国でPKO活動に従事していた。しかし、とある作戦の最中、失踪してしまった。
一部ではゲリラ組織によって殺されたと噂されていたが、本当のところは分からない。
母は、真由という女性自衛官である。自衛隊の常陸地方本部軍の女性部隊の副長を任されるほどの実力を持った人であったが、育児を頼れる者も居らず、イルシャーン公爵領総領事館付属警備隊に派遣されることとなり、泣く泣く彼を施設に入れた。
洸が小学一年生の時であった。
「ほら、洸。ごめんね。お母さん、仕事で忙しいからさ。少しの間だけだから預かってもらうよ。」
「お母さん、行っちゃダメだよ。ぼく、お母さんと一緒に居たいよぉ。」小学三年生の彼には親族と別れるのは辛い。ましてや、唯一の肉親である母なら尚更だ。彼の精神的ストレスは人一倍大きかった。
少しの間と言って、もう6年近くとなる。あの時背の小さく貧弱な彼は、もう筋肉のついた頑丈な青年に育っていた。
その一方で、親がいないことで抱え込み解消されなかった精神的ストレスが積もり積もって、彼を不良気質のある男にさせた。
施設に居た彼も、
あれは、小学生の頃の話だ。
「お前に、父も母も居ないんだろ?親に見捨てられた可哀想なやつだ。」可哀想!可哀想!可哀想!煽るまわりの男の子達、彼は言い返すことも出来ずに泣いていた。施設に帰っても無口になっていた。小学三年のことだった。
ある時施設に、月島雄雅という男がやって来た。
「お兄さん、誰?」洸は、彼に聞いた。
「俺は月島、
「あら、月島さん。ありがとうございます。いやぁ、閉塞気味で困っていたんですよ。」施設の人はいった。
「たまには、息抜きが必要だで。心理カウンセラーの俺なら分かるところもある。洸君も無理していたんだろう。」
著名な心理カウンセラー、月島先生は、彼を八溝山付近の山に連れていった。
しかし、そこには恐るべきところがあった。
見えない脅威となることをまた誰も知らないのだ。
そこには、一部の人しか居ない。密かな革命の準備が着々と進められていた。
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