第25話 突然の事故
世の中は突然起こることが多い。
そう、この事故も単なる偶然だったのかも知れない。
俺は、その日嫌な予感がした。学校に登校していつも早く居るはずの、
黒髪の美少女で、仲の悪かった香澄と光莉を繋ぐパイプの役割をしていた。
今となっては俺達は仲良くしているが、入れ替わりの前は仲が悪く揉め事を良くしていたらしい。
「あれ?今日、柚葉ちゃん。休みかな。」
「光莉、柚葉が休むなんて珍しいよね。」香澄は俺にそう言った。
「そうだね。柚葉、どうしたのかな?」少々の不安を感じながら、その日は授業を受けた。
あんな事が起こったなんて。思いもしなかったよ…
「黒嶋柚葉を殺って、月野光莉の目をこちらに向けろ。」
「黒嶋柚葉、確かあの資産家の娘でしたな。」山吉会初代会長、
「あぁ。黒嶋柚葉は、黒嶋仁の娘だが、血縁的には月野武蔵の娘だ。つまり、仁の妻が武蔵の元妻である。」
「ほう。月野洸の叔母にあたるのですな。」
「まぁ、そういったところだ。是非殺ってくれ。」
「分かりました。靖友様のご命令とあらば。」
「吉政様、本当に一般人を殺ろうってんですか?山吉会は、利用されてるだけじゃないですか?」舎弟の1人が山田に尋ねる。
「馬鹿野郎。そんな弱気でどうする?月帝会を利用するだけだ。いつかはアイツを殺り、俺が鷹になるんだよ。」彼はそう言うと自慢の黒いメルセデスに乗り込む。
黒嶋柚葉の通学ルートは、把握済み。
万寿川の橋を渡るところを狙うことにした。
その時、黒髪の美少女を捉えた。ひき逃げするのみだ。
「黒嶋!これも金の為だ。死んでもらう。」猛スピードで突っ込む。有り得ないほどその体は高く宙を舞い、橋の柵を越えて川底に転落した。
「ボス、殺っちまいましたよ。一般人を殺るって心地いい気がしないっすよ。」
「なぁ、森下。お前、ヤクザものだったら殺しても心地いい気がするのか?」
「ボス、気分を害しましたか。済みません。俺、言い過ぎました。」森下という舎弟は、どうも心が読めない。
「分かればいいんだよ。仕事に人情は必要ねぇんだよ。刃傷事は必要だがな。」山田はそう言うと少し壊れたメルセデスに乗り込んで颯爽と立ち去った。
「ご苦労。素晴らしい活躍じゃないか。よし、こっち来い。これは俺からの褒美だ。有り難く飲めや。」月帝は微笑むと盃に注いだ透明な液体を差し出す。
「有難うございます。月帝様。」酒だと思って飲む。山田は一気に呷る。
「あぁ…くっそ…何を、謀ったな…」
彼は苦しそうだ。もっと話したいのに、声帯がやられて声が出ない。
山田が酒だと思って呷ったのは、メタノールであった。劇薬である。
「残念だがな。聞こえてたんだよ。俺を利用してお前がボスになるって事がよ。No.1は取らせねぇぜ。今、楽にしてやるよ!」
山田の中心部から紅い雫が滴る…ドスで心臓を一突き。
山田は月帝の犠牲となったのだ。
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