1話
年末年始になると、何故みんな攻撃的になるのだろう。
スーパーのレジに並びながら、考える。
目の前には研修中のレジ係のおねーさんが、白髪のおばーさんに手際が悪いと嫌味を言われている。
まあ、箱買いのトマトを入れる袋が無くて焦り、強張った表情でオタオタして、最終的には全て箱から出して袋に放り込む暴挙に出たので仕方ないのかも。
でも責められるべきはおねーさんでもおばーさんでもなく、研修中の店員に年末のレジを1人で任せる店長だと思う。
自分の番が来たので、おねーさんを見る。
綺麗で清潔感のある人妻さんだ。
会計したあと、お礼を言う。
焦った表情のおねーさんの瞳が、少しだけ笑った。
大変な時ほど余裕、自分を守る為にも大事なことだ。
自分の暮らす世界が、子供の頃に感じていたような楽園ではないと知っているけど、だからといって自分まで他者に厳しくしていいわけじゃない。
歳をとっても、他人より辛い事があったとしても、それが人を傷つける理由にはならない。
そんなふうに、思う。
できるだけ、笑っていてほしい。
目に映る人には、笑っていてほしい。
そんなことを考えて、なるべく笑っていたいと思う。
私は世界にとって無力だ。
だからといって、全てにおいて無意味な存在などはない。
もしかしたら、私の行動で少しでも、誰かの気持ちが和らぐかもしれない。
それが、悪い運命を僅かに変える蝶の羽ばたきになるかもしれない。
そう、願っている。
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