承章 《再び旅へ》




僕らはローマ神聖国を出て、旧フランク王国の旧首都ルテティウムに一泊し、今はフランク民主共和国首都マッシリアに到着した。


フランク民主共和国は人口100万で、首都マッシリアは人口8万を誇るユーロピアでは中規模国家の一つである。10年前の大戦の影響で王政が崩壊し民主制に移行した唯一の国である。隣のヒスパニア人民連邦共和国と同時期に革命を起こしたが、味方した貴族、僧侶、王族は殺さず、後に皆政治家となった。政治形態は首相と大統領が並立し、議会は右院、左院、正院の三院制を採用し、選挙による国政の停止を防いでる。大統領は先の革命で国民革命軍を率いて、列強と戦い各国から白老と恐れられたバーゼル元帥が務めており、首相はフランク王家の準皇太子であり革命政権の首魁であるエーヴィヒルト第二王子が現在務めている。

議会は多党制の正院、二大政党制の右院、引退した貴族、王族、僧侶、革命の功労者が集う左院に分けられ、前から順に優越権がある。正院の定員は300で、極左の赤、中道左派の緑、中道右派の青、中道路線の白、極右の黒の5つの政党があり獲得議席数は赤25、緑75、白100、青75、黒25で、中道三派が連立を組んでいて、この三派から首相が生まれる。ちなみにバーゼルは青でエーヴィヒルトは緑であり、この二人で大統領と首相を交互に行う双頭体制を敷いている。右院は定員101でエーヴィヒルトが率いる民党急進党とバーゼル率いる吏党保守党に分かれており、2対1で急進党が圧勝している。大統領は首相と違い間接選挙ではなく直接選挙である。それぞれの任期は4年で大統領、正院、右院は同時に選挙が行われる。選挙中は左院で選出された副大統領と左院が政務を代行する。



メラが補足する

「ここの国は革命の影響で国民皆兵制度を敷いているから軍は正規兵5万と、戦時に徴兵される義勇軍に分けられる。同じ国民皆兵のヤゲロー4万とは大違いだな、ハッ。どちらも精強だがこの国は市民の力が圧倒的に強いからフツー攻めねェなぁ」


ネレイアデスも言う

「幸いヤゲローと国境を接してないからマシだけど、いざぶつかると緒戦は負けるわね。三大将に匹敵する人が一人ぐらいだもの」


「ネレイアデス、それって白老のこと?」


ネレイアデスは笑う

「ふふん、残念ウィン君、白老は典型的な凡将中の凡将、彼はいつも定石しか打たない。まぁ弱い相手なら絶対に負けないけど、強い相手なら絶対に負けるわね。彼は攻城と防城戦は立派だけど野戦はひどいわよ。彼じゃなく、鬼熊のシュステルベルク将軍よ!元スカンジナビア連合王国の将軍で帝国で一度しか勝つことが出来なかった連邦に、全力ではないとはいえ、連邦に土をつけた男だよ」


「詳しいね…」


何故かメラが頭を叩く

「あったりめーだろ、ネレイアデスは東ローマの軍人、帝国に支配される前はユーロピアの列強の一つだぜぇ、何度もぶつかってるよ」


僕は頭をさすりながら話題を変える

「それにしても、この国は住みやすいね。他の国と違って」


「ああ、この国は高い税金さえ払えば高度な自由がもらえるからな、各都市の首長はもちろん、国のトップでさえ自分で選べる。その代り払えないと国外追放、正確にはヒスパニアに追放される。だから貧富の格差がほぼない」


嫌な事を聞いた

「なんか綺麗すぎて、いやになった」


メラは汚く笑いながら

「じゃあ次は汚ねぇ~国、ヒスパニアにいくっか。」



ネレイアデスが反論する

「あんな国後回しにしましょ、自由都市同盟に行き、アルビオンに行って、その後ヒスパニアに行きましょ」



「ハハァ!レア、お前国に帰る気がなくなったか、この調子だといつ帝国に着くんだよ」


ネレイアデスは笑って返す

「いいじゃない、私がいなくてもあの国は大丈夫よ、それよりも田舎を旅行するって機会なかなかないよね~楽しむわ」



その後、人口52万で、首都は存在しないが、最大の都市で外交拠点である人口1万のアムステルダムを観光し、豪華客船の特等席でロンディニウムに到着した。


アルビオン、今は南北に分かれているが人口60万人、南部王国の王都人口2万のロンディニウムに到着した


その中の高級レストランの中では

「マッズイ糞メシだな、糞に対して失礼を覚えるほど糞まずい飯だな。これ作った奴はまず糞に謝り、糞を研究して、糞を食ってから作り直してこい!」


糞しか聞こえない


「メラ…下品だよ」


ネレイアデスも嫌そうな顔を

「ウィン君の言う通りよ、さすがに汚物よりはマシだと思うけど…不味いわね」



メラが吠える

「四方が海に囲まれて、海軍がクッソ強いからフツー海産物はうまいはずだろ!なんだよ!このウナギのゼリーは、ウナギは焼くものだぞ!大八洲は焼いてたぞ

!」



ネレイアデスも次第に我慢が出来なくなる

「確かに…この羊の内臓を胃と膀胱につめて蒸した料理…ひどいわ…全体的に焼き過ぎ煮過ぎ茹で過ぎ薄すぎ、味がない歯ごたえがない油っこ過ぎ…」



僕も…

「メラ、ネレイアデス、この魚が埋まったパイ…シュールだね、みんな顔を出してる…味のほかにも美的センスも問題が」



メラは怒り心頭だ

「ああ、この国の野郎は禿ばっかだぞ、ほら見ろ周りはみんな禿だ」


周りの紳士は皆恨めしそうにメラを見る


確かにみんな薄いな…



ネレイアデスが咳払いをする

「それよりメラ、北部と南部どっちが勝つと思う?」



メラはじっくり考える

「今南が2万で、徴兵しまくれば8万、で北は1.5万で限界動員数は7万…たぶん南だ。騎士女王エリザベータと円卓の12騎士、魔導士メルランがいるしなぁ。スコッチラント公爵には申し訳ねぇが人材がなさすぎる。今拮抗してるのは、北大西洋協商に参加して支援を受けてるにほかならねぇ」


ネレイアデスはすぐに興味を無くした

「ふーん、どうする?一泊する」



メラが露骨に嫌な顔をする


「阿保かテメェ!こんなまっずい飯の国でもう一回飯が食えるか!逃げるぞ!」



僕は思わず呟いた

「あっ逃げるんだ…」


メラに蹴られた


僕らは経済制裁を受けている社会主義国家ヒスパニア人民連邦共和国をめざし豪華客船に乗る、もちろん特等席だ


ちなみに料理は食べてない



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