起章 《メラ…》




魔力を解放したメラの体に金色の光が包み込む

そして両手を挙げ、十本の指をそれぞれメチャクチャに、いや、何かを空中に書く…1つの指で何かを描く、十本の指で別のことを描く。それだけじゃない、足で今まで見たことのない、魔法陣を描くそれは、複雑を越えるほどグチャグチャだがとても美しいものである。まだである!何かを唱える、それは今まで聞いたこともない言語だ、複数の音階を分けて唱える…


それらを見たアリアは


「これは…古アラム語の詠唱、しかもひとつではない、いくつもの詠唱を掛け合わせてる…手はそれぞれ、神聖文字と神の数式…足の陣は…機械仕掛けの神の回路…」


シュルヴィアが言う


「それは《アカシック・レコード》の記憶ですか、?」


「うん、一応記憶があるから私も理論上は使えるけど、無理…あんなふざけた演算能力、持ってないよ。どれか一つやっても私でさえ脳が焼ける」


シュルヴィアが驚きを隠せない

「お嬢様が…ではあの女は、いったい…」


アリアーデは一時休戦をしている

「神族の王ですら不可能だよ…さっきから攻撃しても、あの光が邪魔してる。この世界に逆らう力ってなんだろうね…」


この世界における詠唱、魔法陣、文字とはどれも、魔力を魔法に変える行程で発生する演算の補助である。


理論上はどれも使わず、念じるだけで魔法を使えることができる。だがそれは可能か、否、現代人は不可能である。試しにドラゴンを描いてみよう、素人が描いたらドラゴンではなく不細工なミミズができる。魔法も同じく想像と現実は大きく乖離しているのだ。


他にも、魔力の過剰放出、暴走等問題だらけである。それの解決方法として、これらが生まれた。これにより、少ない魔力で、正確に、しかも早く簡単に魔法が使えるのである。


だが、原始魔法を使っていた古代人はそんなショボい使い方をしなかった!彼らは神の奇跡を再現しようとしたのだ、今までできなかった事をできるようにするために生まれたのだ。


「原始魔法…イメージが重要なの…だがあれをイメージするのは人間では不可能…いくら補助がついたとしても…だからあり得ない」



そしてメラの詠唱が、指が、脚が、止まる…

そして今の言葉で呟く


「この意により消え失せろ!《アバタ・ケダブラ》」


その瞬間世界が消えた


虚数界が消え現実に戻ったのだ

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