それは科学的現象にあらず

「さ、解いてごらん」

「いやいや……」

 俺は暗号となっている箇所をもう一度見る。

『◯.9 □.8 ◯.5、

  ☆/2.7 △.0 ◯.1 □/2.0

  かくはだんじはれつ』

「…………」

 記号の後に数字、そして最後に謎のひらがな。

 最後にあるのは大体がヒント、だとしたら……

「……はぁ?」

 わけがわからない、まずどこで切るのかもわからない

「ヒントにヒントをあげよう」

 しばらく固まっているとひとねが紙を渡してきた。おとなしかったのはこれを書いていたからか……俺は紙を見る。

『かくはだん、じはれつ』

「は、のところは接続だよ」

 つまり◯◯は◯◯ということなのだろう。

 後ろの「じはれつ」の「じ」はおそらく数字の「字」だろう。

 ならば前の「かくはだん」の「かく」も同じ原理のはずだ。

「書かれているのは……記号?」

 ◯、△、□、☆、これらに共通点は……

「◯と☆は特別なものと考えたほうがわかりやすいかもしれない」

 ひとねの助言が入る。

「△と□、口に出して共通点を探してみるんだ」

「三角と四角……何角形か?」

 疑問符を浮かべながら呟くとひとねは頷いた。

「そう、ちなみに◯は一角形、☆は十角形だ」

 ならばヒントはこうなる

『角はだん、字はれつ』

「……なんとなくヒントっぽい漢字はわかる」

 呟いて俺は書き足す

『角は段、字は列』

「そうだね、それがヒントだ」

「ヒントに推理が必要ってなんだよ……」

「難解ながらに解ける、それが人の記憶に残る、人に認識されやすいからね」

 とりあえずヒントはわかった『角は段、字は列』だ。

「暗号の記号を数字にするとこうなる」

 ひとねは新しい紙を渡してきた。なんだかサポートが増えてきたな……さてはこいつ、飽きてきたな。

 まあいい、俺は紙を見る。

『1.9 4.8 1.5、

  10/2.7 3.0 1.1 4/2.0』

「この余計な斜線は……除算だな」

 だとすればこうなる

『1.9 4.8 1.5、

  5.7 3.0 1.1 2.0』

「あおはかんふぁんだ」

「…………」

 飽きすぎだろ、羊羹食ってんじゃねぇよ。

 てか簡単って……

「こういう暗号では定番のものだよ、日本ではね」

「日本では……五十音?」

「そういうこと……ふう」

 茶飲んでんじゃねぇよ。

「じゃあ五十音で……最初が段で後が列だな」

 段は一始まりで、列はゼロ始まりだから……

「で、解読したのがこれだ」

 ひとねはパソコンに答えを打ち込む。なんだこいつ

「まったく、真正面にもほどがあるよ」

 パソコンに表示された怪奇現象の主張はこうだった。

『我は妖怪』

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