不死鳥、寝る

 車両は全部で六つ。どの車両の人も寝ていた。

 車掌と運転手の確認をしようとしたが、何故か窓が黒くなっていて見えなかった。

 全て確認してひとねの元に戻る。

 ここで事件が起きた。

「……おい」

 ひとねが寝ていたのだ。まじか。

 ついにひとねまでもが寝てしまった。でも対処法は分かっている。皆を起こせばいいのだ。

 起こすというと、まず思いつくのは音だ。

 俺は先頭車両に行って大声で叫んだ。しかし起きたのは先頭車両と二両目の一部の人だけ。

 ここで持ち物を確認する。

 財布、のど飴、スマートフォン、切符、手帳、自転車と家の鍵、ポケットティッシュだ。

「うーん」

 小さい時限音爆弾でもあれば良かったがそんなものは無い。

 六両全てに響き渡る音を出す手段……非常停止は音鳴ったかな?

 試しに先頭車両の非常停止ボタンを押してみるが反応は無かった。

 電車にある設備は使えないと考えた方が良さそうだ。

「……あれ」

 全てに響き渡る音を出しても先頭車両じゃダメだ、均等になる中央じゃないと。

 三両目には野球部であろう少年が多くいた。揃って持っているのは野球のバット。

「……よし」

 バットを一本拝借して構える。緊急事態だからお許しください。

 俺は窓に向かってバットを振る。うまい具合に窓に当たるが……

「割れねえ」

 ビクともしなかった。恐らく電車自体が怪奇現象なのだ。

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