集団認識

 ひとねは窓の外を見て話をはじめる

「とりあえず駅に降りてはならない」

「降りて良いのは自分の目的の駅、降りる前にスマートフォンと駅の時計の時間を確認、時間にズレがあったなら降りてはいけない」

「……わかった」

「さっきも言ったが飲み食いは禁止だ、一応口笛も禁止、何を呼び込むか分からない」

  ひとねはここで一旦区切る。

「わかったかい?」

「ああ、全て覚えた」

 ひとねは頷いて「次は対処法だ」とまた話はじめる。

「このまま乗っていれば怪奇現象は終わる筈なんだけど……」

「腹減ったんだな」

 ひとねは顔を少し赤くして頷く。

「皆が寝ている、このパターンなら集団の認識によって怪奇現象は終わるだろう」

「集団の認識?」

「つまりは皆を起こせばいいんだ」

 集団でこの怪奇現象を起こしている電車を見る、か

「何だその怪奇現象、何の意味があるんだよ」

「さあね、認識される事じゃないかな。 認識されなければ、語られなければ怪奇現象は怪奇現象とならないから」

「…………」

 良くわからないな……

 話は終わりとばかりにひとねは手を叩いた。

「すぐ対処しよう。方法は何でも良い、この電車に乗っている人をほぼ同時に起こせばいい」

 ……同時に?

「同時じゃないとダメだなのか?」

「試しにそこの主婦を起こしてごらん、ついでに落としたスマートフォンを渡してあげるといい」

 俺は言われた通りスマートフォンを拾って主婦を起こす

「落としましたよ」

「あらあら、ありがとうね」

 普通に起きたぞ

 ひとねの元に戻って横に座る

「この感じで起こしていっちゃダメなのか?」

「……さっきの人をみてごらん」

 みるとさっきの主婦はまた寝ていた……一度起こしてもすぐ寝るというわけか。

 ここで電車の扉が閉まり、発車した。

 ひとねは窓の外をみながら

「私はこの揺れの中安定して歩けない、君が他の車両に行ってきてくれ」

「ああ、分かった」

 俺はひとねを残して後ろの車両に向かった。

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