第三十八話:変わらぬものと変わりゆくもの
河合理恵。
その名を持つ女性は、壬生翔一郎にとって決して忘れることのできない存在であった。
忘れることを許されないものとして、その心中深くに刻み込まれている存在であった。
彼がそのたおやかな姿を目にするのは、もう十数年ぶりのことになる。
十年を越える月日。
言葉にすれば短いが、それは、ある者が大切な思い出を忘れ去ったとしても他者がそれを責めることなどできない、そんな膨大な時の刻みでもあった。
だが翔一郎は、彼女と最後に会った夜、この女性が初めて見せた激情と叩き付けてきた呵責の念とを、いまなおはっきりとおぼえていた。
洋装の喪服に身を包んだ若き日の理恵。
その両手が、渾身の力でおのれの胸倉を掴みあげてくる。
殺意すら孕んだ狂気の眼差しが、魂の奥底をごそりと抉った。
滂沱の涙がその眼からあふれ、なだらかな頬を伝って次々と滴り落ちていく。
彼女は叫んだ。
まるで気が触れたかのごとき勢いで、何度も何度も彼女は叫んだ。
「ひと殺し! 崇を返して!」
翔一郎は、そんな彼女を前にしてもなお、ただひたすらにぐっと奥歯を噛み締めているしかなかった。
そうしなくては、きっと彼自身が落涙してしまうであろうからだった。
それは、理恵の幼なじみであり、同時に翔一郎にとってかけがえのない友人であった
崇は、自身が引き起こした交通事故により、愛車とともにこの世を去った。
それは、公道における走り屋同士のチェイス、すなわちバトルの場において発生した痛ましい事故であった。
そして、目の前で起きた惨劇の一部始終を、「
だが、それもやむを得ないことだった。
激しく制御を失った他者のクルマをおのれの手でどうにかできるなどという者は、もはやひとの身を越えた神仏以外にありえないのであるから。
死因は頭蓋骨骨折による脳挫傷。
ほぼ即死と言える状態だった。
クラッシュした彼の愛車へと駆け寄り、ひしゃげたドアを無理矢理引き開けた翔一郎は、一瞬にしてその結末を認識した。
しかし、心がそれを受け入れなかった。
理性のたががあっというまに弾け飛び、吹き出した感情が彼の身体を突き動かした。
すでにこと切れている友人の、次第に冷たくなっていく肉体を必死になって揺さ振りながら、翔一郎は後悔のあまり泣き叫んだ。
なぜなら、彼を死に追いやった八神街道でのバトル──それを挑んだ人物こそ、ほかならぬ翔一郎自身であったからだった。
「大学を卒業して就職したら、俺は理恵と結婚する」
深夜のパーキングエリアで大好物の缶コーヒーを飲みながら、崇は傍らの翔一郎に向かっていつもそんなことを言っていた。
明らかな惚気であった。
そして翔一郎は、親友から放たれるそんな幸福の余韻を、いつも複雑な心境で受け止めていた。
崇の語る
ほんの少し前までであったが、彼女は、翔一郎にとってもまた、最愛のひとのひとりであった。
何度も熱い口吻を交わし、想いを確かめるために数限りなく肌を重ねた。
同じ
ずっと一緒にいたいと思った。
生涯をともにしたいと本気になって考えた。
だが彼女はいま、自分ではなく敬愛する親友のものとなっている。
不器用なすれ違いが、いつの間にかふたりの縁に埋まらない溝を築いていたのだった。
自らの愛情が崇に劣っていたなどと、翔一郎は微塵も思ってなかった。
もちろん、理恵によって両天秤にかけられたのだとも考えてはいない。
だが
負けたな。
そう思う痛烈な悔しさがある反面、こいつが相手なら仕方がないか、などと妙に納得する自分自身も彼の中には存在していた。
崇も理恵も、いまの自分にとっては欠かすことのできない唯一無二の存在だ。
もし、彼女を巡って親友と争えば、良くて片方、悪ければ両方との関係を失うだけの覚悟が要った。
だったらどうすればいい?
簡単だ。
俺ひとりが黙って身を引けばすべてが丸く収まる。
そうさ。
いまを満足させるためなら、むしろ喜んでそうすべきだ。
それこそが誰の目から見ても明らかな、まさに
翔一郎は、そんな無理矢理な理屈を自分自身に言い聞かせた。
心の奥底でうごめく暗い淀みを、詭弁でもって押さえ付けた。
だが、その決断を確固たる現実にするためには、何かおのれに対するケジメが必要なのでは、と翔一郎には感じられた。
だからこそ、彼はそれまで一度も牙をむいたことのない親友に対し、ひとりの走り屋として真っ向からの挑戦状を叩き付けたのだった。
勝ち負けなどどうでもよかった。
ただ、自分が惚れたオンナを委ねるオトコと一度でいいから駆け引きなしの真剣勝負をしてみたかった。
むろん、それがあまりに自己中心的な理由であることは百も承知であった。
そして、ある意味でそれが極めて理不尽な動機を発端としていることも、自分自身でわかり過ぎるほどにわかっていた。
それゆえに翔一郎は、崇を事故に導いたのは自分なのだと一方的に思い込んだ。
莫迦な真似をした俺に罰が当たったんだ。
彼は心の底から自分を責めた。
本来、事故で死なねばならなかったのは俺のほうだ!
崇は、俺の親友は、この俺が受けるべき罰の巻き添えを食らったんだ!
あいつがたったひとつしかない自分の人生を失ったのは、この俺の身代わりとなったからにほかならないんだ。
あいつには、あいつには、なんの落ち度もなかったのに。
全部、俺のせいだ。
そう……全部、俺のせいだ!
その時の翔一郎を襲ったもの。
それは理屈ではなく感情の問題であった。
「俺には理恵が必要なんだ。だから、俺はあいつを守ってみせる。誰にも譲りはしない。翔一郎、それがたとえおまえであってもな」
無邪気に笑う崇の顔が、まぶたの奥で浮かんでは消える。
どすんと鳩尾に一撃を食らったような嘔吐感が、胸中全体に込みあげてきた。
改めて翔一郎は、眼前で泣き崩れる女性の姿に目を向けた。
心から信頼し、そして愛していたであろうパートナーを唐突に奪い去られた理恵の心情を思いやった翔一郎は、もうただのひと言も発することができなかった。
彼女が放つ恨みつらみも何もかも、たとえそれがどれほど痛烈であろうとも、彼はすべてを受け止める覚悟を決めてここにきた。
いわゆる自己満足の範疇であったとしても、それが自らの行える償いのひとつであるのなら、自分にはそれを実行する義務がある。
そう心から信じて、翔一郎はこの場へと足を運んだ。
だが、その決意ももろいものだった。
崇の親戚や知人、八神街道の仲間たちが見守るなか、両脇を抱えられるように斎場の奥へ消えていく理恵の背中を見送ったのち、いたたまれなくなった翔一郎は黙ってその場をあとにした。
そして気が付いた時、彼は近所の児童公園に屹立するポプラの大樹を前にしていた。
誰もいない深夜の公園。
次から次へと湧き上がる感情を抑えきれず、翔一郎は獣のように吠えた。
そんなことをしてもなんにもならないということを熟知しながら、自らの拳を眼前にある硬い大樹の幹へ向け、何度も何度も叩き付けた。
鈍い音がして拳に激痛が走った。
皮がむけ血が滲み、下手をすれば骨まで砕けたのではないかという痛みのなか、それでも翔一郎はその愚かしい行為をやめなかった。
やめようとはしなかった。
その対象となったポプラの木は、あれから十数年が経過するいまでもまだ、この公園のシンボルとして健在だ。
あいかわらず大きな掌に似た緑の葉をたくさん茂らせ、この場で遊ぶ子供たちを見守るがごとく、長い枝を周囲に伸ばしている。
そんな大きな存在を半ば呆けたように眺めながら、翔一郎と理恵は、左右に並んだブランコの上で、その身を揺れるにまかせていた。
いささか秋の臭いを携えた涼風が、ふたりの間を駆け抜けていく。
いったいどれぐらいの時が過ぎたのだろうか。
気まずい沈黙を打ち破ったのは、翔一郎の放ったひと言だった。
「元気そうだな」
そうぽつりと彼は言った。
「まだ……独りなのか?」
「そうみたいね」
まるで他人事のように理恵が応じる。
「でも、それはお互いさまだと思うけど」
「まったく、世のオトコどもは見る目がないな」
苦笑いする翔一郎が、あからさまな冗談を口にする。
「君ほどの優良物件に食い付かないなんて、草食系にもほどがあるってもんだ」
そして、小さく呟くように、こう言葉を付け加えた。
俺のせい、だな……と。
その台詞の裏にある意味を、この時、理恵は誤解することなく感じ取った。
それは、「彼女がいまだに独り身なのは、自分がその
ここでその真意を否定することは、あるいはいまの理恵にとって極めて簡単な行為だったのかもしれない。
しかし、彼女はあえてそうすることなく、彼の発言を素直に肯定してみせた。
「そう、あなたのせいよ」
どこか寂しそうな微笑みを浮かべて、翔一郎に理恵は告げた。
「だって、あの時からこれまでの間、当時のあなたたちほどの男性に、わたしまだ出会えていないんだもの」
少し驚いたような顔をして、翔一郎は理恵を見た。
彼女もまた、翔一郎のほうへと視線を向けてくれていた。
改めて苦笑した翔一郎が、やや自嘲気味な口調で理恵に尋ねた。
「それは、誉められた、と受け取っていいのかな?」
「莫迦なことを言わないで」
思わず相好を崩しながら、彼女は否定の言葉を放った。
からかうようなテンポで「絶賛しているのよ。わからなかった?」と台詞を続ける。
軽く翔一郎が吹き出した。
「変わらないな、理恵は」
背筋を改め彼は言った。
「で、今日はいったいどうしたんだ?」
「実はね、あるひととちょっとした約束をしたの」
彼女は答えた。こちらも応じて姿勢を正す。
「そのひととの取引で、むかし付き合っていたひとともう一度会いなさいってことになっちゃったわけ。そうなると、わたしがこれまで付き合ったことのある男のひとって、もうこの世にはあなただけしかいないから」
「すまなかった」
その発言を非難のそれだと受け止めた翔一郎は、咄嗟に謝罪の言葉を口にした。
それはあの通夜の晩、悲しみに暮れる理恵に告げようとして果たせなかった、そんな悔いの残るひと言であった。
はっきりと陰の認められる表情で、翔一郎はなおも続ける。
「あの時、俺が
「事故よ」
暗く肩を落とす翔一郎とは対称的に、理恵は明るくそう言った。
いきなりブランコの踏み台に足を乗せる。
見上げてくる翔一郎の視線を尻目に、立ち乗りの姿勢でゆっくりそれを漕ぎながら、彼女は淡々と言葉を紡いでいった。
「あれはあくまでも不幸な事故。あなたに責任なんてありはしない。そう、最初からありはしなかったのよ」
「理恵……」
「もし、あの一件であなたに責任を取ってもらうことがあったとしたら、それは、あなたがわたしたちの前からいなくなってしまったことかしらね。だって、あなたは自分自身のあと始末もせず、すべてを投げ出し逃げていってしまったのだもの。敵前逃亡よ、それって。
だから、残された仲間たちがいったいどんな思いであなたの足跡を見ていたのか、あなたは全然知らないのでしょう? あの『ミッドナイトウルブス』参号機、『八神の魔術師』とまで言われたオトコが、どうしてそれを責任逃れだと思わなかったのかしらね。
もっとも……あの時のあなたにそれを強いたのはわたしだったのかもしれないから、それを責める権利はわたしにはないか」
「俺を……責めないのか?」
話の筋を折るような唐突さで、翔一郎が理恵に尋ねた。
「俺は、さっき君が目の前に現れた時、どんな風に罵られても甘んじて受け止めよう、そう覚悟を決めてたんだが」
「そうね」
あっけらかんと彼女は応じた。
「あなたが結婚してて、出くわしたのが奥さん子供と一緒にいるところだったら、包丁でぐさっとやっていたかもね」
むろん、その後半部分は完全な冗談であったのだろう。
理恵の明るい表情も、それを見事に裏付けていた。
しかし翔一郎は、彼女にならそうされてもよかったと思っていた。
そうされることでおのれの贖罪が果たされるのなら、それもまた納得できる終わり方だと考えてすらいた。
「残念、だったな」
だがそんな心中をおくびに出すこともなく、翔一郎は軽口を返した。
「俺は、あいかわらず俺のままだ」
「本気でそう思ってるの?」
その発言を、真顔で理恵が否定した。
「自分がむかしのままだなんて」
「違うのか?」
翔一郎の確認に、彼女は大きく頷くことで返答した。
「本当はね、今日、あなたの顔を見ることができたら、それでおしまいにしようと思っていたの。それでも一応、相手との約束は果たせるわけだし。でも──」
「でも?」
「いざ、あなたの姿を目の当たりにしたら、そうも言っていられなくなって」
「懐かしい顔だからな。それも仕方がないさ」
「違うわ」
理恵は哀しそうに、そう、本当に哀しそうに小さく首を左右に振った。
そして少しの間唇を閉ざすと、改めて意を決したように口を開く。
彼女は言った。
「あなたが……あまりにも変わり果てていたから」
翔一郎の動きがぴたりと止まった。
刹那の沈黙のなか、ブランコの金具が小さく耳障りな音を立てる。
重々しい空気が、しばしふたりの間を支配した。
「変わり果てた……か」
大きく天を仰ぎながら、翔一郎はそれに応えた。
「理恵の言うとおりなのかもしれないな」
「ええ」
理恵が、そのあとの言葉を引き継ぐ。
「あなたが後ろばかり見て生きてきたことが、はっきりとわかったわ。わたし、自分の目を疑った。そして、改めて後悔した。あなたをそんな風にしてしまった原因は、このわたしに違いないんだって。
でもね、ミブロー。いまのあなたには、いまのあなたを見てくれているひとが必ずいると思うの。もうお互い、過去に縛られる生き方はやめにしましょう」
返答に窮する翔一郎を顧みず、彼女は「とぉっ」という掛け声とともにブランコの上から飛び降りた。
両手を大きく広げて着地。
くるりとその場で振り返る。
その表情が笑っていた。
まるで何かを吹っ切ったような、そんな晴れやかな笑顔だった。
「わたし──」
小さく息を吸ったのち、そんな理恵が宣言する。
「今日を境に、
そしてね、一緒にあなたのことも忘れることにする。そうしないと、わたしだけでなく、きっとあなたも前に進めないでしょうから」
「理恵……」
「本当は、もっと早くこうしていればよかったのよね」
心なし潤んだような瞳を見せて、彼女は翔一郎に歩み寄った。
「そうしていれば、わたしもあなたも、もっと違った
「君は、それでいいのか?」
顔を上げた翔一郎が尋ねる。
「俺のことはともかく、あいつのこと……崇のことを忘れても、それでも君は──」
「構わないわ」
その台詞に割り込む形で理恵は断言した。
「好きだったひとを忘れるのは凄くつらい。それは事実よ。でもね。いまのわたしには、好きなひとが苦しんでいるのを見るほうが何倍もつらいの」
ほろり、と何か小さい光の粒が彼女のまなじりからこぼれ落ちた。
だが、理恵はそれを無視してとうとうと語り続ける。
それはまるで、これまで貯めていた想いを一気に吐き出すかのように。
そして、翔一郎はただ黙ってそれを聞いていた。
自身が犯した若さゆえの過ち。
それそのものを、何度も何度も繰り返し後悔し続けながら。
「ミブロー」
長かった言葉の終わりに、理恵は翔一郎に向かって呼びかけた。
いつの間にかその口調が落ち着いたものへと変わっていた。
彼女は言った。
「最後にひとつ約束して欲しいことがあるの。もし、ほんの少しでいい、いまでもわたしのことを想っていてくれてるなら、この場で、わたしに誓って欲しいことが」
翔一郎は頷いた。
言葉で是という意思表示はしない。
だが理恵は、それこそが彼一流の真剣極まる受託表現であることを知っていた。
変わってない。
彼女の胸中に、甘酸っぱい懐かしさが怒濤のごとく込みあげてきた。
彼の本質はまるで変わってない。
むかしの、あの頃の翔一郎のままだ。
もしかしたら、という希望が、一瞬、彼女の心根を揺り動かした。
いま彼自身を束縛している強靱な戒めをこの手で断ち切ってあげられたなら、あの時の続きをふたたび彼とともに演じられるかもしれない、と。
だが彼女は、そんな自分にだけ都合のいい願望を即座にどこかへ投げ捨てた。
もう、すべてが遅いのだ。
翔一郎には、彼を本当に必要とする存在が側にいる。
まさかあの頃、翔一郎の後ろをちょこちょこと付いて回っていた幼子が彼にとっての道標になるなどとは思ってすらみなかった。
十数年。
小さな女の子が大人の階段を登り始めるまでの長くて短い月日の経過。
その時間の流れは、自分と彼との間にできた些細な溝を、いまや巨大な烈溝へと変えてしまっていたのであった。
ひとは、決して神にはなれない。
ゆえに、ひとたび過ぎ去った時間を巻き戻すことなど不可能だ。
ひとの身にできることは、文字どおり、いまこの瞬間を精一杯生きることしかない。
だからこそ、自分はいまの自分にできることを行わなくてはならなかった。
それは、彼が背負った理不尽な重荷を、いくらかでも肩代わりしてあげることだ。
「壬生翔一郎」というひとりの男性を、その未来に向かって解放してあげることだ。
理恵はそう考えて口を開いた。
あるいは、そう自分を信じ込ませて彼に願った。
「もし、あなたの前にいまのあなたを導いてくれるひとが現れたとしたら、その誰かを受け入れるにしろ拒むにしろどちらの場合でも構わないから、その『想い』だけは真剣に受け止めてあげて欲しいの」
「よろしくて?」と念を押す理恵に対し、翔一郎ははっきりひと言、「わかった」とだけ言葉を返した。
それをしかと耳にした彼女は満足げに微笑み、大きく天に向かって両手を伸ばす。
「あ~っ、すっきりした」
ぐっと全身で伸びを打ち、晴れ晴れとした表情で彼女は宣した。
「これでわたしも、少しは肩の荷がおりたかな。ミブローはどう? ちょっとだけでも、気が楽になったんじゃなくって?」
「どうかな」
苦笑いとともに翔一郎が返事する。
「正直言って実感が湧かない。君が気を遣ってくれてることだけは、かろうじて理解できてるんだけどな。いまはそれが精一杯って感じだ」
「それでいいのよ」
微笑みながら彼女は言った。
「仮にいまわからないことがあっても、きっと近いうちにわかる時がくるわ。わたしはそう信じてる。あなたのことを信じてる」
そしてひと呼吸置いたのち、すっと背筋を伸ばした理恵は、かつて本気で愛したオトコに別れの言葉を口にした。
「さようなら、翔一郎。
わたし、これであなたのことを忘れるけど、でも、それでも、わたしはあなたを、壬生翔一郎を絶対に忘れない。忘れないわ。
だから、もし次に会う機会があったならその時こそ、お互いに新しい道を歩き出した者同士として、むかし話をしましょうね」
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