第51話 このクエスト、受けてみちゃう?
ええっと、この世界はゲームの世界じゃなくて現実なんだよね?
なのに、クエストのウィンドウが出てくるってどういうこと!?
今までのことが全部、エリュシアオンラインでの賢者への転職クエストの続きなんてこと……あるわけ、ないよね。
うーん。考えても分からない。
だったら、とりあえずこのクエストを受けてみちゃえ!
えいっ!
▽クエストが発生しました。
▽このクエストを受注しますか?
▼ ▽
はい いいえ
おおっ。
「はい」っていう文字の色が青くなった。
▽クエストを受けました。
▽金の指輪をグラハムの村に住むカールに届けよう!
▽クエストクリア報酬 グラハム村の宿屋に泊まれる
クエスト失敗 グラハム村の宿屋が閉鎖する
うわぁ。なにこれ。
グラハム村のカールっていう人のところに届ければいいの?
でも、どうやって皆に説明しよう。いきなり「この指輪はグラハム村のカールさんの物だから届けましょう」なんて言っても、絶対に信じてもらえないよね。
クエストの表示された半透明のウィンドウを見て悩んでいると、後ろからアルにーさまが心配そうな声をかけてきた。
「ユーリ、どうかしたのかい?」
倒されたオオネズミは変異種ということで、現在、魔石がないかどうかの確認中です。つまり……やっつけた街道で絶賛解体中なので、優しいアルにーさまは馬を移動させてその光景が私には見えないようにしてくれていた。
だけど私が何もない宙を見てじっとしていたから、気になっちゃったのかも。
「どうしてオオネズミが金の指輪を持っていたのか不思議で……」
「指輪の持ち主が襲われたのかもしれないね。指だけ噛み千切られたとか」
うええええ。
想像しただけで痛そう。
「この近くで人が住んでるところって、イゼル砦と、これから行く――」
「グラハム村だね」
魔の氾濫の時に行ったダスク村はイゼル砦とジュレイ砦の中間にあったから、全然方角が違う。それにワーフルウフルに滅ぼされちゃったから、今はもう誰もいない。
「じゃあグラハム村に、その金の指輪の持ち主がいるかもしれないですよね」
でもって、クエストクリア報酬が『宿屋に泊まれる』ことなら、宿屋関係の人なのかも。
クエストでその人に渡せってなってるんだから、もう死んじゃいましたなんてことはないだろうし。
「む……。魔物から出た物は倒した者に所有権があるのだから、わざわざ渡してやることもあるまい。金の指輪であれば高値で売れよう。そしてその売ったお金で聖水を買うのだ! 私のマクシミリアン二世がそろそろお腹を減らす頃合いだからな」
そういえばカリンさんのスライムって聖水がご飯なんだっけ。
それにしても拾った指輪を売るなんてダメだよ。クエストじゃなくても、絶対ダメ!
「あぁ? そんなケチくせぇこと言うなよ、カリン。それにこの指輪はどう見たって大事なもんだろ? どうせこれからグラハム村に行くんだから、ついでに届けてやりゃあいいじゃねぇか。神はいつもそなたの行いを見守っているって、聖典でも言ってるしな」
解体作業を終えてクリーンの魔法で汚れを落としたフランクさんが、牙とか爪らしきものを持ってやってきた。
あっ。あれってもしかして、ドロップアイテム!?
この世界はゲームじゃないはずなのに、なんだかゲームみたいな展開になってる。
なんでぇぇぇ?
「……なんと! フランクが神官のようなことを言っておるではないか」
「神官のようなって何だよ。どこからどう見ても、立派な神官だろうが」
「ノブルヘルムに雪が降るぞ!」
「妖精が住んでんのは常夏の国だろ。雪なんざ降らねえよ」
「それくらい、あり得ぬことだと言っておるのだ」
ほー。エリュシアのことわざみたいなものかな。明日は雹(ひょう)がふるぞ、みたいな。
「おいおい、俺だって神官の端くれだからな。忘れんなよ?」
ぼやくフランクさんに、アルにーさまが「日頃の行いだね」と肩をすくめる。
うんうん。私もそう思います。
フランクさんって本当は優しいのに、普段はガラの悪い不良みたいですもんね。神官服を着てても、神官に見えないです。
「とりあえずグラハム村に行って、この指輪のことを聞いてみようか」
賛成!
早くカールさんに指輪を渡して、クエストを完了するぞー。
おー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます