第51話

息子夫婦がうまく行っていないことを義母は知っていた。新婚時代は、ジャックの言動に傷ついたり、妻として不安になるたび、義母のところへ相談に行っていた。ジャックは親族の中で、私と義母と義姉に当たったり、ケンカ腰な物言いをするのは誰もが知っていて、義母も時々ジャックの癇癪や、ストレート過ぎる意見や非難に辟易していたからだ。

そんな義母も、私の愚痴を聞く時は第三者になりきり、

「そんな事いちいち気にしないで、ハイ、ハイと聞き流しとけばいいのよ。カーッとなってる時は何を言っても効き目なし。あの子は言葉はキツいけど、心根は優しい子よ。」

と諭すのが決まったパターンだった。


義母のこの慰めを励みに、それを信じて、ジャックに期待を持ち続けた年月はどれくらい続いただろう。9年余りの結婚生活の前半くらいだったか。

そのうち、〝義母が言うようにジャックが本当に心の優しい人間なら、こんな事が言えるだろうか、できるだろうか?〟と疑念が生じた。一度起きたそれは、以来、私の体内から根こそぎ消滅することはなかった。


日常多くの場合、私に同情的な義母ではあったが、いざとなれば当然愛息子の肩を持つ。

ジャックか義母の口からだったか忘れたが、「離婚」と出た。そして、

「離婚になれば、台湾は父親の方が強いからね。」

と、ニュアンスで蘭と桂はウチのものだ、と示唆しているのは明らかだった。

そこで私は我に返った。離婚したくないのではない、娘たちを奪われてなるか、と………

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