第52話

娘たちは幼く、大人たちがのっぴきならない状況下にあることには無頓着だった。実際、その方がよかったのだろう。

義母はさきほどジャックが横たわっていたソファーにテレビと相対して腰掛けていた。私は義母の前で跪いて、泣きながら懇願した。

「お義母さん、つい激昂してしまいました。許してください。お義母さんも女性だからわかりますよね、私から娘たちを奪わないでください、お願いします! お願いします!」

気が狂ってしまいそうだった。数分前のジャックに対する蓄積した怒りが原因ではなく、如何なる理由があったとしても、やってはいけない馬鹿をやってしまった、これで娘たちを手放すことになったらどうすればいいのだろう。あと数日、あと数日だけ我慢していればよかったのに、そしたら日本へ逃れられたのに、私は何をやってるんだ……… 終わりかもしれない。終わるのかもしれない。


幸い、何とか義母の立腹はおさまり、家族4人でジャックの実家を出る際には、彼女は玄関まで来て見送ってくれた。

私はうな垂れて、いつも通り家族4人でバイクで帰宅した後、私は靴を脱いで部屋に一歩踏み入れた途端、倒れた。蘭と桂が、

「ママ〜,ママ〜! 大丈夫? ……… パパ〜、来て! ママが動けなくなっちゃった!」

可愛らしい声と手で私を助けようとする。2人して私を起こそうと試みる。


私はまだ起き上がる力があった。が、ジャックがどうするか、見たくなったので、かなりの間、その格好を維持した。

しかし、とうとう彼は、私に近寄りもせず、声もかけなかった。

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