第43話
この夏、きれいに修復された二胡を再び江老師のもとに預けることになった。
日本にはまだ他の二胡があるため、一本は台湾に置いておいた方が便利なのだが、役目を果たした感のある江老師に、もう1年……と頼むのは気が引けたのは事実。しかし、例のファストフード店で右の親指から肩まで傷めて、ほとんど機能しない、また極力安静にしなければならない患部は四六時中ズキズキしていた。ただでさえ荷物は多く、重い。関空から自宅までバスや電車を乗り継いで3時間はゆうにかかる道のり。やはり自信がなくなってきてしまった。もちろん機内に持ち込んで、自分の身体の何倍も神経を使って、慎重に守らないといけないし。二胡は生きているのだ。
そこで、正直に右腕の痛みがひどく、恐縮しながら、持ち帰るのが困難である、と告げた。有り難いことに、彼は笑顔で快諾してくれたのだった。
9泊10日はあっという間だった。前年のそれは、ホテルの部屋で時間を持て余したり、孤独感に苛まれた記憶がある。ああ、あの時は、私の仕事の関係で、蘭が先に台湾に発ち、8月下旬に10日間オープンのチケットで台湾桃園国際空港に。30日、蘭と動機で帰国したのだった。2日後には2学期が始まった。
姉妹一緒にジャックのところにいて、2人揃えば日程も詰まりやすく、私が会いたい時に会えるわけにはなかなかいかなかった。
それと、思うに、2人対1人より、一対一の方が濃密な会話が可能で、時間もより貴重に感じるものだ。
そういう関係で、同じ10日間でも、後者の方が充実していたのではにかと思う。
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