第39話

江老師は大学院在院中から音楽教室で二胡講師をしていたわけだが、第二専攻がピアノなので、生徒の伴奏もしばしば担当していた。

また、プロの古典楽器楽団2楽団に所属している。プロの、とは、合同練習に参加したり、演奏会に出演すれば報酬が支払われる楽団。もちろんアマチュアのそれもあり、私も二胡の腕が中級に属するようになると、楽団入りを勧められたことがある。一対一のレッスンとはまた違った醍醐味が味わえ、学べるものがある、という。ちょうど子育てに奮闘中で時間的余裕がなく、見送ってしまったけど。

また、江老師は、小学校の二胡の授業にも週2日ほど出向いていた。演奏会や発表会に検定試験が定期的に開催されるようで、常に準備や指導に忙しそうだった。


そう、老師はとにかく多忙だった。自らが所属する楽団は、台湾国内のみならず海外公演も行っていたし。カナダやオランダに出かけていたのを覚えている。その活躍ぶりは誇らしく、羨ましかった。

今はだいぶ様変わりしたが、中国と言えば自転車を思い浮かべる。そこが台湾だとバイクになる。台湾はバイク王国である。江老師も、小回りが利くバイクで、慢性的な駐車場不足状態にある首都台北をスイスイ走り抜けていた。両足の間に二胡を挟んで……


今回の渡台も、江老師はとても喜んでくれて、何とか最低2回はレッスンの時間をもうけて、またメールする、と返信が来て嬉しかった。

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