第9話
養育費ではしくじったが、面接交渉権においては、今のところ順調で不満がない。
面接交渉権とは、離婚により子の親権や監護権を持たなかった親、または別居中のそれが、子どもと面会する権利を言う。
そういう権利があることは、台湾ですでに知っていた。カフェ好きの私が一時ほぼ毎日通った自宅マンション向かいのこじんまりしたカフェの雇われ店長を通してだった。
彼女は2歳年下の夫の酒癖の悪さや暴力が原因で離婚し、ひとり息子の親権を夫に取られ、愛息子恋しさに泣き暮らしていた。それを見た友人が、面接交渉権の存在を教え、実際家庭裁判所への申請等々を手助けしてくれたおかげで、「毎月第2第4週末(土日)、息子と面会できる」権利を勝ち取った。
私がオレンジ色に統一された店内にいる時、小1の元気な男の子がやって来た場面に何度か出くわした。その時はもちろんだが、面会日が近づくと彼女はウキウキ、実に嬉しそうにしていた。土曜の夜、息子は彼女宅に泊まっていた。
しかし、日曜日は午後5時に息子を前夫に引き渡さねばならない、とのことだった。シビアなんだなあ、と感じた。
あとで知ったが、面接交渉権は台湾の方が日本より早く確立したらしかった。
行きつけカフェで親しくなった女性から知識を得ていたわけで、ジャックがネットで調べて作成した離婚協議書に明確な文言がなかったため、
「もっと具体的にしといた方がいいんじゃないの?」
と言ってみたら、
「初めに決めておいても、そのまま実行されるケースは少ないらしいからこれでいいよ。」
と、また憮然と言われた。
ところが、その方が結果としてよかったと言える。うちの場合、子どもたちの両親は異国に分かれていて例外的だし、あの時下手に日時を決めていたら、限られた日数しか台湾に滞在出来ない現状では、会いたくても会えない切ない状況に陥るところだった。
台湾へ行ったら、前もってジャックに連絡し、双方とも都合が合えば、桂は毎日でも私が投宿しているビジネスホテルに泊まりに来られるのだ。
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