赤い平原

カマクラ君

第1話 赤い少年編 その1

完全な劣勢を強いられる人類は

データ化した際のギミックを武器として抵抗する


心に感応する特殊な能力を保有する宝石

“ソウルジュエル”

魔法のような力を秘めていて

敵対している相手の弱点となる“火属性”の宝石を体内に宿す戦士が

国家軍隊に所属して部隊を率いて

星全体を巻き込んだ戦争が行われている・・・


圧倒的な武力による一方的な殺戮により

八十億近くあった人口は五億弱にまで減少していた


無数にあった国も人口の減少と共に統合を繰り返して

今は、唯一の統一国家だけとなった

第一首都があったアメリカ大陸が侵攻され壊滅的な状態となって

人の住める状態ではなくなり

第二首都は日本の東京となり新宿地区に宮殿が構築される


呼ばれている地名は過去の時代の名称をそのまま使用している

(わかりやすいように、日本での呼び名を今回は参考にしています)

統一国家になる際

データ化に出資した大企業の一族が

皇帝として君臨する形で

対氷機軍事国家が新たに発足される


敵対している氷機と呼ばれる存在は

北極を中心とした地区にメインとなる基地を設け

そこから各地へ侵攻してくる


日本の位置的に最前線になりやすく

当初、首都を反対する声もあったが

逆に注目され集中して侵攻されると

対抗が比較的作戦的に容易ではと

あえての第二の場所となった

そのため、各地の部隊が日本へ招集されることに


第一から第二十二までの上位部隊が首都防衛隊として

共同戦線である


そんな中の第二十二部隊をクローズアップ

元々第一部隊所属だった

ライン=ルビーが独自で行動するように少数精鋭

たった六名の戦士で第一次氷機大戦を終結させた

壊滅的な撤退を強いたが

再び増援を含め戻ってきた


そして、第二次氷機大戦が勃発している


『本当に私が部隊長でいいのか??』


『他の部隊も異論はなかったからね~エルちゃんよりも見た目も映えるからいいと思うよ』


首都防衛を主な活動としている

第一から第五部隊に加えて

第二十二が新たに編入する形となった


ラインさんが特別扱いされるには

単純に最強という理由もありますが

過去の事件もあって

償いな意味合いでの処置とも言われている

そんな償いが実際になされることは

なくなってしまいました


自他共に認める

おそらく、世界で一番の美人であるラインさん

兼業で自社のアパレルブランドのモデルも行うほど


簡単に言いますと

今は亡き大勢の男性軍事関係者に襲われたのです

比較的気さくなラインさんだったから

軽いスキンシップも普通に行っていました

いつ亡くなるともわからない時代だから

本能だったのでしょう

ラインさんを含む軍関係者の女性が標的に


詳しい内容は言えませんが

かなりの混乱を招き

氷機戦線にも多大なる影響を及ぼし

ただでさえ劣勢な状態を悪化させる結果となりました


自業自得だったのでしょうか??


そんな加害者は

今はデータ自体消去されています

対氷機戦にて殉職してしまいました


人体などの管理するシステムの一部ごと襲撃を受けてしまったために

復元することができなくなってしまって


極端な男女比の逆転は

この襲撃で男:女が1:9と


『師匠・・・すみませんが、もうしばらくは二十二部隊の単独でいさせて下さい』


『・・・まあ、そうだろうと思って陛下には伝えておいたから』


『ありがとうございます、私の個人的なわがままを受け入れてくれて』


『いいのよ、エルちゃん最大の弟子だから・・・それに、レッド君もまだでしょ??』


二人の短い会話

世界の命運のかかる重要な決断だったりする


特殊な状態の今

敵である氷機相手に最も有効とされる火属性の戦士

しかも、世界最多の撃破数を誇る

そんな彼女の珍しくも純粋な、わがままだった


第二十二部隊は

隊長であるラインさんを含め隊員は六名しかいません

軍隊の部隊というよりも

特殊工作員のような感じで

任務を遂行している


それぞれの能力が優れているから

少数のみでも圧倒的な威力を持ち

無数の氷機相手でも十分すぎる戦いをする


『それでは、失礼します・・・師匠』


『うん、みんなによろしくね』


一部の存在のみ可能とされる空間転移

データ管理上、物体の移動は転送を基本とするが

生物の場合

完全な状態での転送が常に行われない場合もあるため

100%の成功率を出せる存在以外は許可されない


優秀な演算を可能とするラインさんは

そんな許可を受けている一人です


首都である東京から対氷機の前線基地のある

ユーラシア大陸旧ロシア


現在、二十二部隊が駐屯している

二十と二十一部隊が常駐する基地で

三部隊による合同戦線で氷機と交戦中だったりする


北の極を中心に展開する氷機の包囲網を広げないために

ヨーロッパ付近とカナダ付近にも同じように基地を設け

南下侵攻を阻止してきた


元々南北の極に世界の管理を行うための制御塔を建て

更に上空に二基の巨大な人工衛星を待機させて

複数でも単独でも稼働可能なシステムが存在する


北の塔が占拠され

沈黙状態となったが

事実上の破棄をして、他で補っている


『ライン隊長、おかえりなさい』


『ただいまラビリア、様子はどうだ??』


基地の管制室に戻ってきたラインさん

挨拶の相手は、同部隊の参謀であるラビリアさんだった


彼女はこのデータ化した世界のシステムの発案者であり

同時に管理システムの重要な存在でもある

本来なら前線で戦うような事をする立場ではないが

本人の希望でラインさんと共に戦う


科学者ではあるが

ソウルシステムを熟知する戦士でもあるため

十分な戦力でもある


実際、本当に前線で戦うことは少ないが

それでも的確な指示を出し

参謀として活躍している


『今のところ、目立った動きはありません』


『そうか・・・あ、首都防衛の件な・・・先延ばしにしてもらったぞ』


気を遣う感じでラビリアさんの肩に手を乗せて話すが

色々な意味で熟知しているラインさんの行動だったからか

当たり前な感じで返す


『そうでしょうね、それにエルードさんから連絡もありました』


『・・・私が首都に出向いた意味ないじゃないか!!』


淡々と作業するラビリアさん

無駄足だったのではと軽く落胆するラインさん

そこへ・・・


『失礼しますラビリアさん・・・あ、お母さん!?』


礼儀正しく入室する少年

視線をラインさんに向けるが

まずは、ラビリアさんに対して


『資料の提出を要請されています、承認して提出をお願いできますか??』


『亜種の氷機の資料でしたら、先ほど承認して提出しましたよ』


真面目な仕事の会話

最近、特に新種の氷機を目撃するとのことで

確認される限りの新たな情報を共有するために

データベースにアップしている


『レッド・・・少しいいか??』


『どうしたのですか、お母さん』


強引にラインさんは少年を抱き上げ

退室していった


『・・・また、ですか』


ため息のラビリアさん

これも常習な出来事らしい


詳しい内情は言いませんが

ラインさんの義理の息子であるレッド君

未婚であるラインさんの養子ということです


親バカというレベルではなく

恋人ではと思えるくらいの仲良し母子とでも言いますか

異常なほどの愛情を持って接しているようです


『失礼します、こちらにレッド殿は居られますか??』


こちらも礼儀正しく入室する

凛々しい女性


六花りっかさん、先ほどライン隊長がしていきました』


『うっ・・・隊長殿お帰りになられていましたか、わかりました』


話を聞くと急におとなしくなってしまい

そのまま退室していきました


『また、トールに慰めてもらいましょう・・・』


出て行った六花りっかさんを心配そうにしているが

この流れも常習なようで

呆れるようにも見えます


『さて、事務作業完了・・・自動監視に任せて少し休憩しましょう』


ラビリアさんが退室すると通路に待っていたかのように

神妙な面持ちで近寄る可愛らしい少女


『作業終わりましたか・・・このトールの癒しを必要としていますね??』


『トール・・・今は私ではなくて六花りっかさんをお願いします』


『わかりましたわ・・・六花りっか様~!!』


瞬間的に居なくなったトールちゃん

これも常習なんだろう、きっと


そしてレストルームで休憩するラビリアさん


データ化された人類ではあるが

基本的にほぼ生身と変わらない

体温もあるし、五感も一応はある

調整をシステムで管理できるから

その点は機械のような感じではあるかもしれません


飲食も活動に必要な摂取ですし

生殖も普通に行います

しかし、男性が少ないため

女性同士でも可能な処置は施されていたりはします


『そろそろですかね・・・エリアさん、隠れていても無駄ですから!!』


周囲を伺うラビリアさん

個人の部屋ではないので入ってきた時点で

気配を察知してはいて

物陰でこちらの様子を監視している感じなのだろうが


これも常習的なことなので

今更だったりする


『別に出てこなくても構いませんが、レッドさんには報告します』


少しして飛びつくようにラビリアさんにすがる

豊満な女性


『ラビリアさ~ん・・・それだけは困りますわ~ううう』


涙目で訴える

彼女がエリアさん


『何で私から隠れる必要があるのですか??』


『だ~って・・・ラビリアさん、わたくしのこと嫌いだって~』


めんどくさいと思いつつも

別に嫌いではないから、ちゃんと伝える

ここは礼儀正しい性格なのでしょう


『私がいつ、エリアさんを嫌いだと言いましたか!! 言ってませんよね??』

『言ってませんよね!! むしろ好き・・・とまでは言いませんが、とにかく』

『いいですか、また同じことしたら・・・レッドさんに報告します』


まくし立てるように続けて喋るラビリアさんに少し怯え気味なエリアさん

涙を拭って搾り出すように返事をする


『・・・わ、わかりました~もう、しませんから~許して下さい~』


本人はしっかりと謝罪をしているが

喋り方の問題なのだろ

基本的に癒し系と言われるスローなテンポ

これがラビリアさんには、どうしてもダメなようで


『・・・やはり、報告します』


そう言って、部屋を後にする

悲しみにすがるエリアさんを残して

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