第11話 女子会は、宴のあとで

1.


 日本支部長の前津は、支部長室のデスク角に設置されたモニターに正対していた。といっても、その画面にはヘブローマのロゴ以外何も映ってはいない。モニター付属の簡易なスピーカーから、その音質の安っぽさとは相容れない高貴さを窺わせる男性の声が聞こえてくるのみである。

『ミスター・サガミは、今回の騒動をどうにか静めたようですね』

「ま、化身頼みでしたけれど」

 前津は表情を繕いながら答える。向こうにはこちらの映像がばっちり届いているという理不尽さを気取られないように。

『それでいいのですよ』

「と言いますと?」

 ぎしり、と向こうの人物の身じろぎの音が伝わってきた。

『今までのあのI.A.所有者たちは、自分の言説でもってインカルナティオたちを翻意させようと、あるいはねじ伏せようとしました。結果は、ミズ・マエツがご存じのとおりです』

「質問を、お許し願えますか?」

 モニターの沈黙を許可と捉え、前津は質問する。

「なぜ佐上君に、"運命の女"を渡したのですか?」

 それは、祐輔が使うI.A.の銘。これまで幾多のスペシャルワンたちを翻弄し、追い詰め、死に至らしめたいわくつきの一品なのだ。先日縊死を選んだ黒柳も、かつてそれを使用していた一人であったことを前津は思い出した。

 ディスプレイ越しに、衣擦れの音が聞こえる。前津の経験がその音を、相手が肩をすくめたのだと悟らせた。

 前津がこの組織に入って20年になる。いつの間にやら日本支部長になれたわけでは、無論無い。仕事をこなすことは当然として、誰が力を持っているかあるいは失っているかを探ること、誰が誰に気に入られているかあるいは嫌われているかを常に考慮すること、などなど。

 そういった処世術の一つが、"上位者が黙ったら、それ以上追及しないこと"である。彼女の同期の一人のようになりたくはないのだ。

『日本は寒いのですか?』

「なぜですか?」

『だって今あなた、震えていましたから』

「寒くなる一方ですよ。もうすぐ12月ですから」

 同期の最期を思い出していたことは、悟られてはならない。

 夜那岐に、祐輔用の理の外を紡ぐ法具を受け渡しポイントまで取りに来るよう伝えること。その指示を最後に、モニター上のロゴマークは消えた。


2.


 一方その頃、祐輔宅のリビングでは――

「柔いな」

 しかめつらしく口真似を演じるは、御存じアレクサンドロス。

「ゴリアテの額はもっと堅牢であったぞ――だってよ~! いよっ! さすが全裸石投げ青年! 見事な決め台詞だぜ!」

 その肝心の台詞を言い切るまでが限界でキャラ回帰したマケドニア人に周囲が和して、どっと笑いの輪が広がる。

 独り、いや2人してぎりぎりと歯軋りをするのはスペードのA、イスラエル王ダビデ。東にアッシリア帝国、西にエジプト王国と当時の二大強国に挟まれたパレスチナの地において、政戦両略に手腕を発揮してユダヤ人の王国を伸張させた名君である。晩年こそ息子の反乱に悩まされたものの、この王国は末息子の賢王ソロモンに受け継がれてゆく。

 だがこの成業も、アッシリアは当時この地域に影響力が無く、エジプトも国力が減退した時期と重なったおかげという辛口の指摘も存在するらしい。実際、ソロモンの崩御後ほどなくして北部と南部に分裂した王国は、それぞれアッシリアと新バビロニアに滅ぼされることとなる。

 このダビデが先王の側で竪琴弾きとして仕えていた若年時の武勲として旧約聖書に特記されているのが、攻め寄せてきたペリシテ人の巨人兵士ゴリアテを投石で撃ち倒した故事である。かのルネサンス彫刻の傑作『ダビデ像』はその時の雄姿を表現したものなのだが、

「余を残念な変質者扱いするな! あれはミケランジェロが勝手にやったのだ! 余は知らん!」

 またまたぁ、とラ・イルに冷やかされて憤激するダビデを横目に、私服に着替えてきた愛美がツナサンドを食べる手を休めて祐輔のほうを向いた。

「あのおじいちゃんはなんで怒ってるの?」

 伝説のイスラエル王を『おじいちゃん』呼ばわりという暴挙に、虚を突かれた祐輔は吹き出した。そのあいだに夜那岐がタブレットに表示した画像を見て、目を見張った愛美はキョロキョロする。

「え? これとあの人、同じなの?」

「いや、彫刻の実際のモデルは別人だけどね」

「別人どころか別人種だがな」

 と詩鶴も口を挟んできた。こちらは愛美の私物のパーカーを借りて、むき出しになってしまった肩を隠しているのだが、なんだか窮屈そうだ。

 ふーんと一旦納得した愛美は、また別の疑問を抱いたようだ。

「で、なんで裸なの?」

 この手のネタに、恥らいつつもキラキラと目を光らせるさまは、やっぱりお年頃の女の子なんだな、と祐輔は思う。詩鶴は頬を赤らめながらそっぽを向いてしまったが、耳がしっかり聴音していることを幼馴染たる彼は知悉している。

「中世はね、今とは別の意味で、反道徳的な表現に対する規制が厳しかったの」

 と夜那岐が説明してくれた。愛美たちとは逆に落ち着いた風情はやはり年の功、と言ったら殴られそうだが。

「そんな中で宗教関係芸術はね、芸術家にとって男女の裸や絡みを公然と描ける絶好の隠れ蓑だったのよ」

「なるほどなー」と浩二。

「後世、自分の姿が全裸で仁王立ちはちょっとねぇ」と右田川。

「そっか~、公式認定の薄い本みたいなもんなんだね~」と愛美……ん?

 生者のあいだに流れる微妙な空気を察して愛美はツナサンドの咀嚼を再開したが、祐輔の心中で以前からあった疑惑が少しずつ大きくなっていく。

「ところで、なんで右田川君がいるの?」

 夜那岐が卵サンドからパセリを抜きながら、私服警官に問いかけた。

「レキダンだから、ですよね?」

 そうそう、と右田川は頷いた。

「京郷君から超時空コントが見られると聞いて」

 化身たちの宴会は、昨夜のいがみあいから一転して和やかに始まっていた。なんといっても、ユダヤ・キリスト勢がギリシャ・ローマ勢の真横で――混ざらず真横で、だが――車座になっているのだ。そしてそれゆえにアレクサンドロスやラ・イルのちょっかいも激しくなり、つい先ほどの口真似に至る。

「まったく、ダビデ王に対して無礼が過ぎますぞ、マケドニア王よ」

 そうたしなめるシャルルマーニュに、オジェ・ル・ダノワがその盃を満たしながら言った。

「しかし、なにゆえこのスターターセットに異教徒を混ぜたのでありましょうな? いっそ主を信奉する方々で統一すれば、先日来の諍いも無かったでしょうに」

「おう白野郎、まぁだ言ってんのか?」とラ・イルの目じりが釣り上がる。

「怒るなラ・イル。他意は無い」

 とオジェは渋い顔。言われたほうのギリシャ・ローマ勢は、何を今更といった雰囲気で絡んできた。カエサルが杯をあおるとあごを撫でる。

「じゃあ、俺の代わりとなると、誰になるんだろうな?」

 その時、勢いよく立ち上がる者出現!

「むろん我があるじ、アーサー王陛下に決まっている! いまだ御魂の捕捉はかなわぬようだが、必ず、必ずあのお方は……!」

 ランスロットの勢いに一同なんとなく流されそうになったが、そこに水を差せるというのは大人の力というものなのだろうか。

「いやぁ、アーサー王は無理じゃないかな?」

 右田川ののんびりとした指摘に、ランスロットが噛み付く。

「何ゆえそのような。根拠はいずこにある?」

「だってあの人、聖杯戦争にかかりきりだし」

 ちょっとこれ借りますね、と断って夜那岐のタブレットを操作した右田川が、根拠となる画像の一覧を検索表示した。周りに群がる一同から、なんともいえない呻きが上がる。

「……あの御仁は、なにゆえ女体化しているのですか?」

 とユディトが眉根を寄せ、

「しかもこのようなあられもない姿に……」

 ラケルも気分が悪そうに身をすくめる。そんな嫌悪感の発露では済まなかったのは、当然その円卓の騎士である。

「王よ、我があるじよ! なにゆえこのようなお姿に……っ!」

「そりゃおめぇ――」とラ・イルのニヤニヤが顔いっぱいに拡がった。

「一の家臣にカミさんを寝取られて、愛の逃避行なんぞされた日にゃあなぁ」

 ランスロットの顔色が衣装と同じ真っ青になったが、化身たちの容赦ない追撃は止まらない。

「だからって女体化までするか?」

「その騒動で円卓の騎士も大勢返り討ちにされてるしな。あれのせいで国が滅んだようなもんだし。さぞや衝撃だったんだろうよ」

「なるほど、これがあれか、"どんでんが来る"ってやつか?」

 ……すげえ日本語化パッチすげえ。

 すっかり自分のせいということにされたランスロットのやさぐれっぷりを眺めながら、妙なところに祐輔が感心していると、アテナが杯を置いて首をかしげた。

「わらわに釣り合う入れ替えの相手が、そちらにおるとは思えんのだが」

「それがいるんですよアテナちゃん――」

 と今度はラ・イルが勢いづいたが、これにも異議が差し挟まれた。

「ロリコンは黙ってろ」

「ジャンヌはロリ枠じゃねぇ!」

 カエサルに言い返すラ・イルだが、なぜか顔が妙に赤い。

「そもそもオレにそんな性癖はねぇよ!」

「いやいや謙遜謙遜」とカエサルも引く気はないようだ。

「ジャンヌちゃんよりお前、似たような性癖のお友達がいるじゃないか。そいつをヘクトル殿の代わりにJに呼んだらどうだ?」

「そんな奴はいねぇよ!」

「いやいやいやいや、いるだろ? 拗らせ過ぎて縛り首と火炙りのコンボ食らった奴」

「ジル・ド・レか?! ジル・ド・レのことかぁぁぁ!」

 ラ・イルは真っ赤になって騒ぎ出した。

「誰? 佐上君」

 愛美に聞かれたが、祐輔も知らない人物だ。困っていると、夜那岐が憂鬱そうな顔で助け舟を出してくれた。

「食事時に紹介するような人物じゃないんだけどね……」

 部長のひそひそ講釈を聞こうとした祐輔だったが、リビングの玄関側のドアが開いて、レベッカが入ってくるのに気を取られて聞き逃してしまった。

「お疲れ。どうしたんだ?」

「別に……」

 河原から引き揚げる時、後池警部補の居場所を右田川から聞きだして、ものすごい勢いでバイクを走らせていったレベッカ。それが今はどうだろう、顔色も悪く、すっかり萎れているではないか。

 詩鶴からも問われたがますます萎れて、レベッカはキッチンのほうへふらふらと消えて行った。

「そういえば、結構遅かったですね、河原に来るの」

「返す言葉も無いわ」

 夜那岐は講釈を中断して頭を下げる。なんと、通常より俊敏な強襲型メソーラと丁々発止の戦闘の末撃破したレベッカが、夜那岐の道案内を断って意気揚々と次の案件――すなわち高校生組の戦場たる河原――へと出発したまでは良かったが、道に迷ってしまって間に合わなかったのだそうだ。

「河原に来た時は、そんなミスをしたようには見えませんでしたけど」

 はったりよと夜那岐が苦笑する。ということは今のあの萎れ方は、そんなはったりをカマすことすらできないくらいの何かがあったのだろうか。

「サガミー!」

 そのレベッカに呼ばれて、祐輔は渋々腰を上げた。疲れてかなり体が重いが、ここで寝てしまったら、家の中をしっちゃかめっちゃかにされそうだ。

 化身たちが顕現して早々、男性の化身数名が祐輔の寝室で本棚の本をベッドの上に拡げて、グラビア雑誌を興味深そうに読んでいたり、宴の肴が来るまで待ち切れないラ・イルたちが冷蔵庫を開けて中身を物色していたりと、家中を引っ掻き回されていたのだ。これ以上、客の好きなようにさせるわけにはいかない。



 キッチンに行くと、レベッカは大柄な体を曲げて、冷蔵庫の中を覗き込んでいた。

「あ、サガミ、ギネス無いの?」

「ギネス? 何それ?」

「ビアだよ」

「酒なんかあるわけないだろ! つかお前未成年だろ!」

 きょとん。

「あたし、18歳だけど」

「日本では飲酒ダメ、18歳は!」

 ノリでタメ口使ってしまったが、年上だったのか。祐輔は未練がましく冷蔵庫の中をあさるレベッカに話しかけた。

「もういいのか?」

「? なにが?」とあきらめたらしいレベッカが起き上がった。

「いや、さっきさ、なんかダメージ受けてたみたいだったからさ」

「――負けた」

「え? メソーラは倒したって夜那岐さんから聞いたけど?」

「アトイケに負けたんだ……クイックドローで……」

 レベッカは涙目になっていた。

 部室を片付けて警察署に引き揚げようとしていた後池に後ろから声を掛けざまにB.E.を抜いた。もちろん実射するつもりはないが、狙いはずばり心臓ど真ん中。脅かして鼻を明かすつもりだった。

 だが、後池のほうが速かった。おまけに『次はもちっと小さい奴で来な』と、にやりともされずに言われたそうだ。

(何者なんだ、あの人……)

 祐輔は心中密かに驚きながら、再び萎れてしまった拳銃使いのフォローに走る。

「ま、まあほら、撃たれなくてよかったじゃん。次頑張ればいいんだし」

「実戦なら死んでた」

「ええと……」

 『お可哀想な人』だの『アマチュアくん』だのと言われて、正直あまりいい印象が無いレベッカだが、目の前でへこんでいるのを見ると、励ましたくなってしまう。

「実戦じゃなかったんだから、ラッキーって思ってさ。それにほら、早撃ちで負けたって、ほかにもっと勝負できるところがほら……」

「あたしから銃を取ったら何が残るのよ……」

 そこで二の句が継げない自分が情けない。おろおろしていると、レベッカが目をゴシゴシこすってキッと前を見た。

「なんか、リビングが静かになってないか?」

 言われて意識を向けると、愛美らしき声以外には壮年男性の戸惑ったような声が1人か2人聞こえてくるのみである。どうも愛美とラ・イルがしゃべっているようだが。

 不審の念に駆られた祐輔とレベッカが早足でリビングに戻ると、そこには確かに沈黙、いや、できるだけ関わらないように飲食にいそしむ寡黙が支配していた。一部地域を除いて。

「いやあの、マドモワゼル、オレも噂しか聞いたことが無いから。いやほんとに、あんな奴、友達でもなんでもないんですよぉ」

「だから、その噂ってどんな――あ、ベッキー!」

 目を輝かせた愛美がレベッカを見つけて勢いよく立ち上がり、飛んでくると祐輔を押しのけた。その背後で、彼女から解放されたらしきラ・イル2人が心から安堵したといわんばかりの溜息をついたのが聞こえる。

「ジル・ド・レって人、知ってる?」

「え? えーと、フランク人っぽいな……知らない」

「ごめん、佐上君」と夜那岐は実にすまなさそう。

「猛獣に餌を与えてしまったわ」

 祐輔が想いを寄せるその猛獣はうっとりとした目つきで虚空を眺め、両手を胸の前で組んだ。

「ショタリョナ大貴族様よ? すてきじゃない?」

 レベッカって、意外と表情豊かだな。祐輔は心の中に漆黒が広がるのを感じながら、全く別のことを考えた。いかにも『しまった地雷踏んじゃった』という慌て顔をしながら、でも『せっかくできた日本人の友人を傷つけないように』と必死に抑えているように見えるのだ。

「い、いや、あたしショタはともかく、リョナはちょっと……」

 そーなんだー、と素敵な笑顔の愛美を正視できなくて、祐輔は浩二に助けを求めたのだが。

「祐輔、ヤヴァイぞ、あれ」

 救いなど無かった。

「そうだな……かなり深めの闇に浸っていらっしゃるようだな、征城さん……」

「マスターよ」

 シャルルマーニュの祐輔への質問は、化身たちを代表したものだった。

「ショタ、リョナ、とはなんだ? 我らの知識には無いのだが」

 説明を言いよどんだ祐輔に、追い討ちがかかる。

「佐上君?」

 愛美が、祐輔に笑顔を向けてくれた。本来ならそれだけでご飯3杯はいけるはずなのに。

「ちゃんと説明、してね?」

 祐輔は即答した。

「しないよ」

 リビングにいる全員が、息を飲んだ。愛美に精一杯の微笑みを投げつつ心の中で彼女に詫びながら、それでも祐輔は家主として、マスターとしての判断を取った。

「今ここで、みんなで宴会をしてるんだよ? いい雰囲気でさ」

 祐輔はシャルルマーニュに向き直る。

「今の説明と、あの――」祐輔は2人のラ・イルに目線を移した。

「怯え方を見て、賢いあんたなら、賢明なみんななら、察してくれ」

 俯き加減で押し黙って、祐輔をもはや見ようとしない愛美の仕草が彼の心を責め苛む。詩鶴と浩二、右田川までキョドってきたリビングの空気を変えたのは、実にかくしゃくとした老人2人が張り上げた声だった。

「まったく、風紀が乱れきっておる! 実に嘆かわしい!」

「そうじゃ! このような乱れきった世の中を変えるために余は――」

「あれれー? おっかしいなぁー?」

 素っ頓狂かつ棒読み丸出しの声を、これまたダビデに負けず張り上げたのは、祐輔配下のアレクサンドロスだった。愛美配下の色違いが盃をくいっと飲み干すと、耳に手を当てたりしているもう一人の自分の肩を叩く。

「どうした、我よ」

「げんちょうがきこえるんだー」

「幻聴?」

「ああ」とアレクサンドロスはにやりと笑いながら、しかし口調はまこと深刻そうに続けた。

「家臣の妻を寝取って、子供をバンバン産ませたお年寄りの声が聞こえるんだ」

「ああ、それなら余も聞こえてたぜ」と色違いもにやりと笑う。

「その家臣を強制的に戦地へ送り込んで討ち死にさせたご老体の声だろ?」

 ダビデ2人は怒り始めた。

「貴様らに何が分かる!」

「いやあ分かりませんなぁ」

「ハゲの女ったらしには言われとうないわ!」

「そうだそうだぁ! カエサル殿とランスロットは発言権無いぜぇ」

「私の古傷を抉るのはもう止めてくれ!」

 そこまでで右田川が爆笑を始め、彼を起点に哄笑が波紋のように広がる。

「さ、今宵はこれまでにしようぞ」

 とシャルルマーニュが眼尻の涙を拭いながら締めて、宴はお開きとなった。

「あ……!」

 祐輔はまだ顔を紅潮させている老王2人に声を掛けると、ぺこりと頭を下げた。意を汲み取ってくれたのだろう、2人ともにこりとして黙礼を返してくれ、他の満足顔な化身たちとともに、それぞれのI.A.に吸い込まれていった。


3.


 もうすぐ夜8時。日本支部から指示が来て、配達物を受け取りに行った夜那岐を除いた生者の女子3名と、再び顕現した化身女子――壮年のラケルとユディトを女"子"と呼ぶのはかなり無理があるが――8名の計11名は、リビングで車座になり、銘々の飲み物を手に乾杯した。

 事の発端は、祐輔配下のアルジーヌ。彼女が『女子会をやってみたい』と以前から祐輔にお願いしていたのだ。

 その祐輔は化身たちの宴がお開きになった後、詩鶴たちに就寝を勧められたのを断って頑張っていた。だが、愛美がふと気づくと、リビングのソファで寝落ちしているのを発見。間髪を入れず詩鶴が寝室から持ってきた毛布を掛けてやって、すっかり安らかな寝息を立てている祐輔の寝顔を見るともなく眺めながら、愛美はレベッカがスーパーで買い足してきたジュースをちびりと飲んだ。

「詩鶴殿は、よく気が利くねぇ」とラケルが目を細める。

「ありがとうございます。ま、祐輔は風邪ひきませんけどね」

 何気ない台詞に幼馴染の重みを感じて、愛美は詩鶴を見つめた。ゆえに祐輔のほうを向いた耳は、彼の呟きを聞くことになった。

「……脛痛い……痛い……」

 起きたのだろうかと驚いて振り向いたが、祐輔の眼は固く閉ざされている。いや、先ほどまでの穏やかなものとはうって変わって、ギュッと目をつぶり、眉根を寄せているではないか。

「サガミ? 大丈夫か?」

 とレベッカの呼びかけに反応せず、第2声が彼の口から漏れる。

「それ以上載せないで……征城さん、重い……脛痛い……」

「……あのー」

 アルジーヌが心配そうにそわそわしだす。

「マスター、愛美殿に拷問されてるんじゃ……」

「さっきのあの会話のせいかの」

 などとアテナは言いながら、もう一人の自分とチーズ鱈を分け合っている。

「算木責めかな……」とつぶやいて、愛美は皆の『痛い子』を見る視線を浴びた。

「メグちゃん。メグちゃんの内面と嗜好に干渉する気は無いけど、同好の士がいないところで口走らないほうがいいと思うぞ、わたしは」

 じゃないと、と詩鶴は続ける。

「もうフラクトゥス・アモリスをもらえなくなっちゃうぞ? 祐輔が呆れて」

 詩鶴の発言に、レベッカ始め一同が驚く。

「え? メグ、えーと日本語で……カツアゲ?」

「違う!」

 即行で否定した愛美は説明した。先日祐輔から、『2人で分けて溜めてたら、いつまで経っても必要な量まで到達しないから』と言われて、彼が溜めていた結晶を全て託されたことを。そして、これからも回収した結晶は全部愛美に渡すと言われたことを。

「そうそう、その行動の理由を訊いたらな、祐輔が言ってたぞ?」

「何を?」

 幾つになっても女というものはコイバナに食いつきがいい。ラケルの問いに、詩鶴はにやりと笑って答えた。

「『やっぱ、征城さんに幸せになってほしいから』、だって」

 冷やかされてもリアクションに困る。愛美はうつむいて固まってしまった。

「で、あっさり受け取ったのですか? マスター」

 とこれは愛美配下のアルジーヌが震え始め、

「悪い女だねぇ」とユディトがにやりとする。

「ちょ、ちょっと待ってよ! 最初断ったよ! でも、『男は齢取っても何とかなる、って後池さんが言ってたから』って言われて、それで……」

 詩鶴が新しいペットボトルを開けながら言う。

「そんな発言、後池さんから聞いたことないぞ?」と。

 その視線に耐えきれなくて、愛美はまた下を向いた。

(天然系の悪女だな、うちのマスターは)

(ああ、ヴァンプってやつか)

(吸い取れるだけ吸い取ったら、男はポイだ。全く罪悪感無しにな)

(なるほど、やっぱり祐輔は面白いな)

「ひそひそ話が全部聞こえてるし! ていうか、詩鶴ちゃん!」

「なに?」

「今の流れで、なんでその結論になるの?」

「そういや、趣味がサガミの観察なんだって?」

 レベッカが詩鶴を見やる。その眼は『物好きなやつ』と語っているようにも見える。実際それは、愛美にとってもこの事件に巻き込まれて以来の疑問だった。なぜ、詩鶴は祐輔を観察するのか。

「ふふふ、別に。面白いから、ただそれだけだよ」

 詩鶴は澄ましてそう言うだけで、それ以上このことを語ろうとはしなかった。無性に悔しくなっている自分を制御できず、愛美は横目で詩鶴を見据えた。

「詩鶴ちゃん、おうちにまだ帰らなくていいの?」

「ん? ああ、祐輔の家で友達と女子会やるって言ってあるよ。9時にはお暇するつもりだし」

「信用されてるんだな」とレベッカがコーラをぐっと飲む。

「それにしても、もうちょっと徹底的にメソーラを狩らないと、必要量が溜まった時にはもう40代、なんてことになりかねないぞ?」

「そんなこと言われたって」

 と愛美はむくれる。まだ始めて1週間も経っていないのに。だが、レベッカはそんな愛美の不満などどこ吹く風で畳み掛けてきた。

「まったく、"R.I.P."の文字が泣いてるぜ」

「? なにそれ?」

「なにって、カードの裏に書いてあるじゃん」

 そう言われて、愛美はI.A.をはめると手を振り、カードの裏面を見た。確かに凝った書体で R.I.P. と記されている。

「 Rest in Peace の略だよ」と詩鶴がスマホのメール画面にアルファベットで入力して、見せてくれた。

「れすといんぴーす……えっと……」

「安らかに眠れって意味だよ。欧米だとお墓によく彫ってあるらしいね」

 詩鶴が説明し、レベッカが頷いた。

「ふーん、メソーラよ、安らかに眠れってことなんだ……」

「ま、そういうことなら」と詩鶴がなにやら窮屈そうに身じろぎをしながら言った。

「わたしが引き続きサポートしたほうが、効率的だな」

「すごいですよね、詩鶴殿の読み」とアルジーヌが二人で褒め始める。

「そうかな? 1種類ずつ52枚しか無いし、召喚しているカードは現実から消えるまで補充されないでしょ? しかもワンチャンスポーカーどころか何回でも捨てて引いてができるんだから、どんな札が来るかなんてある程度先まで読めると思うけど」

「シヅルとカードゲームはしないほうがよさそうだな……」

「そうだね……」

 レベッカと眼を合わせて頷いていると、詩鶴が何かを言いたそうにしているのが視界の端に移った。

「なに? 詩鶴ちゃん」

「ううん、なんでもない」

 その時、キッチンでオーブンが鳴った。いそいそとキッチンへ向かったレベッカが持ってきたのは、大皿に溢れんばかりのピザだった。

「おお、クワトロ・フォルマッジだ!」

 化身たちの眼が輝く。その爛々たるさまに愛美たちは口元がほころぶのを抑えきれない。レベッカが買い出しついでにスーパーで、ピザ生地とチーズを買い込んできて作ったのだ。

「ほんとあんたら、チーズ好きなのな」

 レベッカが苦笑しながら、さりげに詩鶴の手から皿を遠ざける。

「なにをする?」

「ピザを食っても、背は伸びないぜ? オチビちゃん」

 エギリス人への援護射撃が、ユダヤ人カルテットから飛んできた。

「そうそうむしろ、レベッカ殿とマスターが食べるべきよね」

 愛美もレベッカも、化身たちが何を言っているのか分からない。何かに気付いたのかアワアワしだしたアルジーヌなどお構いなしに、パーティー用の紙皿に取り分けたピザをアテナが2人して、愛美とレベッカの前に優雅な手つきで差し出した。

「そなたらの胸に、神々の祝福のあらんことを」

「そなたらも、その服が窮屈になりますように」

 ああそうか、だから詩鶴ちゃんは動きづらそうだったのか……というところまで考えて、愛美はやっと、胸のサイズについて化身たちに揶揄されていることに気が付いた。

「おまえら……このFADS弾を食らいたいのか?」

 レベッカがフルフルと震えながら、目にも止まらぬ速さでB.E.を抜いた。

「あああああのっ、レベッカ殿! もったいないですよ!」

「その弾、たしか自給自足と聞いたが?」

 アルジーヌとラケルに言われて、レベッカはぐっと言葉に詰まった。愛美が尋ねてみたところ、無料で支給されるのは騎士団員就任当初の80発だけで、あとは自分が稼いだフラクトゥス・アモリスと物々交換とのこと。愛美は詩鶴と顔を見合わせた。

「じゃあこのあいだバンバン射ち込んでたのって……」

「結構な高級車が買えるくらいの射撃ってことか?」

「だからこそ、騎士団員はエッリートなのさ! 最高の技量と大胆さとともに、繊細な神経も兼ね備えた――」

「怒りに任せて銃を抜いて振り回してる奴に言われても、説得力がないんだが?」

 詩鶴が混ぜっ返し、レベッカ以外の一同が大きく頷く。

「なにおぅ! そもそも、詩鶴がそんな胸をしてるのが悪い!」

「敵認識が違う! あっちあっち!」と真っ赤になった詩鶴が指差すのは、にんまりと笑う戦女神。

「そうだアテナ! お前には言われたくない! ほかの3人はともかく!」

 アテナは、ふむ、と自分の胸を見下ろして、しょんぼりし始めた。

「レベッカ殿、もう少し声を抑えて」

 困り顔のラケルを横目に見ながら、ユディトが愛美に話しかけてきた。

「こういう時は、日本語化パッチに入ってた定型文を使えばいいんでしょ?」

「ていけいぶん、って?」

 にんまりと艶やかな流し目を送られても、さっぱり分からない。ユディトは愛美を置き去りにしてもう一人の自分を誘うと、怪訝顔のレベッカを左右から攻める。首をかしげてニッコリ笑って。

「第二次性徴前のアテナと張り合うって、どんな気持ち?」「ねえどんな気持ち?」

「ぶっ殺す!」

「ただいまー……なにやってんの?」

 端然と微笑んで佇立するユディトに猛然と突っかかろうとするレベッカと、それを止めようと組み付いている少女2人。動転しきりのアルジーヌ2人が夜那岐の入来をまるで救世主降臨のように喜び、ラケルとアテナはなぜか残念そう。そんな現場に来た夜那岐の感想は、

「もりあがってるわねー」

「これが? これが?!」

「ていうか、疲れて寝てる人の横で、よくそれだけ騒げるわね?」

 気付かされてしゅんとなる一同を見て、夜那岐が声を立てずに笑う。提げていた荷物を床に置いて、もう一方の手提げ袋から缶ビールを出すと、開栓してゴクゴクと飲み始めた。

「いいなー、それ」とレベッカが悔しそう。

「ま、大人の特権よ」

「あの、夜那岐さん? 一応世間体的には高校3年生じゃ……」

 愛美の指摘は夜那岐にニッコリ無視されて、なおも賑やかにかつ穏やかに女子会は続く。


4.


「そういえば、なんでまた女子会をやろうって気になったの?」

 2本目を飲み始めた夜那岐の問いに、アルジーヌは答えた。

「少し前の宴の時、ラ・イルさんが見てたテレビ番組で女子会の特集をしてまして、それが楽しそうだったからです」

 それに、とアルジーヌの顔が少し曇った。

「もうすぐ、終わりが来ますから」

 皆が息を飲む。そのまま何秒経ったのか、アルジーヌがぺろりと舌を出した。

「今、かっこよかったですか? 私」

 どっと沸く一同に染まらぬ2人がいることに、愛美は気付いた。

「アテナ、どうかしたの?」

「ん? ああいや、生きていた頃のことを思い出して、つい」

 詩鶴にうながされて、愛美配下のアテナは語り始めた。彼女は族長の娘として生まれ、神の声を聞いて戦の勝敗を占うことができたため、丁重に、しかし他の同年代とは触れ合えぬ待遇で生かされてきたこと。その部族が敗亡の危機にさらされた時、聞こえた神の声。それは、

「このままでは、もうすぐ終わりが来る。生け贄を我に捧げよ。されば勝利への道は開かれん――というものであった。わらわはためらわず、自らの胸を短剣で貫いたのじゃ」

「どうしてそんな……あなたが死んだって、勝てるかどうかなんて分かんないじゃん!」

 愛美は思わず叫んだが、その声はアテナの困惑と、ラケルの返答を招いた。

「マスター、それはあなたの、この現代に生きる者の考えです。我らにとって、神の声とはかほどに重きもの。疑うことなど不敬の極みなのですよ」

「詩鶴ちゃん! なんか言ってよ!」

 愛美にはどうしても理解できず、賢明な友人に助けを求めた。

「その戦いには、勝ったの?」

「ええ」と答えるアテナの顔には、誇らしげな輝きがあった。

「そしてわらわは、戦の女神として祀られることになったのじゃ。それから幾歳月、わらわのようなおなごたちが衆合されたのが、アテナなのじゃ」

「ふむ、ならば、私やメグちゃんが言えることは何も無いよ。勝ったんだから」

 納得できない。アテナたちの達観も、詩鶴の割り切りも。そんな愛美の思いをよそに、会話は進む。

「そういえば、聞いた?」

 夜那岐の問いは、浩二に関することだった。

「付き合ってた子、えーと、山本さんだっけ? あの子と別れたわけを聞いたのよ」

「またなんでそんな直球勝負を」という詩鶴の呆れた声は無視されて、女子たちは飲食の手まで休めて好物に群がり、続きをうながした。

「最初は言いよどんでたんだけどね、教えてくれたわ。『祐輔のこと嗤ったから』って」

「佐上君のこと?」

 浩二は外道部に入部してすぐ、山本に仔細を説明したそうだ。彼女から返ってきたのは、祐輔に対する嘲笑だった。自分に告白してきた時の顛末を、ジェスチャーまで交えての。

「それを見て怒ったら喧嘩になって、京郷君のことも散々けなされだしたから、『ああ、こいつ、俺がいないところでは俺のことネタにして嗤ってるんだな』って思ったら、すーっと冷めちゃったんだって」

「そういえば振られてたな、祐輔。結構な落ち込みようだったぞ当時」

「……慰めてあげた?」

 詩鶴の愛美への返答は、素っ気無いものだった。

「前にも言っただろう? 観察対象に深入りしない。これは鉄則だ」

「ヤナギ?」

「なあに?」

 レベッカが腕組みをして、考え込んでいる。

「シヅルが言ってる観察ってのは、文字どおりの観察なのか?」

「当たり前じゃない。佐上君はスペシャルワンよ? たとえ近づこうとしても、ガラスの壁にぶち当たるだけよ」

(ガラスの壁、か)

 愛美には思い当たり過ぎて、涙が出そうになった。あの人も、あの時も、あの場面も。全ては虚しく苦い思い出として、このまま彼女の人生に積もってゆくだけなのだろうか。

「はぁ、やっぱりいいわぁ、浩二殿って」

 愛美の沈思などにお構いなく、ユディトが艶かしい声を出した。受けるラケルは今日何回目の困り顔だろうか。

「あなた、いいかげん慎みなさいよ」

「正直、うちのマスターより男っぽいじゃない。私がもう5000年若ければ――」

「……自分で言ってて虚しくならないの?」

(この人確か、敵の将軍に色仕掛けでどうとかって人だよね……)

 意外と頭に入っていることに自分で驚いて、愛美ははたと気が付いた。

「あれ?」

「どうかしたの?」

 つい出た独り言が夜那岐に聞かれて、愛美は慌てた。

「アルジーヌって、なんでしたっけ?」

「マスター……ひどいです……」

 うるうるとしだしたアルジーヌを慰めるレベッカ。珍しいことをするものだ。

「ありがとうございます、レベッカ殿……わたしは、何者でもないんです。ほかの皆さんのように歴史に名を残しているわけでもないし、ラテン系っていう設定はありますけど、誰かがモデルというわけでもないし……」

 でも、とアルジーヌは涙を拭って顔を上げた。

「マスターは、優しいから好きです」「わたしもマスターは好きです!」

 愛美と祐輔、それぞれのアルジーヌは声を揃えて言った。

「え?! そ、そうかな……」

「はい!」とアルジーヌは元気よくうなずく。

「酷い人だと、『ラテン系なんだから、なにか踊ってみろよ』とか、『もっと陽気にしろよ』って無茶振りしてくるんです」

「……なにその微妙なパワハラ」とレベッカが苦笑している。

「あー、でも分かるな、それ」

 愛美は床を見つめた。詩鶴や夜那岐が物問いたげに見つめているのが分かる。

「わたし、関西の出身なんですよ。小学校4年の時に転校してきたんですけど、みんなに言われるんです。『おい関西人、なんか面白いこと言えよ』って」

「へー、全然イントネーション普通じゃん」と夜那岐が言う。

「ええ、一生懸命直したんです。高校も、知り合いのできるだけ少ない所に行こうと思って頑張って。それは、ちょっと後悔してますけど……」

 本当に彼女にとって、4月からの授業は異次元人の会話にしか聞こえなかったのだ。

 レベッカがピザの残りを飲み込んで言った。

「あたしのあだ名は『パスタ野郎の孫』だったな。パスタ臭ぇってからかわれて、よく相手をぶちのめしてたぜ」

「なるほど、その胴回りは小麦粉が詰まってるせいか……」

「黙れちびっ子」

 あからさまなレベッカの煽りに、珍しく詩鶴が乗ってこない。

「ちびっ子よりもむかつく言葉がある」

「なに?」

 愛美は何気なく聞いた。実際この友人に、低身長以外の――それが悪いと言っているわけではないが――何か逆鱗に触れるポイントがあるのだろうか。

「物知りだね、って言われることだ」

「ダメなの?」

 詩鶴は夜那岐の反応にうなずいた。

「わたしを、全国の鉄道駅を暗記してる小僧や、花言葉を即座に言える野郎と一緒にしないで」

「そうなんだ……」

 それらは、愛美にとっては十分尊敬に値する所業なのだが。

 ここで詩鶴の帰宅時間が到来し、女子会はお開きとなった。

 後片付けをして帰ろうとする愛美を、まだI.A.に戻らずに1人残っていた祐輔配下のアルジーヌがそっと腕を取る。

「愛美殿」

 顔を近づけて、囁いてくる。

「よろしくお願いします」

「? 何を?」

「愛美殿次第なんです」

「だから何が?」

 一緒に部屋を出ようとした夜那岐たちが、怪訝そうな顔をしている。

「終わりが来るかどうか、です」

 では。そう言って悪戯っぽく笑うと、アルジーヌは消えていった。

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